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2009年10月10日土曜日

続、日本のスポーツ教育といじめ問題についての考察

 本当は昨日に書きたかったのですが、昨日にこんな目を疑うようなニュースありました。

「礼儀なってない」就寝中の下級生108人に正座 松江高専の寮(YAHOOニュース)

 上記にリンクを貼ったニュースの内容を簡単に説明すると、松江工業高等専門学校の寮にて就寝中の下級生108人が夜中に突然上級生4人に礼儀がなっていないということを理由にグラウンドに呼び出され、一時間半にも渡り正座やランニングを強制されたことが判明し、学校側は事実関係を認めた上級生4人に対して退学を勧告して全員そのまま自主退学し、また寮の各部屋への呼び出しを行った2年生7人にも停学処分を行ったということが報じられております。

 言葉が汚いですが、この事件で退学となった上級生らは頭がおかしいのでは、というのが最初にニュースを見た時の私の感想です。一体何の権限があって就寝中の下級生を呼び出してこんな意味のない制裁を課したのか、私が典型的な文化系の人間だからそんな風に思うのかもしれませんがどうあがいてもこんな事をしようとする人間の考え方が理解できません。しかも記事によると上級生らは後で脱いだそうですが当初は目出し帽のような覆面をしていたそうで、自分たちのやっている事が容認されるような行為ではないと自認している節すらあり、同情する余地が全く感じられないことから学校側が行った事実上の退学処分について私も適切であったと思います。

 それにしても、この事件は見れば見るほどに呆れさせられる事件です。呼び出しの理由が「礼儀がなっていない」だったそうですが、いくら上級生とはいえこんな事をしようとする人間にだけは礼儀を教わりたくはありません。それでも一体何故こんな理不尽でアホらしい事が計画され本当に実行されてしまったのかといえば、いわゆる日本型体育会系的縦社会組織の弊害に尽きると私は思います。私がここで長々というまでもなく日本の中学、高校の寮や運動部のほとんどでは礼儀、上下関係を教えるという名目の元に、上級生から下級生への理不尽な暴力、しごきが常態化していると言われております。

 この問題について私は以前に、「日本のスポーツ教育といじめ問題についての考察」という記事で取り上げたのですが、実はこの記事と「犯罪者の家族への社会的制裁について」の二本の記事は去年に書いた記事であるものの、FC2の出張所の方では現在に至ってもコンスタントに拍手ボタンが押されるだけでなく非公開でのコメントもいくつか受け付けており、あくまで小さいながらも書いた本人も驚くほどの息の長い反響を得ております。ただ驚くとは言っても、両方とも他の記事と比較して書いた際の力の入れ具合は大きかっただけに、評価していただけて非常にうれしく思っております。

 話を戻しますが、そんな教育的処置の名の下での上から下へのしごきと呼ばれるいじめについて、私は日本はもっと本格的に憂慮すべきだとかねがね思っていました。何故ならそうした組織的価値観が本来合理性を追求すべき企業、官公庁といった組織にも引き継がれ、日本全体の利益や幸福を大きく逸させていると考えており、なによりもこんな明らかに馬鹿馬鹿しい事をいつまでも続かせるべきではないと思っていたからです。

 そうした考えを、この前このブログの話が出たときに私の従兄弟に話す機会がありました。ちなみにその従兄弟は私と一番年齢が近い従兄弟ながらもうちのお袋が兄弟で末っ子で、なおかつ婚期が遅かったせいで十年も年齢が離れており、子供時代から今に至るまでよく可愛がってもらっています。
 実はその従兄弟、高校へは中学時代のバレー部での活躍からスカウトを受けて進学し、進学後には見事インターハイにまで出場している根っからの体育会系出身です。それだけに自分のこの考えにどのように反応するかとかねがね気になっていたのですが、まず部活内でのしごきは私も主張しているように何の練習効果もないとはっきり頷きました。しかし、それだったら直ちにそういったことは止めるべきじゃないかと続いて私が言った所、それには従兄弟は首を振ってこう言いました。

「しごきが明らかになんの練習にもならないとみんなも分かっているが、それでもしごきをした年代が試合で勝てば効果があることになってしまい、下の年代にも引き継がれていってしまう。また仮にある年代でそういったしごきを止めたところでその下の年代がそれを続けるかは分からないし、部活顧問が規制をしてもその顧問が辞めて新しくやってきた次の顧問になったらまた復活してしまう事もある。そんな感じでこういったしごきは常に順繰りに繰り返されたりするものなのだから、少なくとも絶対に止めさせることはできないんだよ。体育会系の世界ではそれが当然で、理屈なんてないんだ」

 実際にそういう世界にいた従兄弟なだけに、この返答は私にとって重みのある言葉でした。ただ話す時になにか憂いを含んでいるような態度があったように思え、気になって例の婚期の遅かったうちのお袋にこういうことを話したと言ったら、従兄弟の高校時代について教えてくれました。
 なんでも強豪と呼ばれた従兄弟の高校のバレー部でも他の類に漏れずいじめやしごきが激しく、あまりの仕打ちに高校一年生の時に従兄弟も寮を飛び出し、片道30キロほどの道のりを歩いて両親の実家まで夜中に逃げてきた事があったそうです。そんな経験から従兄弟らが三年生になった時、もうこんな事は止めようと同学年のチームメイトともに部活内改革を行っていたそうです。そうした経験があったからこそ、上記の言葉につながったのだと思います。

 そのような従兄弟の経験を考えると、やはりこういった部活内などのいじめやしごきを日本人が止める事は非常に難しいことなのでしょう。しかしほんの少しずつでもいいから、馬鹿馬鹿しい事だとみんなが自覚しあってこういったことを減らして行かねばと、所詮は文化系の理想論と言われるかもしれませんが私はこうしてブログにてこの問題を訴えつづけていこうと思います。

2 件のコメント:

サカタ さんのコメント...

 体育会系の人は、原因と結果を考えないのでだめなんでしょうかね。

 人は集団になると、誰かを仲間はずれにしてしまいますよね。それに、人に依存しなければ生きていけない人達や他者を排除しないと、自分を肯定できない人達は、必ず人に害を与え続けていくでしょう。そういった人たちをなくさなければこういった問題は解決しないと思います。

花園祐 さんのコメント...

 自分もやはり、日本人の過剰な集団性はもはや自分たちに弊害を与えるところまで来ていると思います。個人主義が何でもかんでもいいというわけじゃありませんが、少なくとも今の日本人はもう少し集団主義的概念を小さくする必要があるでしょう。