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2010年8月2日月曜日

組織拡大と綱領について

 イギリス元首相のトニー・ブレアとなると日本ではジュニアブッシュに追従してイラク戦争に参戦したことからあまりいい評判ではありませんが、こと内政に関しては長く続いたイギリス病と呼ばれる長期不況から脱するなど目覚しい功績を残しております。そんな彼の経歴ですが、労働党の党首に若くして就任するやそれまでの労働党が持っていた社会福祉の絶対重視という綱領を一部捨て、保守党のマーガレット・サッチャーに始まる「第三の道」こと新自由主義路線の政策を採って中産階級にも支持を大きく広げることでなんと44歳という若さで英国首相という地位に上り詰めております。

 トニー・ブレアの細かい政策内容についてまでは言及しませんが、彼は社会主義的性格の強い労働党の労働者保護などといった綱領を一部緩めるという事で組織拡大に成功したわけなのですが、早くから結論を述べると基本的に組織というのは綱領を強めた所ほど組織が縮小し、逆に緩めたところは組織拡大が起こる傾向があると以前から見ております。
 同じく社会主義政党で英国労働党とちょうど好対照なのは日本の社民党なのですが、ここは冷戦が終わって社会主義国家像が薄れてからは以前よりも労働者保護と憲法護持という従来の主張をどんどんと強めていったのですが、結果は見ての通りですでに生息と息の泡沫政党にまで成り下がってしまいました。

 私は組織というのは基本的に、アメーバのようなブヨブヨした流動体のような形で想像しております。組織というのはそのようにブヨブヨしているものだから、いくら綱領という凝固剤を投入したとしても時間が経つにつれてどんどんと崩れ落ちて行き、ボーっとしているとそのまま組織自体がなくなってしまうように考えています。
 では組織を維持するためには何が必要なのかといえば、単純に行って門戸を大きく開き、新規の加入員をどんどんと連れてくることが何よりも大事です。たとえ一時期に大きな人気を博した綱領(憲法護持など)も経年劣化は避けられるわけもなく、時代ごとに求められる新たな概念を打ち出さなければ政党というものは自然消滅していくように思えます。

 なにも日本の社民党に限らず世界的にも落ち目になってから従来からの支持者を強く繋ぎとめようと昔から持っている綱領を強めた組織は数多くありますが、結果的にはどれも余計に門戸を狭める事になって消滅を早める例が多いです。
 何も綱領を全く持たずに緩々の組織であれば言いというわけではありませんが、がちがちに綱領を固めればいいってもんでもないという事でよくこのトニー・ブレアの話はあちこちでするようにしております。

 翻って今の日本の消費市場ですが、どこの企業も対象とする顧客を強くゾーニングし、限られた顧客層に強く商品を売り出そうという傾向がこのところ強く見えます。顧客対象を調査して狙いをつけるということ自体は悪いというつもりはありませんが、なんていうか新たな商品をこれまであまり縁のなかった顧客層にもどんどん広げて行こうという、拡大していこうというような気概がどうもこのところ感じられません。昔のチキンラーメンみたいに、日本の食を変えてやるというような商品がでてこないものかとこのところよく思います。

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