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2012年1月7日土曜日

艾未未氏への報道の違い



 上の写真に写っている建物は皆さんお覚えでしょうか。これは北京国家体育場と呼ばれる体育館で、2008年の北京五輪の際に一つのシンボルとして建てられたもので、通称「鳥の巣」と呼ばれております。自分の目から見てもこの建物は非常に前衛的かつ目を引く外観で、こう言うとひどいですが中国でこんないいセンスした人なんていないだろうし、これを設計したのはきっと海外の有名デザイナーかなんかだろうと本気で思っていました。

艾未未(Wikipedia)

 ところがどっこい「鳥の巣」を設計したのは紛れもない中国人で、上記リンク先の艾未未(アイ・ウェイウェイ)氏でした。ちょっと中国をなめすぎだと、この件については至極反省しております。

 ここでちょっと紹介に入りますがこの艾未未氏は前衛芸術家としてかねてから中国はおろか世界中で活躍しており、そうした実績からこの「鳥の巣」の設計デザインに加わったとされます。ただそうした国家的プロジェクトに絡む一方で人権活動家としても有名で、中国政府に対しても本当に容赦ない批判を繰り返しており、北京オリンピックについても途中からは開催に反対して開会式にはとうとう出席しませんでした。
 彼の名がある意味日本で大きく報じられるようになったきっかけは2008年の四川大地震で、この際に被害状況を隠そうとする政府をブログ上で批判して正確な実態調査を要求しております。ただ中国でこうした行動は出る杭が打たれるというかこれ以後は当局から物凄いマークがかかるようになり、去年四月には香港に行こうと空港に来たら突然逮捕連行されてその後2ヶ月間も音信不通となりました。最終的にはイギリスをはじめとした海外から散々批判を食らった当局が、「疑いは晴れた( ゚Д゚)イッテヨスィ」と言って釈放しましたが、まさか真に受ける人はいないでしょう。

ヌード写真で支援拡大、艾氏のわいせつ容疑に抗議(共同通信)

 そんな感じでいろいろと嫌がらせを受けている艾未未氏ですが、ちょっといいリンク先が見つからなかったので変な見出しの記事となりましたが、去年十月にも当局から突然奥さんの会社が数年前に脱税していたという指摘を受け、確か数週間以内に莫大な追徴課税を支払うように、もし払えなければ収監すると言われました。
 もうこの時点でいろいろとあれなのですがやられた方の艾未未氏もやはり只者ではなく、「ネットのみんな、オラに現金を分けてくれヽ(゚д゚)ノ (後で必ず返すから)」と、なんとネット上で幅広く募金を呼びかけたのです。その辺について上記のリンク先の記事も書いているのですが、なんとこの呼びかけに約3万人が応じ、総額で1億円以上もの募金が集まったそうで余計に当局を警戒させる結果となったわけです。

 自分はこの辺の過程を香港にいた頃に新聞でリアルタイムで読んでいたのですが、敢えて当時は記事にせず、上海に戻ってから書こうと考えていました。何故かというと勘のいい人ならわかるでしょうが、この事件を中国現地では報じていたのかが気になったからです。多分どっかが報じてはいたと思いますが、上海の同僚に聞いたら「そんなことあったなんて知らなかった」と述べており、やはり報道規制があったような気がします。
 逆に香港はというとこのニュースは比較的扱いが大きく、やはり本土の人権関係について熱を持って報道しているような気概が感じられます。また取材についてもなんていうかイギリスのパパラッチ顔負けなところも多く、鄧小平の死を最初に報じた(病院のドアの隙間からベッドを激写)悪名高い蘋果日報(アップルデイリー)という日刊紙は、「読者が求めているのは裸体と死体だ!」をスローガンに毎日呆れるような取材記事を載せていました。ただ交通事故死者の死体をモザイクなしで載せるのは勘弁してほしいけど。

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