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2008年11月1日土曜日

失われた十年とは~その五、公共事業失政~

 前回ではバブル崩壊後に日本全体で景気は落ち込んでいながらも、世界的にも現象としては珍しく当時の日本は個人消費がほとんど落ちなかったということを説明しましたが、何故個人消費が落ちなかったのかという原因の一つが、今日解説する公共事業です。

 多分今でも中学や高校の政経の時間ではニューディール政策の中の財政出動、いわば今の麻生政権もやろうとしている公共事業の必要性を説いていると思いますが、これは一種のカンフル剤的な効果しか全体の景気には及ぼさず、一時的な個人消費の増加が起こった後は元通りになり長期的に見るならほとんど景気に影響を与えないということがほぼ証明されています。
 詳しく言えばこのニューディール政策はよくTGVというダムの公共事業ばかり取り上げられていますが、真に優れていたと思われる点は私はやっぱり金融対策だったと思います。銀行などに貸し出し猶予を与えるなどして体力をつけさせ、ひとり立ちできるまでのつなぎとして公共事業を行ったというのが政策の肝なのですが、どうも後ろのつなぎの政策にしかならない公共事業ばかりに注目が行ってしまい、日本は馬鹿をやったのではないかと考えています。

 以上のように日本の政策決定者もただ財政出動をして国民にお金をばら撒けば、自然と景気はまたよくなっていくだろうと考えていたのでしょう。それこどこにどのように配るかすらもきちんと考えずに、自分たちの票田となるかといって政治家も土建屋や不動産業界へひたすらお金を回し続け、いざそれが立ち行かなくなると必要以上に膨れ上がっている業界なため、倒産が相次ぐようになったというのが現在の状況です。

 ちなみにこのような土建屋へお金をばら撒くために政府が考えた手段は、いわゆる観光事業の促進、つまり夕張市が破綻する原因にもなった巨大なテーマパークや観光施設などの建築です。90年代はこのように中央の政府から地方の政府へ箱物を建てろと強く命じ、夕張市などはこの中央の指示を真に受けどんどんと国から借金をして愚にも付かないものばかり作っていって破綻しました。そのためこの頃は中央政府から夕張市は逆に政策優等生だと誉めそやされていたと言われ、なにも夕張市にも限らずに他の各地方自治体もこのようにして今の財政難の原因とも言える借金を作っていきました。
 こうした中央と地方揃っての激しい財政出動は結果的に、客もなにも来ない無駄な施設と建物、90年代の大衆文化、積もり積もった借金だけを残しただけでした。まぁこの時期に青春時代を過ごしたというのもあると思いますが、私はこの頃の音楽とか漫画、小説といったものが非常に好きです。江戸時代も元禄時代の文化が一番評価が高いのですから、やっぱり文化というのは無駄遣いをした分だけ発展するものなのかもしれません。

 しかしこういったバラ撒き政策をしていても、不景気の根本的原因であった金融問題をずっとほったらかしにしていたために景気対策においては何の効果も挙げませんでした。
 そうこうしている内にとうとう頼みの綱であった個人消費にも陰りが出てきました。その時期というのも97年、橋本内閣で消費税の3%から5%への引き上げた行われた頃です。この引き上げの結果物価が上昇し、個人消費が急激に減少してその後のデフレ現象へとつながっていきます。

 この時期については後でまた詳しく解説しますが、これに焦った政府は政策の反省を全く行わず、もっとお金を配るしかないとばかりに小渕内閣では現在に至るまで過去最高額の公共事業へ予算が割かれ、さらにはちょうどタイムリーなネタになりますが、連立政権に公明党を引き入れる代わりに公明党が要求する政策を飲んだ結果、あの地域振興券の配布が行われることになりました。
 この地域振興券自体については詳しく解説しませんが、世界的にもこの政策に意味があるのかと疑問視する声は当時からあり、フィナンシャルタイムスに至っては「ミルトン・フリードマンが喜ぶであろう」という皮肉までしています。結論から言うと、本当に何にもなりませんでした。

 これは結果論、といってもちょっと考えれば誰でも行き着くことが出来たくらい簡単な話なのですが、同じバラ撒きをやるにしてももっと未来のある産業へ行っておけば現在の状況は全然違いました。それこそ必要以上とも言えるくらい過剰に土建や不動産業界に金をバラ撒いて姉歯事件でのどうにもならない欠陥建築物を作るより、今問題となっている介護や農業といった業界へバラ撒きが行われていれば雇用問題から食糧問題の規模も現在より全然小さくなっていたはずです。また途中で全然効果が上がらないのだからとっとと政策転換を行っていれば、今ほど国の借金も膨れ上がらなかったのに。
 最終的にはかねてより公共事業に異を唱えてきた小泉元首相の登板によりこれらの一連の政策は改められましたが、それまでに払ってきた代償は決して小さくなく、恐らく私と同じ世代の日本人は死ぬまでこの代償に追い立てられることになるでしょう。まぁもしかしたら、これからまた別の負担を背負うことになるかもしれないけど。

 次回ではちょっと手のかかる内容ですが、デフレについて解説しようと思います。ちょうどいい機会なのでポストモダンの経済政策についてもどんどん書いて行きますが、書く前からしんどい内容になるだろうなぁというのが目に見えています。
(;´Д`)ハァ

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