2008年10月11日土曜日

花粉症と農林水産省の作為

 毎年四月は憂鬱だと、花粉症の方はみな口をそろえて言います。私自身は四月生まれということもあって、もし実際に花粉症だったらこの四月に対していろいろ複雑な気持ちを抱えたでしょうが、幸いにも今のところは花粉症を一度も発症しておりません。しかし周りには症状のひどい人も数多くおり、そうした方たちを見ていると、やはり花粉症の方にとってシーズンの時期に外にいるのはそれだけでも相当苦痛だということはよくわかります。

 近年は若干の平均気温の上昇とともに飛散花粉量が増加しているため、花粉症にかかる人もこれまでより増加しているといい、うちの親父もここ二、三年で軽度とはいえ症状を見せるようになりました。その甲斐あってか、この花粉症対策業界というのは消費が冷え込む国内にあって珍しく毎年成長を見せております。
 一般的な花粉症対策グッズはやはりマスクですが、これも改良に改良を加えられ、価格も相応に高くとも新商品が出たら飛ぶように売れ、また鼻炎止めの薬で製薬会社も大きな収入を得ているそうです。これは裏を返すと、花粉症の方がどれだけお金をかけても花粉症をどうにかしたいという心の表れでしょう。

 さてこの花粉症ですが、確かに自然現象といえば自然現象なので一人で怒ってもしょうがないのですが、災害としてみるならばこれは明らかに人災に当たります。というのも、戦前から戦後にかけて農林水産省が日本各地の国有地において、花粉症患者の最大の原因となっている杉の木を片っ端から闇雲に植えていったという歴史があるからです。

 何故農林水産省は杉を片っ端から国有地に植えていったかですが、まず第一には緑地の確保のためです。植樹は土砂災害を予防し、またその土地の保水力を高めたりもします。使用する当てのない土地であれば、荒地などにしておくよりは森林にしておくほうが明らかに好都合です。
 そして第二に、植樹した木を育てて後に建築資材として使うためです。当時は戦後のドタバタ期で、各地で住宅不足のために建築資材もどこも不足し、それを早急に解消するためだったといわれています。また建築材不足が解消された後もそのまま木材として販売し、なんだったら海外に輸出すればお金にもなる。そのため、植樹する木には建築材として適している杉などの針葉樹が中心となっていったわけです。

 しかし、この計算には誤算があったのです。まぁそれを言ったら官僚の予測で当たった試しはほとんどないんですが。
 まず時間の経過とともに、成長し切った木を伐採する費用の方が伐採した木を木材として販売する価格を上回るようになってしまったのです。この背景には日本国内の人件費の高騰と、森林伐採業者の減少、そして何より海外から木材を輸入するほうが安くなってしまったのが原因としてあります。その結果、植樹された森林は本来必要な間伐すら行われずに放置されたままで、適正な伐採も行われないために今のように無尽蔵とも言える花粉を放出するようになってしまったのです。
 更に、この政策は思わぬところで二次災害を生みました。その災害というのも、熊の下山です。

 先日、人里へ降りてきた野生の熊が人を襲い、その後猟師の方に駆除されたというニュースがありましたが、そのニュースの中で駆除された熊の体重が72キロしかなく、非常に痩せた状態であったと報道されていました。
 実は現在、日本の山は先ほども言ったように農林水産省によって杉を筆頭とした針葉樹ばかり植えられてしまい、熊やその他の野生動物の食べ物を生み出す栗やブナといった木がほとんどなくなり、山の生態系が大いに狂っているそうなのです。近年になって熊が人里へ降りてくる回数が増えたのも、そうした山中での一種の飢饉が大いに影響していると言われております。

 このように、日本の山は確かに中国ほどはげ山になってはいないものの、大いに問題のある現状を見せております。そしてそれを改善しようと思っても、木を切り倒すのに費用がかかってしまうために予算が必要で、結局放置され続けております。
 ここで私から一つ提案させてもらうと、花粉症対策には非常に費用がかかるといわれ、また二次健康被害などを起こして医療費もかかるのなら、いっそ花粉症をどうにかしてもらいたい、熊をどうにかしたいと思う人たちで基金を集め、山地の針葉樹の伐採と代わりの広葉樹の植樹事業を行ってみてはどうでしょうか。無理やり経済ベースに乗せなくとも、費用をかけてでも山の生態系を理想的なものに変えるという選択肢があっても私は良いと思います。

 今ちょっと調べてみたところによると、このような森林事業への基金は結構あるそうですので、私もまとまったお金がたまれば寄付してみようかと思います。
 また花粉症患者の数は全国で1500万人以上いるというので、この方たち全員が仮に100円寄付することによって、総合的には15億円もの寄付が集まることになります。こんだけあれば、ある程度対策はうてると思うのですが、いかがなものでしょう。一年ごとに対策グッズにお金使うより、根本的な対策になると思うんですが。

 最後に、この植樹にまつわる一つのエピソードを紹介します。
 恐らくこういった事態までは予想していなかったまでも、農林水産省の植樹に対して、唯一苦言を呈した人がいました。その人は農林水産省の役人が胸を張って、「国有林は順調に増えております」と報告されるに当たり、「しかしこれでは針葉樹ばかりで、広葉樹の植樹はどうするのだ?」と尋ねたところ、その役人は何も答えられなくなったと言われます。こう返したのは他でもなく、昭和天皇です。
 昭和天皇は生物学を大学で専攻しており、こういった問題に造詣が深かったためにこうした切り返しが出来たのだと思います。昭和天皇がただの天皇ではなかったと思わせるエピソードです。

2 件のコメント:

  1.  僕も花粉症なので、森林事業へ募金したいと思います。
     しかし、その募金がちゃんと広葉樹の植林に使われるのかがわからないと思う人が多いと思うし、根本から直していこうとする人が少ないのでそんなに募金は集まらないのではないのでしょうか?

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  2.  実際、私も実現するには非常に難しい案だと思います。
     一番この基金をやるとして問題になるのは、どの地域の伐採、植樹をやるかだと思います。いざ基金が集まってやろうと思っても、何もいきなり全国の山林を一気に伐採なんてことは出来ませんし、どう優先順位をつけていくかが必ず問題になります。
     そういった事情が反映しているのか、ネットで見る基金も地域自治体ごとというものが多く、全国規模のものは見受けられません。

     もし仮にやるとしたら、まずは実際に林業に携わっている方や植物学者などと協議し、どれほどの効果が見込めるのか、人員はどれだけ必要で集められるのか。ボランティアの活動できる範囲はあるのかなどということを調べないといけません。自分もビル・ゲイツみたいに金持ちだったらこういうことをやるんだけどなぁ。

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コメント、ありがとうございます。今後とも陽月秘話をよろしくお願いします。

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