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2009年4月13日月曜日

今後の株価について

 このところ毎日のように知り合いの上海人から株価予想を聞かれ続けていたら別の友人からもこの株価について記事を書いてほしいとのリクエストが来たので、現状で私が今後の景気と株価を判断する材料をここで一挙に放出しようと思います。まず結論から言って、私はまだまだ景気も株価も暗い状態が続くと考えています。

 別に景気判断に限るわけじゃないですが、予想というのは数ある情報の中からどれが最も強い影響を持っている情報なのかを探し出すというのが一番肝心です。ですが現在の景気判断においては逆説的ですが、私はどこをどう探しても良くなる条件が見つからないばかりか今後も悪化していくのではないかとうかがわせるような情報しか見当たりません。そういうわけなので、順番に注目している情報を挙げていきます。


1、ビッグスリーの破綻
 現在アメリカの自動車ビッグスリーのフォード、クライスラー、GMは自分では取引先への支払いはおろか従業員へ払う給料すらも自前では用意できず、これらの支払いに使う資金の大半をアメリカ政府に肩代わりしてもらっております。何故これほどまでこの三社が優遇されるかといえばアメリカ国内においてこの三社が雇用している人数が非常に大きく、倒産させては一挙に失業者が街に溢れることになるからです。
 とはいえこの三社の製品は国際的にお世辞にも競争力は強くなく、税金を投入してまで行き永らえさせても結局は一時しのぎにしかならず最後には倒産して無駄金に消えるのではないかと国内でも強い批判がされており、そのため政府としてもタダでとはいわず、過剰な従業員の待遇廃止やリストラといった具体的な再建策を融資条件にしているのですが現時点で三社はまだ思い切った再建策を出しておりません。

 そうした中、あるタイムリミットが実は目前にまで迫ってきています。そのタイムリミットというのもクライスラーへの追加融資条件のことで、イタリアの自動車会社フィアットとの資本提携です。
 国際的にも競争力もあり(アルファロメオは私も好き)、アメリカに強い販路を持っていないフィアットとの資本提携をまとめることをクライスラーは政府から融資条件として与えられていますが、一時は話がいいとこまで進んだらしいですがここに来てフィアットの方が落ち目のクライスラーを救うどころか一緒に引きずり込まれるのではという懸念が強まり、どうも交渉は暗礁に乗り始めているそうです。しかも今回の融資条件は期限が区切られていて、その期限は昨日の朝日新聞によると二十日を切っているそうです。

 仮にこの話がまとまったとしても私はアメリカのビッグスリー三社が今後も生き残ることはありえないと思いますし、それを無理やり生き永らえさせても百害あって一利なしだとまで思います。言ってしまえばすでに経営的には破綻しているのだから、ビッグスリーのうち一社だけでも去年のうちにリーマンブラザーズ同様倒産させるか別の二社に吸収させるべきだったでしょう。
 アメリカ政府がそこまで腹を決められるかですが、私は最低でも今年中にビッグスリーのどれかの管理機構入りの破綻は確実だと考えており、その際に大きく株価が下がることが予想されます。逆を言えば、その時が買いなんだけど。


2、政治的混乱
 今度は日本の話ですが、どれだけ先延ばしにしても今年中に総選挙が行われます。この選挙の後に起こる可能性については大分前に一回記事にしていますが、現状ではその時に挙げた最悪のシナリオこと、自民も民主もどちらも単独過半数が取れないという趨勢になりつつあります。
 どっちかが過半数を取るならともかくどっちも単独過半数を割る、もしくは自民党が議席の三分の二を割るだけでも政権を取った与党にとって国会運営は非常に困難をきたすようになり、そうした政治的混乱が市場に与える悪影響は計り知れません。この前までは民主党が非常に優勢だったので何とか民主が勝ってくれるという希望があったのですが例の小沢代表の秘書逮捕を受けて、かといって自民党も相変わらず人気が上がらず、このままでは次の選挙は勝者なき選挙で終わってしまう可能性が高いです。

 言うなればこの際どっちでもいいから選挙で大勝して安定した政権を作ることが一番大事なのですが、検察が余計なことをするもんだから日本にとっての危機は増大したでしょう。またどちらも中途半端に終わって政界再編がスムーズに行われるというのであれば話は別ですが、そんなにうまくいけば誰も苦労はしません。渡辺喜美議員も飛び出したはいいけど、見事に誰も付いてこなかったし。


3、政策的失敗
 ちょうど昨日に書きましたが、今の政府の景気対策の中身に私は非常に疑問を持っています。確かにお金を積めば今みたいに一時的に株価は上げることは可能ですが、それらのお金は突然降って湧いたものではなく将来返さなければならない借金です。今年の間はともかく来年度以降は徐々にその軋みが現実にも及ぼすようになり、金融総理こと与謝野大臣も明言している通りに2011年には消費税の増税も織り込み済みで、将来の増税が目に見えている資本投入で市場が刺激されるとは思えません。

 そしてなにより、今の日本の経済上の問題点がどこにあるのか、何をすればいいのかという現状分析がきちんとなされないままの今回のように資本投入されてしまうことに苛立ちを覚えます。私は今の日本が抱える最大の問題点は二十代の失業率が10%を越えるまでの若者の不安定な雇用環境と内需の決定的な不足、そして外需に丸頼みの輸出依存型の経済体制だと考えています。これらの問題点をどう克服するか、どれだけ力を入れればいいのかという議論なしで今後の経済成長はまずありえないと考えます。


4、オバマ政権の顔ぶれ
 これは今朝読んだ文芸春秋の「強欲国家米国が破産する日」(神谷秀樹著)に書かれていますが、今のオバマ政権の経済政策官僚のラリー・サマーズ国家経済会議委員長とティム・ガイトナー財務長官というのは、なんでもクリントン政権時の財務長官であるボブ・ルービンの門下生だそうです。この人の経歴というのも元ゴールドマン・サックス会長、シティグループ上級アドバイザーといった見事な経歴で、まさに今回の金融危機の元凶を作り出した一派の親玉みたいな人で、彼らを批判していた側の人間でなくまさに危機の元凶を作った一派の人間を政権に引き入れて果たして今の問題を解決へと導けるのかと神谷氏も言っていますが、言われることごもっともです。


 こうした判断材料から、私はまだまだ景気は明るくならないと考えております。先ほど引用した神谷氏が同じ記事にてリーマンショックからもう半年以上経つが、未だに今回の金融危機は全体像が見えず景気の底がわからないと述べていますが、私もこの意見と同じで全く以って現状分析が成り立たない今の段階で景気が落ちることはあっても良くなるとはとても思えません。
 そうはいってもこのところ日本の株価は上がっているじゃないかと言われるかもしれませんが、これは一昨日に友人とも議論しましたが、定額給付金を始めとした中身のない予算が通っただけでこれほどまで株価が上がる要素とは思えず、恐らく投資ファンドや年金機構などが契約の制約上、期末、期首ゆえに無理やり株式や通貨を購入した結果で、いわば偶発的なもので長くは続かないだろうという結論に終わりました。はっきり言いますが先月から今月にかけての株価上昇は異常なまでに不気味で、もし株を持っている人がいるのなら今のうちに売り払うべきだと思います。

 さて、これで明日からでも株価が思いっきり下がってくれれば鼻高々なんだけどなぁ。

4 件のコメント:

サイトウを継ぐ者 さんのコメント...

なるほど。
僕も株価が一挙に一万円を回復して順調に上昇することはないと思う。一方で、株価が七千円を割るようなこともないと思う。明らかに、いままでの下げが異常であって(輸出関連の銘柄なんて、主力銘柄と呼ばれるような大型株まで、最高値の五分の一以下に下がるような状況はおかしいでしょ。)、それに比べたら、ここ一ヶ月の上昇なんてたいしたことないんじゃないかな。いままでの反動で上がっているだけ。

最近の株価上昇は、よく下値不安が後退したからと説明されるけど、そのとおりだと思う。どこまで下がっていくか分からない不安から売らざるを得ない、恐怖が支配する相場からようやく抜け出し、期待が支配する相場へ移行しつつある。

仮に、ビッグスリーの一角(クライスラーが一番やばいよね)に破産法が適用されたとしても、アメリカの金融機関の決算が好調であれば、株価には一時的な影響しかないと思う。日本政府が実施する不良債権買取や価格下落した株式の買取、企業への資金融資の政策は支持できると思う。財政赤字を気にするあまり、大胆な政策を断行しようとしないEU
諸国よりはずっとましでは。
個人的には、期待が支配する相場がもう少し続いてほしいなー。

石男 さんのコメント...

どうなんですね、これからの景気。

まだまだ先が見えないんすかね?

まぁしかし、中国の下落し続けた不動産価格に歯止めがかかったりと、少しずつ良いニュースが出てきている気がせんでもないですが。

花園祐 さんのコメント...

 ちょっと石男さんにはきついことをここで言っておきますが、価格の変動に目を取られるほど経済予測で危ういものはありません。退化に一時的な金融危機は去った安堵感から株価や不動産価格は高まっていますが、実経済は工業を中心に今でも不況真っ只中で、これなんか私も関わっているから実感するけど、東南アジアも今年に入ってから本格的に不況が現れてきております。

 ほんの一ヶ月や二ヶ月の株価の変動を見るより、需要と供給の観点から実経済を見ないとあとでえらいしっぺ返しを喰らいます。そういう意味でここ数年はアメリカの無茶振りな浪費によって需要がまかなわれて好況だったのが、もうアメリカはあれほどの需要を作ることは出来ないし、日本国内では不安定雇用と人口減で今後も減り続けていくことが予想されます。

 それに対して日本の企業は去年までどこも設備投資を行い続けたせいで、その投資額の返済がじわじわと首を絞めてくることになると思います。まぁ私の考えの方が間違っていることもあるのですが。

石男 さんのコメント...

確かに日経新聞では日本を代表する企業が赤字であるという記事が毎日のってますしね。

東南アジアでいえば、タイの経済状況は本当に最悪ですね。