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2010年11月24日水曜日

中国から見た日本の若者の状況

 今現在、今後の日本の景気について聞けばサラリーマンはもとより評論家らも異口同音に不況で先行きは暗いという見通しを話します。私自身もつい先日までそのように考えていたのですが、先日に中国にしばらく滞在して新ためて日本を外から見るのと、中国を中から見て以前とはやや違った考え方を持つようにこのところなってきています。結論を先に述べると私は日本人が将来を悲嘆しているのは甘えもいいところで、まだ随分余裕を持て余しているようにしか現在は考えていません。

 上海に滞在中、街中を歩いているとそれまであまり気にしていませんでしたがふとあるレストランの入り口に掲げられていた看板に目を留めてみたところ、ちょっと気になる数字が書いてありました。

「ホールスタッフ募集 月給2,000元」

 もちろんオリジナルは中国語で、「招聘洗碗工 RMB2,000」と書かれていましたが、改めてこの数字を見てみると日中での為替格差と生活の差をまざまざと見せ付けられました。この2000元という数字、現在の日本円は円高の影響もあって1元=12円ですがそれで計算すると、その上海にあるレストランではホールスタッフの給与は24,000円という事が分かります。

 日本円で月給24,000円だととてもじゃないですが暮らしていくには厳しい額ですが、中国ならば物価も安くてそれ程でもないのではと皆さん思われるでしょう。確かに中国の物価は日本と比べて非常に安く、コーラなどは1缶2元(24円)、食事も10元(120円)も払えばチャーハンなりラーメンなりそこそこ食べることが出来ます。ただこうした費用が安いからといって他のも何でもかんでも安いわけではなく、これは中国人の友人にも確認しましたが上海市内で部屋を借りる場合はどんなに狭くとも2000元以上は必ず取られるそうで、その他の細かい生活費用も上海では日本並みに取られる事も少なくありません。
 となると家賃が2000元では先ほどのホールスタッフは月収を丸ごと大家に取られる事になり普通では生活できません。ではそんなホールスタッフの募集に応じる、主に田舎から出稼ぎにやってきた若者らはどうやって生活するのかと言うと、大抵は一つの狭い部屋を数人で一緒に借りて共同生活をして働き続けるのです。

 念のため言っておきますが、上海は中国で最も物価が高い地域である一方で最も給料の高い地域です。確かに地方によって細かい事情は変わってくると思いますが大抵の都市部では多かれ少なかれこのような状況で、元からその土地に住んで定住している人間ならともかく、出稼ぎに来た若者らは数人で共同生活をしながらわずかに残った給料を貯めて地方に送る事でぎりぎりの生活を続けています。
 こうした中国の苦しい状況は田舎出身の若者に限らず、大卒の若者ですらも当てはまるのではないかと現在私は睨んでいます。細かくまだ確認が済んでいなく企業ごとにも違うでしょうが、私の予想だと中国のホワイトカラー職の大卒初任給は約5,000元前後で、しかも最近は日本同様に大卒の就職状況が悪いために卒業したにもかかわらず職にあぶれる若者が後を絶ちません。

 翻って日本の状況ですが、就職氷河期を越えるほどの低い率で戦後最低を更新するほど昨年度の大卒内定率は悪かった物の、地方ならばともかく東京や大阪といった都市部であれば20代ならばまだアルバイトで働く事は可能だと思います。仮にアルバイトの身分で正社員同様にフルタイムで働けば月収20万円を稼ぐ事も難しくなく、この収入であれば部屋を借りて一人で生活することも不可能ではないでしょう。
 もちろん日本の雇用慣行上、新卒で就職できなければその後もずっと就職の機会がない、アルバイトでは雇用経験として認められない上にスキルが身につかない、三十代になればアルバイトもし辛くなるため、この低い内定率の状況を私も問題視しており早く対策を打つべきだと考えてはいますが、それでも中国の若者(大卒高卒を含めて)の状況と比べるならばまだまだ日本の若者は恵まれた環境にあると思います。厳しいことを言えば、たとえ就職にあぶれたとしても日本の若者ならばアルバイトをしながらお金を貯め、ある程度溜まった所で資格の勉強をしてスキルアップに繋げてその状況から抜け出す可能性もありますが、中国の若者にはそんな可能性すらありません。

 よく中国は上り調子、景気がいいとあちこちで言われていますが、そこで生活する人間達のミクロな生活を比較すれば今の日本人はまだ遥かに恵まれており、これで「日本の将来は暗い」、「一度チャンスを逃したらもう立ち直れない」などと言うのはどこか浮世離れした感が私にあります。

 もちろん言うは安しで行なうは難しの如く、実際に厳しい状況に置かれた事のない私がこんな事を言うべきではないのかもしれませんが、それでも敢えてこのように文章にして主張したのは自分を含む今の日本の若者に必要以上に世間の暗い雰囲気を真に受けるなと言いたいからです。
 たとえ正社員になれなくともまだ生きていける、生活できる、おまけに今はデフレで安い金額でそこそこ娯楽も楽しめる。将来が厳しいと予想されるとしても必要以上に暗くなる必要はありません。これは多分、近年中国に行ったことのある人なら皆わかると思いますが、日本の若者と比べて中国の若者は実に明るい表情を皆でしています(北方の人はあまり笑わないけど)。将来性はともかく現行の生活状況は中国の若者の方が明らかに苦しいにもかかわらず、彼らはまだ若者らしいと言ってはなんですが明るい表情で楽しそうに暮らしています。

 将来を懸念する事、対策を作る事は非常に大事ですが、そのために今現在を無駄に台無しにしては意味がありません。日々のニュースや年配の世代が暗い事ばかり言っているからといって真に受けず、まだ日本は頑張れば先進国の生活を送れるのだと考えてもっと前向きになってくれればと、一人の若者として切に願います。

 次回はもうちょっとマクロな日中経済比較を行います。そこそこ自信のある内容を用意してます。

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