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2009年2月8日日曜日

週刊新潮、赤報隊事件の犯人手記について

 本当はもう少し待ってからこの件について記事を書こうと思っていましたが、なんだかネタバレの様相が出てきたのでもう私の感想を書くことにします。
 さて皆さん、俗に言う赤報隊事件というものをご存知でしょうか。この事件の詳細はリンクに貼ったウィキペディアの記事を読んでもらえばわかりますが、かいつまんで言うと朝日新聞阪神支局での銃撃によって記者二人が殺害された襲撃事件を始めとして、その前後で朝日新聞社が脅迫された一連の事件のことを指しており、犯行声明で犯人が自称した「赤報隊」という名前からこのような名前で呼ばれております。

 この事件は戦後に日本のマスメディアを対象にしたテロ事件としては二人も殺害されるなど、その残虐な手段と行為、果てには結局犯人が捕まらずに時効を迎えたことからこれまでにも度々「戦後のタブー事件史」等といっては取りざたされてきた事件ですが、週刊新潮の二月五日号にてこの事件の犯人だと実名で名乗り出た人物が独白手記を寄せた記事が載せられると聞き、俄かにまた脚光を浴びるようになりました。
 私としてもこの事件の不気味さと犯人側の目的がなんだったのかがかねてより気になっており、なんだか載せられているような気分もしたものの、発売日に週刊新潮を買った次第であります。

 それで結論から言いますが、二月五日号の発売から結構日にちが経ちましたがどうも週刊新潮の言ってる内容が怪しくなってきており、私としてもこの新潮の記事が悪意のあるものかどうかまではわかりませんが、少なくとも実名で犯人だと名乗り出ている元暴力団員の言っている内容は虚偽のものではないかと思います。

 まずざらっと週刊新潮が記事に寄せている内容を紹介すると、元暴力団員の島村征憲氏が赤報隊事件、もとい朝日新聞社阪神支局襲撃事件の犯人だと名乗り出たことから始まります。何故事件から何十年も経って犯人だと自ら名乗り出た理由として、阪神支局襲撃事件の共犯である弟分が自殺したことを受け、この事件の真実を生きているうちに明かさねばならないと考えたと話しています。
 それで二月五日号では実行犯である島村氏に指示犯のある人物が襲撃を依頼し、それを受けて朝日新聞本社襲撃事件と阪神支局襲撃事件の準備から実行に至るまでの経過が書かれているのですが、私がびっくりしたのはなんとこの号ではここまでしか書いていなかったのです。一番肝心要の犯行指示犯が誰なのか、一体どんな目的だったのかが一切明らかにされず、これだけの重要な事件の手記であるにもかかわらず連載記事にして内容を次号に持ち込むなんて、普通の常識じゃ考えられないのではないかと思いました。

 そんな具合で一発目早々からきな臭いと思いつつも、先週木曜日に発売した二月十二日号も発売日に買って続きの記事を読んでみると、犯行実行時の細かな詳細は確かに書かれているのですが、あらかじめというかなんというか、記事中に島村氏が「もう昔のことだから細部は違うかもしれないが」と断っています。別にこれ自体については私もとやかく言わないのでとっとと犯行目的を言えよと思いながら読み進めていくと、事件発生後に犯行声明を書いたのは当時の大物右翼の野村秋介氏で、これまでの憶測どおりに右翼による左派メディアの代表格である朝日新聞への思想犯説かと思いきや最後にどんでん返しが待っており、犯行指示犯について説明するその部分をそのまま抜粋すると、

「汚くて、狡猾で、不気味な男なんです。在日アメリカ大使館の職員、佐山という男は」

 これを見て、さすがに私も( ゚д゚)ポカーンとなりました。何でアメリカが朝日新聞を襲わねばならないのか、なんていうか三文小説のプロットに突然なったような感覚を受けました。第一、何でアメリカ大使館職員なのに「佐山」って名前なんだ、仮名でも「ジョーンズ」にしときゃいいのに。

 週刊新潮の二月十二日号はまたも引き伸ばしをはかってここで記事を終えているのですが、このわけのわからない記事に対して週刊文春が食いかかってきています。週刊文春の二月十二日号ではこの週刊新潮の一連の事件手記記事に対して、「朝日が相手にしなかった「週刊新潮」実名告白者」という見出しの対決姿勢満々の記事にて、まず週刊新潮の記事に対して事件当事者である朝日新聞社側の取った反応を紹介しています。
 二月五日の週刊新潮の記事で島村氏は別の事件で服役中、朝日新聞社に自ら実行犯だと名乗り出る手紙を出し、それを受けて朝日新聞から記者がやってきたが記者らの倣岸な態度を見て事件の詳細を話すのをやめたと書いているのですが、朝日新聞側はこの島村氏の証言に対して確かに服役中の島村氏と接見した事実を認めたものの、その際に聞いた島村氏の証言と犯行時の現場などの特徴が一致しなかった点や、島村氏の犯行動機などに曖昧で矛盾する点が数多いことから取り上げなかったと発表しています。
 この朝日の対応については私自身も、週刊新潮の発売直後にasahi.comにて記事の内容と真実は異なると発表しているのを確認しています。

 そうして朝日新聞側の反応を紹介した後、週刊文春では非常にネタバレな内容が書かれており、なんでも島村氏が語る犯行指示犯はやっぱり「米国大使館の駐在武官のJという人物だ」と書いており、なんで朝日新聞を襲わせたのかという動機について、

「阪神支局殺害事件で殺された小尻記者が関西のあるグループから北朝鮮が偽ドル札印刷に使用する銅製の原版を預かり、それを返さなかったことがアメリカを怒らせたからだ」

 という、自分で書いてても胡散臭い、なんかの三文小説みたいな動機が先ほどの朝日新聞社との接見で島村氏が語った内容だと紹介しています。もうのっけから、なんで原版を朝日新聞の記者が手に入れるんだよと突っ込みどころが満載です。

 こういった荒唐無稽な内容から朝日新聞社は取り合わなかったといいますが、私としてもこんな動機を言うくらいだったら始めから「右翼の思想犯による犯行」と言った方がまだ信憑性があったような気がします。再度結論を言いますと、現段階で実行犯と名乗り出ている島村氏の一連の証言は狂言である可能性が高く、新潮の一連の記事もなんども核心部を先送りにしていることといい、適当なでっち上げ記事のように思えてなりません。そんなわけで、来週の週刊新潮は立ち読みで済ませることにします。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

 週刊誌を買うなんてさすが、律儀ですね。週間新潮も週間文春もあてにできませんね。週刊誌は、あてにできないですよね。週刊誌に関する名言といえば、福田康夫氏が官房長官時代に記者に対していった「あなた、週刊誌信じてるの?」という言葉が忘れられないですね。あのときは本当に無敵だった。
 信用できる週刊誌もあるのだろうけど。

花園祐 さんのコメント...

 新聞やテレビは官公庁から情報をもらってニュースを書くことが多く、そのせいか警察や検察の汚職事件には口をつむぐことが多く、その点においては日本ペンクラブに入っていない週刊誌をはじめとした雑誌は大メディアより鋭いという傾向があります。
 要はメディアの使い分けというべきか、やっぱりいろんな媒体のメディアが存在し、互いに補完し合うのが一番ジャーナリズムとしては理想です。週刊誌も普段はあてにならないけど、たまには役に立つので潰すのはもったいないですね。