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2008年5月10日土曜日

ショップ99に見る、日本社会の構造的問題

 すでにNHKなどでは報道されていたようですが、昨日民放にて本日のお題のショップ99の不法労働問題が報道され、現在各所で話題になっています。

 問題の中身はショップ99で働いていた元店長が、その長時間労働を争点に法廷に訴え出たという経緯です。全体像的には前回にマクドナルドを相手取った元店長の裁判と同じなのですが、今回は現時点で実労働時間が出勤表にきちんと記録され、それが公表されている点が問題のインパクトを強めています。その出勤表によると、この元店長の労働時間は毎日早朝から深夜までの長時間労働で、ひどい時などは休み時間がほとんどなく、四日間フルに徹夜で働くという尋常ではない実態が明らかにされています。しかしマクドナルドの例と同様に、今回もこの元店長は企業側には店長は管理職として扱われ、この長時間に見合う残業代は一切支払われてこなかったというようです。

 この事件に対するネット、及び私の周りの人間の反応はと言うと、どうしてこれほどまでして働いていたのか、どうしてすぐに仕事をやめなかったのかという声が多いのですが、その質問の回答ははすでに記者会見で出ており、訴えた元店長本人によると、この人は就職氷河期世代にあたり、数年間の不安定なフリーター生活を経てようやくつかんだ正社員であったということからなかなかやめる決心がつかなかったというようです。自分の知り合いの親父さんなんかはフリーターの「ふ」の文字を聞いただけで「怠け者めっ!」、と海原雄山ばりに怒り出しますが、実態的には今回の元店長のように、正社員になりたくてもなれないという不幸な若者が多いように思えます。この辺はまた今度書こう。

 さて問題は、前回のマクドナルドといい、どうすればこのような問題が解決できるかだと私は考えております。近年になってようやく、このいわゆる「実体のない管理職+超時間労働」が明らかにされてきましたが、こうした問題が起こっているということは私が知る限り、2002年ごろにはすでに各企業、特に店舗増設が行われてきたコンビニ業界で起こっているとは聞いていました。それがこのところ、もっとも実際にはかなり前からでしょうが外食産業、大手スーパーなどの小売業などの企業にも広がっています。

 それこそ、このような非人道的な労働を強いる企業を単体でどうにかするというだけなら、こうした内部告発から社会的批判にさらし、企業を追い込めばいいだけです。批判をかわすために労働改善を行うか、はたまた結末に企業が潰れても一応は解決されます。
 しかしすでに述べたように各業界でこのような「実体のない管理職」という現実が広がっている中、ただ企業を一つ一つ潰していったところで、結局のところ社会全体で見てほとんど改善は起きません。敢えて分類すると、企業を単体でどうにかするというのは「個別的問題」で、社会全体をどうにかするというのは「構造的問題」という風に分けられます。

 この問題の場合、日本人は辛い労働でも割合我慢してしまうというのが原因だとよく言われます。私が尊敬する水木しげる氏も、「日本人はがんばりすぎてしまうから、国があんな風になっまでも戦争を続けてしまったんだ。怠け者のイタリア人をもっと見習うべきだ」と述べています。実体験者だけに、重みのある言葉です。
 現実に日本は先日のメーデーでもあまり労働争議、ストライキは起こらず、苛酷な労働環境がこれまで以上に報告されているにもかかわらず、めっきり労働者は主張できなくなりました。今回のような問題を解決するために、もっと日本の労働者は嫌なことは嫌だと、過酷な労働をもっとみんなで拒否することも必要でしょう。実際には今回の元店長のように他に正社員の職が見つからないことや、生活を不安定にさせてしまう可能性から非常に難しいですが。

 もう一つ、私から提言する解決方法は、労働監督庁、ひいては法務省の権限と実行力を拡大することです。言ってしまえば、今回のような事件の労働実態は明らかに労働法の規制範囲を逸脱しています。このような逸脱、脱法行為を発見、処罰をもっと厳正に行うことがもっとも単純で必要な解決方法だと思います。しかしこれを本来行う労働監督庁は細かくは知らないのですが、これだけ異常な労働実態があちこちで言われいる割には踏み込んで摘発したという実例をあまり聞きません。ここはひとつ、もっとハッスルしてもらうとか、欧米各国に比べて省庁権限が非常に弱くて閉鎖的といわれる法務省(最近、ここの大臣はマスコット化している)を改革することがもっともよい構造的な解決法だと考えています。

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