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2010年9月21日火曜日

厚労相郵便不正事件、捜査検事逮捕について

 私は現在通勤時間が約二時間の職場に通っているため毎朝大体6:50くらいに家を出るのですが、毎日家を出る前にうちのポストに刺さっている朝日親新聞朝刊の見出しを刺さったままの状態でかがみこんで見るのが習慣となっています。うちが朝日新聞を取っているのはお袋が朝日の新聞屋で集金のパートをしているからなのですがそれは置いといて、今朝また怪しい格好で覗き込んだ一面見出しを見て私は思わず息を呑みました。

最高検、主任検事を証拠隠滅容疑で逮捕 郵便不正事件(朝日新聞)

 私も先日に「偽障害者団体郵便不正事件、村木厚子元局長の無罪判決について」の記事にて取り上げた郵便不正事件の捜査において、この事件を主導して捜査した大阪地検特捜部所属の前田恒彦検事が重要な証拠の改ざんを行った容疑でつい先程逮捕されました。

 まさに電光石火とはこういうことで、この前田容疑者逮捕へ至る発端は今朝の朝日新聞による「検事、押収資料改ざんか」という見出しの記事からで、報道が行われた今日の今日に前田容疑者は同じ身内の最高検察庁により逮捕されることになりました。因みに今朝通勤途中で読売など他紙の一面を確認しましたがこの朝日の報道はどこも触れておらず、事実上朝日新聞一社独占のスクープだったのでしょう。

 今回前田容疑者が逮捕された容疑をかいつまんで説明すると、この事件において検察により関与が疑われたために不当に逮捕され、すでに無罪判決を受けている村木厚子氏の無実を証明するに当たり重要な証拠となるフロッピーディスク内のデータの日付を自分達の都合のいいように改ざん、言い換えるなら村木氏を冤罪に陥れるために改ざんしたという、まさに前代未聞ともいえる容疑からでした。

 具体的にどのような改ざんが行われたかというと、村木氏の元部下の上村被告が偽障害者団体へ発行した偽造証明書の作成日を2004年の6/1から6/8へ改ざんしたと報道されております。この改ざんがどのような意味を持つのかというと検察は今回の捜査、裁判において村木氏は上村被告に対して六月上旬に証明書を偽造するよう指示したと主張して事件を組み立てていましたが、実際の偽造証明書は6/1に作成されているため、これでは村木氏が偽造を指示したとされるのは5/31以前でなければ不可能ということなり事実上検察の見立ては崩れてしまいます。
 ですがその作成日が6/8であればさきほどの六月上旬という検察、というよりは前田容疑者のストーリーに矛盾がなくなり、いわば事実を無理矢理に捻じ曲げて都合のいい証拠を作成しようと改ざんしたと見られております。

 結局この日付が改ざんされたデータの入っているフロッピーディスクは公判前に村木氏が日付の矛盾に気がつき指摘した事で検察も裁判中に証拠として使用せず、逆に弁護側が元の日付と検察のストーリーの矛盾を攻め立てた事で村木氏の無罪獲得への重要な証拠となったわけですが、仮にもし誰もこの日付の矛盾に気がつかず、検察が改ざんした日付のデータを証拠にして有罪が下されていればと思うと私も寒気を覚えずにはいられません。
 この改ざんについて当の前田容疑者は「遊んでいるうちに間違って変えてしまった」と同僚らに語っていたと報じられていますが、そもそも捜査に重要な証拠を私的に使用するなんて本来あってはならない話で、仮にそれが事実だとしても何故今の今まで自己申告しなかったのかと子供がつくような嘘も大概にしろと厳しく言いたいものです。

 またこの改ざんについても朝日新聞がその問題のデータ(どうやって手に入れたかまでは書いてないが)を大手情報セキュリティ会社に解析を依頼した事で改ざんの有無と改ざんが行われた日付を割り出したことで明らかになりましたが、これも朝日が報じていなければどうなっていたのか気になります。
 さすがに朝日新聞が報道したのを受けて検察もこの改ざんの事実を初めて知って今日の今日にすぐ前田容疑者を逮捕したというのは考えられず、恐らくは内々でこの問題の対応や処分が検討されている中で今朝の朝日新聞の報道があり、世間の批判を受ける前に慌てて前田容疑者を今夜逮捕するに至ったのではないかと思います。これは逆に言えば、世間に大きく報道されなければ大阪地検は前田容疑者を捜査担当から外す程度の内々の処分で済ましていたのではないかとも疑えるわけです。

 どちらにしろ今回のこの前田容疑者の行動は捜査機関の職員としてはあるまじき行為だけでなく、無実の人間に偽の証拠を偽造してまでも冤罪に陥れようという一人間としても最低極まりない畜生に等しい行為に他なりません。聞く所によるとこの前田容疑者はたまたま今日収監された守屋元防衛庁事務次官の収賄事件や小沢氏の資金管理団体の事件などいろんな事件の捜査に携わったとされており、言っちゃなんですがこれら前田容疑者が関わった事件は証拠が偽造されてないかすべて洗いなおす必要があるのではないかと思います。

 その上でノンフィクション作家の吉岡忍氏がNHKのインタビューで指摘していましたが、この検察内の不祥事を同じ身内の検察が逮捕、捜査してもいいのかという気もします。吉岡氏も当の本人でもある村木氏もこの前田容疑者の最低極まりない行為は第三者機関を交えて公平に調べる必要があると述べており、検察は外部の有識者団体を入れなければまず間違いなく失った信頼を取り戻す事は出来ないでしょう。

 私が検察に対して初めて不信感を覚えたのは2005年に発刊された佐藤優氏の「国家の罠」を読んでのが最初で、その後映画の「それでもボクはやっていない」を見てますます不信間に磨きがかかり、この村木氏の事件が取りざたされたのを見た際には初めからこの事件はおかしいと感じるようになっていました。その後足利事件で冤罪にあった菅谷さんの例もあり、誰がどう見ても真っ黒な小沢氏があんなふざけた供述をしているにもかかわらず起訴されないことに恐らく私以外にもたくさんの方が検察に対して恒常的に信頼しなくなってきているかと思います。

 そういう目で見ると、今回の前田容疑者の事件は偶発的に起こったという感覚よりやっぱりそういう検察って組織だったんだなと私は思わざるを得ません。相撲界もそうでしたが、この事件をきっかけにどれだけ血を流すかで検察組織は信頼回復以前にその存在理由が問われる事となるでしょう。

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