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2009年12月27日日曜日

北京留学記~その三十、南方旅行三日目

 この南方旅行も三日目、最終日の記事となりました。

 前日に簡易宿泊所に泊まっており、朝八時の便で上海に向かう事となっていたために起きるとともにすぐに部屋を出ました。床には昨夜同様にびっしりと宿泊者が雑魚寝しており、そろりそろりとよけて出口へ向かう途中、ソファーの上で寝ていた宿泊所の経営者らしき男性が私の気配に目を覚ましたので、「もう出発なんだ」と小さな声で伝えると、向こうも軽く会釈で返してきました。

 早朝の南京は日本と同じく非常に静かで、駅構内も昼間の喧騒はどこ行ったのかと思うくらいに閑静なものでした。あまりにも閑静すぎて、朝食を買おうと思っていた売店すらも開いてないし……。さりげなく書き進めていますが、この旅行中に口に入れたものは本当に少なかったです。

 そのまま朝食を抜いてプラットフォームで待って時間通りの列車に乗り込み、予約していた座席もなにも問題なく座れて移動においてスムーズに事は運びました。以前にイギリスでロンドンからウェストミンスターへ行った時は予告なしで何度も乗り換えさせられた挙句に道に迷い、死ぬ思いでたどり着いたのと比べると全然マシでした。
 列車の中では日本の新幹線よろしく売り子があれこれ持ってきて車両を移動していたので、カットフルーツを買ってそれを食べましたが、この後にお腹を下すのですがもしかしたらこの時の果物がよくなかったのかもしれません。

 そんな南京から上海までの列車での移動時間は確か三時間程度だったと思います。その間、それこそ日本の新幹線のような座席の上で座りながら外の風景を眺めていたのですが、席を立ってトイレに行く途中、デッキの壁に貼り付けられた紙に、

「文明人は唾を吐かない」

 と、中国語で書かれていました。書かなきゃだめなのか?

 少し話が脱線しますが、日本人からするとちょっと驚いてしまう妙な注意書きは中国ではあちこちに貼られております。有名どころだと天安門前の故宮入場チケット売り場には、「文明人なら行列にちゃんと並べ」と貼ってあるように、何かと「文明人」という言葉が注意に多用されております。

 これら注意書きの表記は決して中国人が文明人ではないというわけではなく、私は民族性の違いだと考えております。私が思うに中国人は何か相手の行動を制限する際、自分たちのプライドが高いことをわかって相手のプライドに訴えかける傾向がある気がします。それに対して日本人は自分達の空気を読む力を逆手にとって、相手の共感に訴えかける傾向があり、「みんな見ているぞ、ごみの不法投棄」といった注意書きや、母親が子供に注意する際に、「こんなことされると、お母さん悲しいよ」と言うのにつながってくるかと思います。

 話は旅行の話に戻り、短い列車の旅を終えて上海駅に着くと、まずビックリしたのが人の多さでした。駅のチケット売り場ともなるとそれこそ人でごった返すという光景そのもので、人ごみを掻き分けどうにか帰りの北京行きの夜行列車のチケットを購入すると、その日半日の上海観光に乗り出しました。

 まず最初に上海限らずどこにもあるチェーン店の「永和大王」というファーストフード店で昼食を取り、その後地下鉄にて上海博物館を見に行きました。その際に利用した地下鉄ですが、こちらは当時出来たばかりということで北京の地下鉄と比べると断然に綺麗でおしゃれな列車で、しかも北京は手で千切る昔からの切符に対して上海では日本同様に磁気切符による自動改札となっており、日本では珍しくないものの何故かこの時の私は興奮してしまいました。

 そうして地下鉄を乗り継ぎ上海博物館へと訪れましたが、まずここで驚いたのは自分に学生割引が適用された事でした。私は留学前にISICという国際学生証を作って持ってきていたのですが、北京の故宮では本科の学生は入場料が割引されるのに対し、この国際学生証を見せても何の役にも立たず結局正規料金を払うこととなったのですが、上海ではいい意味で外国人慣れしているのか、この国際学生証で入場料を割引してもらいました。
 それで肝心の博物館の中身ですが、まぁ好みに寄るとは思いますけど、ね。

 そんなわけで早々に博物館を出ると、次に上海で一番の繁華街と言われる南京路へと向かってみました。着いて早々これまたまず驚いたのが、左右に立ち並ぶ数多くの外資系外食チェーンの山でした。北京にも吉野家やイトーヨーカドーはありましたが、はっきりいってこちらも比べ物にならないほど日本に限らず数多くの外資系チェーンが軒を連ねており、さらに驚かされたのがそれらの店の中の値札でした。

「値札が四桁?(;゚Д゚)」

 四桁、つまり1000元(約15000円)以上の商品が普通に店舗内に溢れているのにまず面食らいました。北京でも高級品を扱う店なら珍しくはありませんが、上海では本当にそこらへんにあるようなブティックでこんな値段の商品があるというのだから、正直目を疑いました。なお私は北京で400元(6000円)のコートにも高いと憤慨したほどです。

 こうした中国国内の格差に驚きつつ、再び人でごった返す南京駅に戻って帰りの列車を待つ事にしたのですが、ここでもまた失敗をやらかしてしまい、駅の中にある売店にはサンドイッチくらいはあるだろうと踏んでいたところ、売店はあったもののそこにはちゃんとした食べ物がまたしても売っていませんでした。しかもすでにチケットを切って校内に入っているからもう外には出られず、泣く泣くカップケーキを一つ買って、それを夕食だと思い込みながら食べて列車に乗り込みました。前日の南京といいこの日といい、両日とも昼食を一家いつずつしか取らないイスラム教徒もビックリな粗食っぷりでした。

 その後乗り込んだ帰りの列車では前回にも取り上げた青島のサラリーマンと同乗することになり、彼からあれこれ情報を得るが出来ました。なおその時に得た情報の補足になりますが、その青島のサラリーマンに、現在中国で一番羽振りのいい業種は何かと聞いたところ下記のような答えが返って来ました。

「北京の中関村は知っているだろう。あそこで働いているやつらだ」

 中関村というのは中国の秋葉原と言っていい北京における最大の電気街で、要するにIT関係の業種が一番羽振りがいいと教えてくれました。すでにこの証言から四年近く経っておりますが、大勢では大きく代わりがないと今も考えております。これまた前回に取り上げている、私と接したNECの社員などはいわゆる勝ち組なのでしょう。

 こんな具合で合計一泊四日の旅は北京に朝早くに戻ることで終わりましたが、今考えても無理しすぎであったと思います。唯一まだまともな判断だったのは行きと帰りの列車に、一等客室の「軟臥」を選んだことだと思います。それにしてもいくらまだ中国語に自信がなかったとはいえ、旅行の間に取った食事はたった二回の昼食だけだったというのも情けない話です。
 ちょうどこの旅行は留学開始から半年後に行ったのですが、私の中国語もこの後から急激に前進が見られてきたので、もうすこし時期を待ってから行っていれば又違っていたように思えます。まぁだからこそ、こんな変な旅行記が書けるのですが。

2 件のコメント:

サカタ さんのコメント...

 一泊四日の旅は文字道理ハングリーな旅になったようですね。上海の物価は以上ですね。上海は吉野家の牛丼も高くなっているのですか?そこがちょっと気になりました。

 NECの社員が羽振りがいいのは日本と同じですよね。まあでも、システムエンジニアの人はそれと同等かそれ以上の大変さがあると思うけど・・・。

 

花園祐 さんのコメント...

 以前からSEは非常に過酷な職業だとよく言われていますが、なんか不況のこの時期になってみると別にSEに限らずどの職種でも満遍なくうつ病を発症させているので、なんかあまり珍しく感じなくなりましたね。