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2010年4月2日金曜日

中国がどうしても先進国になれない理由

 世の中、考えればすぐわかる事でもはっきり言われるまで誤解しているということがよくあります。今の地球が温暖化することで海水面が上昇する事なんてありえないということ然り、若者は車離れしてるというが今の若者はそもそも車に興味を持った事がないということ然り。
その中でも中国関係の仕事なり研究なりをしている人にとっては当たり前でもそうでない人には意外と知られていない事実として、たとえ中国がどんなに、何十年努力したとしても絶対に先進国にはなれないという事実があります。

 先月、モナコの提案で地中海産マグロを絶滅危惧種を保護するワシントン条約によって禁輸すべしという決議が行われましたが、結果は日本国内の下馬評を大きく覆して大差で否決となりました。日本人は世界で最もマグロを食べているというだけあってこのニュースは国際ニュースの割には会議前から連日大きく取り上げられており、その注目も高かっただけに結果が出るや、まるで戦争にでも勝ったかのような会議否決を歓迎する報道があちこちで見られました。

 そのようなニュースでは一体何故予想を覆して否決が賛成票を大きく上回ったのかというと、会議直前まで続けられた日本による他の会議参加国へのロビー活動が実を結んだと大きく報道されていましたが、私はというとこの報道は実は怪しいと考えていました。というのも日本はこれまでの国際会議では空気を一切読まずに地雷禁止条約に反対するなどほとんどアメリカに追従しているだけで自国の思惑に他国を引っ張るというロビー活動など出来るものかと甚だ疑わしい外交しかしておらず、また会議前の国内報道では否決させるのは難しいなどと弱気な意見ばかりが出ていたなどロビー活動が功を奏していたというのならやや矛盾している状況があったからです。

 ではどうして否決国が多くなったのかとなると、もちろん証拠なんてどこにもありませんが、私はあのマグロ禁輸の会議で否決に持ち込んだのは他でもなく中国だったと思います。そう思う理由をいくつか挙げるとあの会議で否決票を投じた国には日本にはあまり縁がないけれどもこのところ中国が援助をバンバンと行って影響力を強めているアフリカ諸国が多く、当の中国自身もこのところマグロの消費量が増えてきている事から日本や韓国とともに提案がなされてから一貫として反対を続けてきていました。
 一部週刊誌のみがこうした見方を呈して赤松農水大臣は中国の手柄を自分のものとして喧伝していると指摘していましたが、私もこの週刊誌の報道を見る前から同じ見方を持っていました。

 ちょっと話が大きく外れましたが、このように国際会議の場においても日増しに発言力を増してもはや自ら先進国の域に達したとまで自称する中国(都合のいいところでは発展途上国と自称するけど)がどうして先進国にはなれないのかというと、先ほどのマグロの話とも関係があります。結論を言ってしまうと、中国は人口があまりにも多過ぎるために先進国並の生活を行うと地球の資源が持たないからです。

 最近はちょっと落ち着きましたが、三年前頃から中国のあまりの経済成長によって日本からくず鉄と古紙が急激に不足するようになりました。これらくず鉄と古紙はほぼすべて北京オリンピックを控えて活発な生産活動が行われていた中国へ持っていかれたために日本で不足したのですが、これら二つの資源に限らずこのところ中国人が手を出すようになった資源はどれも世界中で一挙に不足するという事態がこのところ頻発しております。前にはワインを飲むようになってつまみのチーズが急に不足したというし。

 我々日本人からするとイメージしにくいですが、資源というものは基本的には有限で、需要が低い資源ならともかく需要が高い資源は文字通り奪い合いになります。これまで中国を初めとした発展途上国の指導者らは先進国が富を独占するから発展途上国は豊かになれないと批判してきましたがこれはまさにその通りで、経済力の強い上位数パーセントの先進国が世界の過半数以上の資源を独占してきたのがこれまでの世界です。

 しかしこうした体制も、近年の中国やインドといった急速に経済成長を果たした急成長国らの登場によってほころびが生じ、石油から鉄、そして今回槍玉に挙がったマグロを含む食料といった資源が徐々に戦国サバイバル的な様相を見せ始めております。特に中国やインドはそれぞれの人口が半端でないために、その影響力も生半可なものではありません。

 ここまで言えばもう大体察しが着くと思いますが、少なくとも現時点において、中国人全員が先進国並の生活を行うに足る資源が地球にないため、一部の富裕層ならともかく中国は国全体としては絶対に先進国になれないのです。たとえどんなに中国が努力して経済成長を果たしたとしても。
 もちろんこの事実は中国政府も十分に理解しているでしょうが、今の中国の貧困層を支えているのは、「頑張れば、みんな裕福になれる」という希望であるために、絶対にこんな事は口にせずむしろ希望があるかのように宣伝しております。幾ら頑張っても一部の人しか裕福にならないなんて言ったら、多分暴動起こるだろうし。

 これは逆に言えば、そろそろ資源の枯渇などについて日本人もいろいろと考えるべき時期に来ていることになります。経済力が低下して他国から資源が買えなくなるのは言うまでもありませんが、たとえ現状の経済力を維持したとしても中国のような国が一定度の成長を果たすだけで資源は確実に世界からなくなります。そのような時代にはどうなるか、私がわざわざ言うまでもないのでここでは書きませんが、せめて自分が生きている間くらいは資源も持って欲しいなと思います。

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