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2010年11月25日木曜日

オリジナルなき中国経済

 前回の記事では日中の若者の現状を私なりに比較しました。概略を簡単に説明すると日中共に若者は苦しい立場に追いやられているが、日本の若者は中国の若者と比べれば将来性はともかく現状では金銭的にも社会的にも恵まれているにもかかわらず非常に後ろ向きなところがあるという主張をしました。
 そんな次の回の今日は、今回私が中国で滞在した際に感じた中国経済の違和感こと今後の中国の不安定要素と、それを逆の位置から見た日本の優位について一考を紹介します。

 以前に書いた「中国の自動改札と券売機」の記事にて私は中国での自動改札機と券売機を紹介しましたが、どちらも日本の駅に置かれているものと比べると性能的には低いものでした。元々両方とも日本企業の京都三大ブラック企業で有名なオムロンが開発した物なので原産国である日本の機械の方が優位を持ってて当たり前でしょうが、ふと考えるとこうして現在中国国内で普及が進んでいるものは、作っている現場は中国でも元々はすべて外国製なのではという考えがもたげました。自動車然り、携帯電話然り、マクドナルド然り、新幹線という高速鉄道は名前もそのままなのに「自分達で頑張って作りました」と言ってますが実際には日本の技術の流用だそうです。

 中国は今年、GDPで日本を追い抜きアメリカに次いで世界二位になることがほぼ確実視されていますが、世界二位の経済大国にも関わらず中国が独自に世界に発信した文化、サービス、規格となるとほぼ皆無なのが現状です。この傾向については私が記憶している限り五年前から中国国内の学者は今の中国の経済成長と日本の高度経済成長期を比較し、「当時の日本にはすでにトヨタやソニーといった世界に通用するブランドがあったにもかかわらず、中国には未だにそのようなブランドが存在しない」と問題視していましたが、それから五年経った今においてもこの点には一向に改善が見られません。
 企業ブランドで言えば一昨年のリーマンショック以降は吉利自動車がボルボを買収するなど、中国企業は主に海外の自動車系ブランドの買収は手広く行いましたが少なくとも現時点においてはまだそれら買収したブランドが有効に機能しているとは思えません。IBMのパソコン部門を買収したレノボは知名度アップに見事成功したとは思うけど。

 元々中国の企業はかねてから品質トラブルを抱える事が多いので、私みたいに中国と深く関わっている人間でなければあまり企業名までは覚えてもらえないのが常です。そうした企業ブランドの低さに加え、私がもう一つ問題視しているのは中国独自の技術や規格こと、「チャイナスタンダード」の欠如です。

 いきなりチャイナスタンダードといっても、恐らく大半の人は見慣れない言葉に戸惑うかと思います。この言葉の意味は文字通りに「中国規格」で、細かい所までとなると話は別ですが、今現在で中国で流通している商品やサービスにおいて中国独自の規格があるかといえばほぼ皆無なのが実情です。
 考えてもみてください。今現在で中国発の独自な文化やサービス、技術を挙げろと言われてすぐに挙げられる日本人はほとんどいないと思います。実際に他の人より中国に関わる事の多い私ですらこの質問は難問で、強いてあげるならば有人宇宙開発だけは結構頑張っていると思いますがそれ以外となると結局は他国の下請け製造のみで、むしろこの点では半導体製造や韓流ドラマなどを持つ韓国の方が上手です。

 結局の所、中国は以前から問題視されながらも世界に通用されるような独自規格を全く作れず、他国の完成した製品、もしくはサービスを受け入れているだけで、世界の工場といわれながらも製造している製品は他国のコピー止まりなのが現状です。
 断言してもいいですが、今後十年の間はチャイナスタンダードがグローバルスタンダードになることはありえないでしょう。中国は人口も多くて市場も大きいだけに、携帯電話の電波方式など自国でその商品なりサービスの形態を普及させる事で他国の企業を従わせやすいように思えるのですが、不思議な事に今もってそのようなグローバルスタンダードと呼べるような規格を作る事が出来ずにおり、その原因はほかならぬ中国人自身にあると思います。

 それにひきかえ日本はというと、よく携帯電話機の規格などでガラパゴス化しているなどと言われていますが、陰に隠れてちゃっかりと国際規格をいろいろ作っているとこのところ感じます。その一番の代表例はソニー連合のブルーレイディスクで、最初はあーだこーだいいながらも今じゃすっかり世界各国の映像記録媒体として定着していますし、それに合わせて再生機の規格も物にしてます。そのほか鉄道においては言わずもがなの新幹線、特に今度はありえない長距離をリニアモーターカーで結ぶというのですからその技術の高さは素人ながら恐れ深く感じるほどです。

 以上のような考察から私は、中国はまだしばらくは内需喚起で経済成長を確実に続けるものの世界第二位の経済大国と呼ぶにはあまりにも発信力、技術力が低いため、ある日突然に成長を止めることになると予想します。しかもそのブレーキの反動は恐らく日本のバブル崩壊時以上で、かつてヨーロッパ、日本が歩んだ通りかそれ以上の冬が来ると思います。

 かつて日本はアメリカなどから「人まねザル」などと言われた時代がありましたが、その時代にあってもカシオの計算機やマツダのロータリーエンジン、テレビアニメーションなどといった技術や文化を独自に生み出していました。しかし中国には、私の不勉強によるものかもしれませんが未だにそのような技術や文化はなく、むしろ独自性の強かった香港映画がハリウッド映画に成り下がった始末です。
 よく中国関係の仕事をしている人から聞く話に、日本はたくさん独自の技術や文化を持っているにもかかわらずそれを全く活用しようとせずに自国の経済を卑下する、という話がありますが、中国からの視点で見ると私も同じように感じます。日本の将来がダメだと悲観する事は簡単ですが、時と場合によってはまだ余裕がある人間の自己卑下にしか見えない時もあります。

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