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2011年6月4日土曜日

文芸春秋の電子版について

 ひとつ前の記事に続いてまた電子書籍についてです。
 すでに私が八年間も購読している文芸春秋が今年二月になり、電子書籍を出すようになりました。このニュースは昨年から中国で働き始めた私にとっても朗報で、海外でも読めるというのであればありがたいことこの上ないとかねてからいろいろと情報を集めていました。

 ただ先月号まではちょうど日本からあれこれ物を贈ってもらう際に通常書籍版を混ぜてもらってたので、買う必要に迫られることはありませんでした。ただ現在本屋に置かれている6月号に関しては未だ通常書籍で手に入れておらず、なおかつこの後も手に入る予定がなかったことから一つ試してみようとすでに調査済みの電子書籍販売サイトに今日行って見ました。
 文芸春秋の電子版は現在三つのサイトで販売されており、そのうち一つはAppstoreなのでアップルの周辺機器を持っていない私では利用することが出来ず、もうひとつのzinioというサイトは当該地域の各国語で表示され、なおかつ支払い方法が人民元になることからこちらも外し、最終的にマガストアというサイトを経由して購入することにしました。

 こちら電子版の文芸春秋は海外居住者にしか販売されておらず、値段も日本での通常書籍版860円に対して1000円です。前回の記事では散々値段について文句を言いましたがこちらは月刊誌なんだし、海外居住者限定ということでこの値段についてはそれほど不満はありません。第一、前回記事で不満だったのは勝手に値上げされたことだし。
 ただ購入する直前、いくつか気になることがありました。折角なので下記に列挙します。

1、ダウンロードは問題なく行えるか
2、データの管理はどうなのか
3、パソコン画面上だと読み辛くはないか


 当たり前と言えば当たり前の心配で、もしよければ誰か感想を書いてこの辺がわかればいいなとあらかじめ探しはしたのですが、結局どこもなかったので結局自分が人身御供とばかりにこの際1000円払って確かめてみました。

 まず一番目のダウンロードについてですが、中国のインターネット環境は国内ならまだしも海外となると速度が不安定でなおかつアクセス禁止となっているサイトが多々あります。そういうのでダウンロードは問題なく行えるか、また時間がかかり過ぎやしないかと心配でしたが、これはノープロブレムでした。ダウンロードにかかる時間はせいぜい2、3分程度で、恐らく電子書籍を見るためのビューアーを開くのに2、3分程度かかるだけでした。ただこれは逆に言うと1ページ開くごとにそのページデータをいちいちダウンロードしているということで、これは後でも述べますがいちいちページをめくるたびにローディングが発生します。

 次に二番目ですが、eBookjapanだと電子書籍データを丸ごとパソコンに入れてみようと思えばいつでもそのパソコンでタイムラグなしに読めるのですが、こちらのマガストアはいちいちデータをブラウザに送り込んで読む形式らしく、データは常にサーバー上にあるようです。この形式だとダウンロードに大幅に時間がかかるのではと心配してましたが、上記のように1ページごとなので問題ありませんでした。

 三番目の心配ですが、これは見事的中でした。というより、マガストア自体の管理に疑問を覚えました。
 基本的に電子書籍を見る際はそれぞれのサイトが用意したビューアーソフトが用意されており、eBookjapanのようにあらかじめ利用者のパソコンにインストールさせておくものもあれば、Flash playerを使ってブラウザ上で起動させるものもあります。私はこれまでにいくつかの電子書籍サイトでいろいろ試してみましたが比率的にはFlash playerを利用するものが多いように思えますが、見たい時にタイムラグなし、しかもネットに接続する必要もないeBookjapanの「edi.BookReader」が今のところ不満もなく一番満足するソフトです。

 それで今回のマガストアのビューアーなのですが、正直クラフトマンシップが何も感じられず、とりあえず見れるソフトを用意しただけというひどいレベルのものでした。まず一番不満なのはページの拡大率で、ただでさえ文芸春秋は縦書き三段で文字がびっしりしている雑誌の上にノートPCの画面で見るのだから相当拡大しないと文字が読み取れないのですが、かなり腹立つことにページを切り替えるたびに拡大率が初期設定(120%)に戻されてしまいます。私の所感だと最低でも200%位じゃないと読めないのに、ページをめくるたびにマウスホイール動かして拡大率を変えるのはかなり面倒です。さらにこの拡大率、直接入力すればどの拡大率でも反映されますがマウスホイールだと100%→120%→140%……と20%ずつ増えていくのに何故だか200%の次はいきなり300%に飛びます。個人的には240%くらいがベターだと思うのに。

 あまりプログラムの知識がないにもかかわらずこういうこと書くのは良くないかもしれませんが、拡大率の維持くらいちょっと弄くればすぐ出来るようなことなんじゃないかと思います。しかもマガストアはどうもこの拡大率の維持がされないという問題を認識しているにもかかわらず放っておいてる節があり、サイトのFAQを見てみるとiphoneやipadについては対策を書いているにもかかわらずPCについてはノーコメントです。これ間違いなくわかってて放置してるだろ。

 はっきり言って、拡大率が維持できない電子書籍のビューアーに出会ったのはのはこれが初めてです。さらに言えばほかのどのビューアも画面左側で左クリックすれば次のページ、右側なら前のページに移動して当たり前なのに、このマガストアのビューアはそんな機能すらなく下部にあるボタンをいちいち押さないといけません。挙句の果てにはコンフィグメニューすらなく、間違いなく最低レベルのビューアーと言っていいでしょう。
 さらには1ページごとにデータをダウンロードするので、起動時には時間がかからないもののページを切り替えるたびに少々ローディングが必要になります。そんな時間がとられるわけじゃないですがさすがに毎ページでこれが続くのかと考えるとちょっとうんざりしてきて、結局数ページ見ただけで今のところ止めてます。

 こんな具合でよくこんな体制でサービスを開始できたものだと結構呆れていたのですが、よくよくヘルプページを見てみると運営主体が電通だと書いてあって「だからか」と得心しました。あのセカンドライフをごり押ししただけあって如何にも電子書籍サイトを形だけで作っただけのようで、どうも真面目に運営する態度が見られません。文芸春秋社も、もう少し相手を選べよ。

 と、愚痴が多くなりましたが今回の件は全く収穫がなかったわけじゃなく、ちょっと気になるトピックがいくつか出てきました。何が気になったかというと電子書籍版の文芸春秋は恐らく通常書籍版では広告が載せられていたと思われる箇所が空白(文芸春秋社の会社ロゴだけついてる)になっており、ふと「電子書籍の広告はどうなるのだろうか」という疑問がもたげてきました。この辺については次回の記事にて別トピックとともに取り上げます。
 あと文芸春秋では毎号ペットと作家が一緒に写真撮って載るコラムがあって今月は佐藤優氏でしたが、「猫は人と違って裏切らない」と確信犯的に笑わせてきてました。それにしてもこの人、猫飼いすぎ。

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