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2008年12月14日日曜日

日本で何故レイオフが行われないのか

 本日トヨタ自動車が今年の役員賞与を全額廃止する方針を発表しました。今回削減される役員賞与は総額約十億円との事でこれも景気の悪化を受けてのことらしいですが、皮肉にもトヨタは役員報酬は大企業の中でも非常に少ない会社(確か社長で三千万だったと思う)であるので、削減したところでどれほど節約になるかといったらすこし心もとない気はします。それでも、やるだけえらいと思うけど。

 そんなかんだで、今の日本はどの企業もあっちこっちで経費削減の嵐です。特にトヨタやソニーといった輸出に過剰に依存している企業だと先週末で88円台をつけた急激な円高を受け、確か今年の前半にトヨタは110円、ソニーは100円で社内レートをつけていたと思うから、当初の業績予想で言うとトヨタは9000億円、ソニーは500億円もこの為替だけで予想損益がマイナスを喰らうのですから、そりゃ必死にもなるでしょう。
 そのためさきほどのトヨタを筆頭にして今後もあちこちで役員給与や報酬の返納や見直しが行われることは確実ですが、それ以前に既に実行されているものとして、派遣社員の契約打ち切りなどの下部労働者の解雇も急激に広がり、ニュースなどでも報道されているように社会問題化しております。

 この労働者の解雇について不況の度に私は毎回思うのですが、一体何故日本にはレイオフがないのかいつも不思議に感じます。あんまり実態を把握してないで言うのもなんですが、金の論理で企業を動かすアメリカ企業がレイオフを行うのに対し、人の論理で企業を動かす日本がしないというのにはどうにもギャップを感じます。

 このレイオフ(layoff)というのはリンクに貼ったウィキペディアの記事を読んでもらえばわかりますが、敢えて日本語に直すとしたら「一時解雇」という意味の言葉です。このレイオフが具体的にどういう風に使われるかというと、今みたいに景気の変動を受けて事業を縮小せざるを得なくなった際に抱えている従業員に対して一旦は解雇を申し渡すのですが、その際に再び景気がよくなってきたら再雇用する旨を契約する条件として用いられます。そのため不景気が去って企業がまた事業を拡大するようになると、また新規に従業員を募集するのではなくかつて雇用していた従業員を優先的に呼び集めて人員が補充されます。また好条件だと、一時解雇中も労働契約が続くとしてわずかながらですが給料も支払われ続ける場合もあります。

 このレイオフ制度の強みは何かというと、不景気後に再び事業拡大を図る場合にまた一から従業員を教育しなおす必要がなく、かつてその企業で業務に携わっていた人間を再び雇用できるので建て直しがはかりやすい点にあります。また一時解雇の条件として先にあげたように減額された給料を支払う条件であれば、解雇されていきなり無収入になるということは避けられるので社会保障の点でも大きい効果が狙え、企業としても円滑に人員削減による経費削減が行えます。
 日本でこの制度が運用されている例としては、産児一時休暇制度等に代表される出産をする女性社員への一時休職制度がこれに当たります。これも失われた十年に社員数を大幅に厳選した企業が業務に熟知した女性社員を出産などでみすみす手放すより、一時休職させてその後に復職してもらったほうが都合がいいとの事で、私の見ている限りでは以前からは想像も出来ないほど日本企業に普及しているように見えます。

 さすがに大メーカーなどでは抱えている労働者全員にこのレイオフを行うことは事実上不可能というのはわかるのですが、熟練工や正社員の削減時にも一切この制度が使われないというのは、やっぱり日本企業にとってマイナスなのではないかと思う時があります。何故日本でレイオフが行われないか、そういった背景についてはあまり詳しくないのでもし誰か知っている方があれば是非コメントをしてもらいたいのですが、こんな時代だからこそ、如何に不況を乗り切る知恵をみんなで出し合うべきだと私は思います。

 ついでに言うと、たとえば語学留学や一年間羽を伸ばしたいというような、貯金はあるが時間がない社員に対しても結構有効な制度だと私は思っています。レイオフによって自由な時間を与えることによって最終的に、日本全体で消費の向上も望めますし、消費する側も復職する希望があれば動きやすいでしょう。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

wikipediaの「レイオフ」には、「現在では、単なる大規模な解雇を意味し再雇用は想定されないことも多い。」とあるように、現在では解雇というような意味合いしか無いような気がします。会社に出社する必要がないと言われた人が再び職場に来るのは立場的にもつらいものがありますよね。やはり一時休業させるとなると、一年間羽を伸ばしたいというような従業員の方の意志が必要になりますよね。

あと、日本では一家の主が昼間に自宅に居るというのがばつが悪いというような風潮もあり、会社から自宅待機を言い渡すのは難しい気もします。

花園祐 さんのコメント...

 そう。結局はそこなんですよね。ちょっとこの辺は消費にもかかわるから次に記事を書きますけど、もう日本人はある程度価値観を変えていかないと、経済的には自縄自縛に陥りかねず、このレイオフも有効に使うことが出来ないと私は思っています。