ページ

2008年10月4日土曜日

暗記のススメ その二

 本店の方のコメント欄で何か私特別の暗記法があるのかという質問を受けたので、いい機会なのでいくつかお勧めの記憶術を紹介させてもらいます。

1、自己との連関化
 これは「バカの壁」の中で作者の養老猛氏が紹介している話なのですが、女性の出産のビデオを学生に見せたところ男子からは感想が拙い物ばかりだったものの、女子からはいろいろと面白い返事が返ってきたそうです。養老氏によると、男子はともかく女子は将来自分も経験するであろう対象であるために、興味が多い分対象に対しての集中、観察が強化されたのだろうと述べ、人間の脳への入力は以下のような数式になると書いています。

  記憶量=情報×係数 ※係数=対象への興味

 私も基本的にこの養老氏の意見に同感で、やはり自分の興味が強い対象であればあるほど物事は頭に入りやすいと思います。たとえばテストにでる科学反応式なんかはなかなか覚えないくせにゲームの攻略情報や呪文の名称なんかは大抵一発覚えられます。まぁ誰でもそうでしょうが。
 そこで私がこの人間の脳の特性ともいえる部分を利用している点ですが、基本的にどんな情報でも自分と関連付けるようにしてます。普段はどんなにくだらない情報でも将来それとどんな風に関わるかわからない、今のうちに覚えておかねばという具合で覚える動機づけを毎回やっております。
 私の実体験だと中学時代にミリタリーマニアの友人がいたのでそういったものにそれまで全く興味はなかったものの、「こういうことを憶えれば、軍事関係の話とか理解しやすくなる」と自ら動機づけを行い、彼の話す銃器の種類から部品名などをよく聞いて今じゃある程度ミリタリー情報は暗記している自信があります。余談ですが、形状的に一番好きな銃は「グロック17」です。

2、心構え
 先ほどの興味や連関と被る話ですが、やっぱり覚えようようという志しが一番大事だと思います。私の場合はそれがちょっと極端で、先ほどにも書いたように今は全く関係ないけど将来その情報が必要になってくるかもしれないので、予防線を張るような動機で情報を暗記しようとします。
 ただそれ以上に、自分で書くのもなんですが、私は基本的に他人が自分の知らないことを知っているのを非常に悔しいと思ってしまう性格をしています。なんというか自分が負けているような気がして、他の分野で勝ってても一つでもある分野の情報量に負けていると何とかせねばと考えてしまいます。こんなんだから無闇に範囲だけ広くて、器用貧乏なタイプになってったんだろうな。このブログの記事も統一感ないし。

3、情報の出力能力の強化
 これは以前に書いた、「情報の入出力に必要な能力」という記事でほんの少しだけ触れていますが、私の聞くところ他の人が一切言っていない私スペシャルの記憶術がこれです。一般的な記憶術や暗記法は情報の入力、つまり暗記する部分にばかり解説されており、肝心の運用方法には触れられていません。私はこの情報の運用、つまり出力に着目しています。

 まず、一般に暗記した情報というのはどういう時に使うかを考えました。まぁ研究論文などを書く場合などは普通は資料と対峙するので、恐らく暗記情報を一番使うのは会話時、それも討論の場合であったらなおさらです。その場合、手元に資料を持たずにどのように人と議論を重ねるのか。議論を重ねる情報材料はどこから出すのか、それは最初から頭の中に用意されているのか。

 自分でもちょっとわけのわからないことを言い始めましたが、簡単に言うと、会話全体で使う話題というのは会話を始めた当初から頭の中に「相手にはこういうことを言おう」と用意してあるわけでなく、その大体が相手の言う言葉に反応して、会話中に記憶から取り出されているということです。会話で使う暗記情報というのはメモ書きのように頭の中に常に張り出されているわけじゃなく、普通は相手からの返答、反応といった刺激に対して、「あっ、そういえばこの情報にはこういう話もあったな」っていう具合で引き出されるものが大半です。だから「空が青いね」と相手がいえば、天気の話題→気候→秋→秋空→「天高く馬肥ゆる秋だね」というような返答のプロセスが築かれます。くどいようですが、返答の内容は相手の発言があるまで頭の中に入っていません。

 私は人間というのは、思われている以上に何でもかんでも憶えられるものだと思っています。ですが記憶した情報というのは外部からの刺激がくるまでは大抵頭の中で眠りについたままです。その外部からの刺激も、強弱によって引き出せるかどうかが変わります。たとえば、歴史のテストなどの人物名を問う問題で直接答えさせる記述問題に対し、あらかじめテスト用紙に書かれた人名から四択で選ばせる選択問題とでは解答率が大幅に変わってきます。これは記述より選択問題のほうが正解の人名が書かれている分、外部からの刺激が強いために記憶が想起しやすいということです。

 これがどう記憶術に関わってくるかというと、私の場合は普段から会話などで情報に触れる際、なるべく多くの関連情報を想起するようにしており、その上何か新たな情報を取り込む際に、「この情報はこれとあれとに関連する。これとあれの情報が出てきたら必ずこの情報を思い出すように」と、見る人が見たらばかばかしいでしょうが、常にこうして情報同士の関連付けを整理しながら憶えています。こうした普段からのなんともいえない訓練の成果で、なにか一つの情報に対して記憶から引き出す関連情報の量は他人を遙かに凌駕しており、出力速度にも自信があります。結論を言うと、情報を引き出すために必要な刺激量を可能な限り少なくさせているのです。

 こういう風に考えたのは、記憶量を増やすよりも記憶情報の運用法を考えることのほうが思考にはずっとプラスではないかと考えたのがきっかけです。結果的に言うと情報同士の関連付けが以前よりずっと強化され、またしょっちゅう思い出すので情報の記憶への定着も良くなりました。ただ弊害として、一人での思考が際限なく続くことが増え、前なんかパソコンの中で新規フォルダを作って名前を入れる際に、フォルダ→情報(データ)を入れる→データの収集→伝承が収集されたのがギリシャ神話→オデュッセイア→作者はホメロス→「ほめろ」と書いたところでどうでもいいと思って結局フォルダ名は「誉めろ」になったことがあります。この間約一秒。

4、確認の実行
 予想以上に3が長くなってしまいましたが、最後に紹介するのは確認の実行です。たとえばちょっと気になったものとか、思い出せそうで思い出せないものがあったらすぐに調べるということです。今なんかウィキペディアもあるのですぐに確認が取れますが、やはり頭に出かかっているものを最後まで取り出さなければ、最終的にその情報は失われてしまうと思います。なので、「あの歴史上の人物は誰だったっけ」と思ったらすぐに関連情報から調べ、確認を取っております。こういう地道な積み重ねによる記憶の定着作業が、最終的に記憶量につながっていくと思います。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

 なんとなく予想はしていましたが、かなり考えていらっしゃいますね。僕も花園さんの意見を参考に、少しずついろんなことを記憶していきたいと思います。

花園祐 さんのコメント...

 自分も、最初軽い気持ちで書いていたらどんどんと長くなっていきました。
 記憶や思考については昔からあれこれ考えてたので、持ちネタは思ってた以上に広そうです。

 何度か、記憶への価値観や記憶術を教えることで自分のような記憶量を他の人間でも実現できるかと試してはみたのですが、半年くらいの教育したところでは今のところ実現に至った例はありません。私の記憶法が先天的なものか後天的なものか確かめるためにも、是非試して効果があればご一報ください(=゚ω゚)ノ