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2012年10月31日水曜日

日本人の改善思想

 例の尼崎の事件で各メディアが犯人の写真を間違えて出していた件ですが、朝日新聞だけが、「うちも同じ写真手に入れていたけど、確認が取れなかったから使わなかったぞ(゚∀゚)」とどや顔で報じているのが微妙に笑えます。いやきちんと裏取り作業をしているんだから確かに誉めらるのですが。

 そんなことはほっといて今日の本題に移りますが、既にブログで記事にしていますが先週末は約一年ぶりに香港へと旅行してきました。そんな一年ぶりの香港を見てきた感想ですが、一言でいうと「何も変わっていない」というのが正直な所です。いや実際にはあれこれ変わったところもあるのかもしれませんが、少なくとも自分が見てきた界隈は街の通りや建物、駅舎など、あと香港人のスタイルやファッションなどは一年前と全く変わりがありませんでした。
 一体なんでこういう風に思うのかというと過分に、現在上海市を拠点に生活しているというのが大きいのではないかと考えております。今年はペースが落ちてきているとはいえ世界一の成長市場の一級都市であるだけに、上海市は街のあちこちであれこれ建設工事なり建て替えなり、果てには取り壊しなどがしょっちゅうあります。ちょうど自分の住んでいるサービスアパートメントの前にある商業施設も建て替えが始まっているのですが、それこそ数ヶ月時間を空けるだけでも見た目というか雰囲気が変わっていることが多いです。更に言えば街並みだけでなく、上海人も豊かになってきていることから服装とか仕草がかなりめまぐるしく変わっているような気がします。

 この香港と上海の違いはひとえに、成熟市場と成長市場の違いと言ってもいいかと思います。ある程度経済発展を終えて落ち着いている香港に対しまだ発展途上で変わりつつある上海という具合に、両都市の現況が私の印象の違いを生んでいるのでしょう。では香港と同じく、一応既に経済発展をある程度達成している日本はどんなもんでしょうか。なんかさっきの話をひっくり返すようになりますが、私の印象としては日本の都市は香港などよりも上海に近いというか、意外と変化するところが多いような気がします。
 あくまで私の印象ですが、たまに実家とかに帰ってみると今までなかったところに信号機が出来てたり、通い慣れた店舗が回想されてたり、見知らぬ道が出来ていたりと、上海市ほどダイナミックではないにしろ細かいところで変化している箇所が多いと毎回感じます。またこれは以前にあった人が言っていたのですが、東京の首都高などで以前は渋滞が多発していた箇所を久々に通ったところ、一部ルートが追加されたりしていて全く渋滞が起こっていなかったそうです。その人曰く、日本人というのは地味に改善意識が高く、一度作ったものを細々と改良を加えていく傾向があるそうで、聞いた当時に私もなるほどと感じました。

 ちょうど今回に香港へ行ってみてこの時の改善という言葉を思い出したからこんな記事を書いているのですが、トヨタの改善方式じゃないですが確かに日本人は後から機能なり改良を加えていくような行為を外国人と比べて率先してやるようなところがある気がします。これもやけに印象に残っている話ですが、映画の「ラスト・サムライ」でも「日本人は誰に言われるまでもなく自分の技量を高めて前よりいいものを作ろうとする」というトム・クルーズのセリフがありますが、なんとなく通じるところがある気がします。
 一方、改良を加えていくというのには向いているものの逆に一から土台の様な何かを作るという行為は苦手だとも言えると思います。よくネットのジョークに「アメリカ人が発明したものを日本人が小型化して中国人がパクる、そして韓国人が起源を主張する」というのが以前に流行りましたが、ベースとなるものは今現在を見回してもやはりアメリカが全部作っている気がします。敢えて踏み込んでいうと、日本の漫画を作った手塚治虫は本人自身もディズニーの影響を強く受けたことを話していますし。

 更に歴史を紐解くと第二次世界大戦中に日本はよく、一回の戦闘にまとめて兵隊を送るのではなく実際に戦った後で「もう少し必要」などといって後からどんどん送り込む、逐次投入をよくやらかしています。兵力の逐次投入は軍事上で下策とされており、必要な兵力を一度に送る方が輸送コストや戦闘期間などの関係からずっと優れているのですが、こうしたことからもどうも日本は一気呵成に物事を進めるのも伝統的に苦手なんじゃないかと伺わせられます。
 そんな具合でどうもオチがパッとしませんが、日本人はいわば改善オタクで微量な変化を好む気質じゃないかというのが私の意見です。こうした点をもっと意識して、日本人に向いた組織運営法とか開発方針を作っていくのも一考じゃないかと思うわけです。

2012年10月30日火曜日

石原新党の設立について

 先週末は香港に言っておりましたが、地下鉄(MTR)の車内で流れる電光掲示板ニュースで石原都知事が職を辞任し、新党を作るというニュースを確認しました。発表当時はネットに触れなかったので細かくニュースを追うことが出来ませんでしたが、まぁなんていうか子供のために大変だなぁという気がします。

石原新党参加を表明 平沼氏(産経新聞)

 今日になってたちあがれ日本の平沼氏も石原新党に参加すると発表がありましたが、路線としては同じ保守ですしおかしなことではないと思います。この後は橋下市長が率いる日本維新の会とは提携するからが気になりますが、恐らく橋下市長は手を組まず、あと残ったみんなの党は宙ぶらりんがこのまま続くでしょう。

 そろそろ本題に入りますが石原氏が何故この段階で新党を作ったのか、私見を述べさせてもらうと息子の石原伸晃氏を総理大臣にさせてあげたいからだと私は思います。一応本人は国のためだとか尖閣のためだとか言っていますが政治家というのは大言壮語を構える人ほど私利私欲で動く人が多く、特に石原氏に至っては結構平気で嘘をつくところがあるので素直に信用することが出来ません。
 では何が理由なのかですが、考える決め手となるのはやはり今のこの時期、つまり自民党総裁選が終わって安倍新総裁が誕生したというのが何より大事かと思います。安倍氏が総裁に返り咲いたことによって石原伸晃氏が総裁になるチャンスはあと数年ありません。年齢的にも総理になるには厳しくなってきていることもあり、また民主党が次回選挙で敗北する可能性があることもあって敢えてこのタイミングで新党を作り、息子の総理就任を援護する腹づもりじゃないかと私は見ています。

 というのも意外に石原氏は子煩悩で、小泉政権時に伸晃氏が初めて国土交通大臣に就任することが決まった時も、「純ちゃんは人事の天才だねぇ(´∀`*)」と満面の笑みでインタビューに答えており、更に言えば三男の宏高氏も一回衆議院議員に当選した後で今浪人中の身ということも見逃せません。次回の総選挙は民主、自民共にあまり支持を得ておらずこのままいけば消極的に自民党に投票する人が多くなりそうな気配ですが、それだけに第三極こと新党が乱立すれば票が分散する可能性が高く、石原新党も割と援護しやすい立場になるんじゃないかと勝手に分析しています。

 もっとも私としては動機が何であれ、仕事さえしてくれるのなら気にならないので今回の石原氏の行動も勝手にすればと考えています。ただ伸晃氏を総理につけるというつもりなら話は変わり、あまりにも頼りにならないので何かスキャンダルでも踏まないかとちょっと願ってます。
 なお同じスキャンダルと言えばまた民主党の前原氏が秘書の自宅で事務所経費を計上するという大ポカをやらかしています。本人は必至であれこれ言い訳していますが、自分が前に見た報道だと家賃代が年によって異なっており、仮に事実だとすれば不正経理で間違いないでしょう。過去に同じ行為がばれて政治生命が絶たれた議員が何人もいるというのに、本当にこの人は致命的なまでに危機管理ができない人だなと呆れています。

2012年10月29日月曜日

香港旅日記~インド尽くしカレー地獄 後編

 昨日に続きインド、じゃなくて香港旅行の続きです。今日は怒涛の後篇です。

・二日目
 早朝、いるだけで嫌になってくるほど狭いホテルの部屋で起きるといきなり上海人の友人が衝撃的な告白をしてきました。
「あのさ、ズボンがずり下がるんだけど」
 友人曰く、昨日と同じベルトの穴にもかかわらずズボンがずり下がるとのことで、要するにたった一日でウエストが細くなったそうです。何故細くなったのかというと、「きっと君の歩く速度が速すぎるせいだ」という仮説を突きつけられました。
 これも知ってる人には早いですが、私は歩く速度が極端に速いです。文字通り走るように歩くのでこれまで一緒に出掛けた人間を「ちょっと待って」と言わせてきた数は数知れず、上海に渡ってからは一区画がでかいことからますます速くなってきており、この前日本に帰ってきた時なんか日本人が止まっているように見えたし。そんな具合で街中を歩いていても誰かに後ろから抜かれることなんてほぼないのですが、香港人も歩くのが極端に速く、今回の旅行中は何度も追い抜かれて地味にショックを受けておりました。そうした香港人に感化されたのか前日は友人と一緒にいながらやはりすごい速度で歩き続けて、口には出さなかったものの友人も一緒に歩いてて疲れたそうです。たった一日とはいえこのロードワークによって一気に痩せたといいますが、自分も極端にウエストが細いだけにうなずける話です。

 話は香港旅行に戻してこの日は早朝にラマ島(南Y島)という、香港島からやや離れた離島へと出かけました。この島へは以前にも何度か訪れていたものの、いい場所なので今回も訪れることにしました。取り立てて大きなイベントはなかったものの、昼食に訪れた海鮮レストラン内で猫が段ボールの上で寝ていたので以下のような写真を撮っておりました。


 なんか寝相がしっくりこないのか時々動いていましたが、実に客慣れした猫で何度も撫でまわしておりました。
 そんなラマ島から午後には香港島に戻り、セントラルやコーズウェーベイという繁華街を回っていろいろとブランドショップを見て回り、日が落ちた頃に一旦荷物を置きにホテルへ戻りました。

 ここでまたひと悶着があったのですが、本来なら取り替えてもらっているはずのバスタオルが室内にありませんでした。またホテル側へ電話で文句を言うと、「すぐに持っていく」と返答を受けましたが30分くらい待っても何も来ません。たまらずもう一度電話すると、「あと10分」というのでまた待ち、大体15分くらいしてようやく従業員がタオルを届けに来ました。インド人はこれだから信用できないと友人と言いあった後、次の目的地である香港最大の観光地、ビクトリアピークへ向かいました。


 ここも取り立てて大きなイベントもなく、夜景と言ってもそんなにビル群に感動しない性格もあってとっとと離れました。ただ帰りはタクシーを使ったのですが、山道を頭文字Dもびっくりなスーパーテクニックで駆け下りていくもんだから友人と一緒に車酔いしました。あのタクシー運転手、腕は確かなんだけどね。


 ビクトリアピークを降りた後はランカイファンという、飲み屋街へと向かいました。ちょうどこの日はハロウィンだったので欧米人が大騒ぎし、上の写真のように妙な飾り付けがつけられておりました。


 よく見ると腕とか足とか、妙なものがぶら下がっています。

 ここでは大音量で大騒ぎする店が多く、どこか席が空いてたらゆっくり酒でも飲もうかと話していましたがとても落ち着ける雰囲気じゃなかったのでそのままホテルへと帰り、また馬鹿みたいに狭いシャワーを浴びてこの日は就寝しました。

・三日目
 この日は自分の買い物のため、シャムスイポーという電気街へと朝早く出かけました。実は前からタブレットPCを買おうと考えており、香港なら関税もないしきっと安いだろうと乗り込んでみたのですが、中国本土と違ってi-Padとかギャラクシーなど有名メーカー製しか置いてなく、レノボのLe-Padすらおいてない残念な場所でした。なのでタブレットPCは本土で買い直すことに決めて、再びホテル最寄駅のチムシャアツイに戻ってセンターオブアベニューという、香港の映画スターの手形がある場所へと向かいました。


 九龍半島の海岸沿いなので、向かいの香港島のビルが一望できます。こうしてみると有名企業の看板がたくさんあります。


 写真に写っているSHARPの看板が、もうすぐなくなるのかなぁとか思いながら写しました。


 見づらいですがジェット・リーの手形です。


 こっちはジャッキー・チェン。


 最後になぜかサモハン・キンポーの手形。


 ブルース・リーの銅像。同じポーズで写真を撮る人が後を絶たない。


 無駄に顔面アップ。


 得体のしれない豚の銅像。誰か出典知らないかな。


 しかも妙に人気だし。

 こんな具合で堪能した後、昼食を取ってから荷物を預けているホテルフロントへ向かいました。これまで何度も煮え湯を飲まされている例のホテルですがここでもまたひと騒動があり、なんとホテルフロントの呼び鈴を鳴らしても誰も出てこず、預けていた荷物が受け取れませんでした。飛行機の時間もあるし、このまま30分くらい誰も出てこなければドアを蹴り破ろうかとか物騒なことを言っているとようやく従業員が出てきてドアを開けてくれましたが、もうインド人と関わるのはよそうなどと言いながら空港へと向かいました。

 空港での出国審査などは特に問題なく、香港のきれいな空気ともおさらばでまた上海の汚い空気が懐かしいと言いつつ飛行機に乗り込みましたが、最後にまたトラブルというかイベントが起こりました。ちょうど自分の席より二列前の席で離陸の際に子供が泣きだし、乗客全員で視線を一点集中。しかも笑えることに、ちょうどその子供と連れてきた母親の隣の席に友人が座っているもんだから、一歩間違えれば自分もあの席にいたんだなぁと思いつつ泣き声を聞いておりました。もっとも友人は途中でフライトアテンダントに言って席を変えてもらいましたが、なんでも変えてもらった席はトイレの真ん前で、乗客が来るたびに音が鳴って眠ることが出来なかったそうです。
 こんな具合で今回も楽しい旅行でした。少なくとももうインド人のホテルには泊まるべきではないというのが教訓です。

2012年10月28日日曜日

香港旅日記~インド尽くしカレー地獄 前編



 別に隠す必要もなかったのっですが、昨日までの三日間に香港へ旅行に行ってきました。以前からブログを見ている方なら話が早いですが、香港へは去年の十月から十二月までの三ヶ月間出張で滞在しており、実に一年ぶりの再訪となりました。なので今日、そして明日は今回の香港旅行について珍しく写真と共に紹介していきます。それにしても自分の写真だが、なんかどれも左にやや傾いているような。カメラの持ち方が悪いのか?

  前夜
 今回の香港旅行は友人の上海人との二人旅。ホテルからチケット予約まで全部上海人に任せたのですが、出発便が早朝8時フライトだったので、出発前夜に上海浦東空港と連結しているMOTEL168というホテルに泊まりました。



 費用はツインの部屋で200元程度、日本円だと2500円くらいなので非常にリーズナブルです。仮にここに泊まらなければ早朝にタクシーでも取らないとフライトには間に合わず、タクシー代だけで200元くらいかかる所だったので、施設も問題ないことから、今後も機会があれば使おうかと思っております。
 この日に自分は仕事が終わるのが遅くて友人と合流して最終的にホテルに着いた頃には11時を回っておりました。ただ「折角の二人きりの夜だから」などと妙なことを友人が言ってしきりにビールを飲ませようとするので、しょうがなくビール一缶だけ付き合うことにしました。飲んだのは雪花というブランドのビールでしたが、瓶と違って缶だとやけにまずかったです。そんなわけのわからないことしつつ、就寝は12時半でした。

  1日目
 朝5時半に起床、そしてすぐ出発。空港はホテルからエレベーターを降りて目の前なので何も焦る必要はありませんでしたし、イミグレーションも難なく通過することが出来ました。また中国では飛行機の出発が遅れることが非常に多いのですが、自分たちが載った便はほぼ定刻通りに出発して2時間半の飛行時間の後に無事香港空港へと辿り着きました。香港空港にたどり着いてからはあらかじめ上海で買っておいた、香港市内の地下鉄、エアポート線が三日間乗り放題のチケットを使用して早速市内に向かいました。まずは自分の会社の香港事務所を訪ねて簡単なあいさつを済ませてから予約していたホテルへと向かったのですが、こっからがある意味旅の本番でした。



 今回、我々が利用したのは香港一の繁華街、チムシャアツイにある重慶大厦(チョンキンマンション)という、インド人がいっぱいいるビルの中のホテルでした。その名も「New Tokyo Hostel」といって出発前に同僚からも「なんでトキオやねん」と突込みを受けたのですが、友人曰く交通の便が良くて安いから選んだそうです。早速訪れてみるとやっぱりチョンキンマンションはインド人だらけでやたらカレーの臭いのする場所でした。香港らしく狭い場所に電化製品を売る店やら通貨換金所やらがびっしり入っているわけですが、そんな店を潜り抜けつつちっさいエレベーターを上って件のホテルフロントへとつきました。
 出迎えたのもやっぱりインド人、というよりインド系香港人というべきか。友人がチェックインを済ますと何やら奥から別のインド人が現れ、「じゃ行くよ」と言って我々を外に連れ出していきました。というのもチョンキンマンションにはホテルフロントしかなく、実際に泊まる部屋は別のビルだったからです。予約を取った友人もこんな展開は予想しておらずこの時点でもういろいろとあれでしたが、本当に驚愕したのはこの直後でした。

 案内されたのは目抜き通りのネイザンストリートを挟んだ、歩いて数分のビルでした。もう見るからにビル自体が古く、エレベーターも30年くらい前の骨董品の様なものだったのでこの時点で嫌な気がしてたのですが、部屋の中を見て友人と共に目を丸くする羽目となりました。一体何故かというと、部屋が6畳くらいしかないのはまだ理解できるものの、ツインの部屋なのにベッドが一つしかなかったからです。ベッドが一つしかないのを見るや、やたら権利を主張する中国人だけあって友人は案内した従業員に食って掛かりましたが、その横で自分はシャワー室を見ながら愕然としていました。



 上の写真を見てもらえばわかりますがシャワーとトイレが同じ空間、というか並んでついてあり、こんなところでどうやってシャワーを浴びろというのか、仮に浴びたらトイレの便器がびしょ濡れになるのではといろいろな考えがよぎってちょっとふらつきました。その横で日本語のみならず英語も達者で便利な友人がかなり激しく言い合っており、ホテルフロントに戻って話をつけようと再びチョンキンマンションへリターン。戻る最中に友人は、「中国語のサイトできちんとシングルベッド二つの部屋を予約したはずだ」と言い、私も「部屋数が足りないから俺たちを無理やりあの部屋に押し込んだのかもしれない」などと話し合いつつ、「そもそもカップルじゃあるまいし、男二人の俺たちをあの部屋にあてがうことに奴らは疑問を感じなかったのか?」という、ややウホッな内容へと展開していきました。
 ホテルフロントに戻ると再び友人がオーナーに食って掛かり、予約の不備を追及。一方オーナーも「ダブルベッド一つの部屋で予約会社から依頼を受けた」と反論。すると友人は予約会社を出せと言って電話をつないでもらい、中国語のできる人間に予約を確認してもらったところやはりシングルベッド二つと相手は言ったそうですが、これが英語担当の人間になるとダブルベッド一つと回答が変わりました。

 結論としては予約会社の中で我々の予約内容を中国語から英語に翻訳した時に齟齬が生じたのではないかということで落ち着きましたが、だからと言ってこのままダブルベッドで二晩一緒に過ごす気など毛頭なく、シングル二つの部屋に取り替えろと要求するものの既に予約が満杯だとしてホテル側も応じません。そこで妥協案として友人は、「ならマットと毛布をもう1セット用意しろ」と言い、それならとホテル側も快く応じました。友人としては早い段階で落としどころをここへ持ってくるつもりだったらしく、前段階としてここまで抵抗したと言ってました。さすが中国人、日本人もこういうところは見習うべきだ。

 こうしてすったもんだの挙句に床にマットと毛布を敷いてどうにか寝床を確保することが出来ました。その後、例のシャワーをどうするかなんか暗い感じで話し合いましたが、悩んでもしょうがないし、余計な時間を長く食ったので飯食って観光に行こうと気分を切り替えることにしました。



 既に三時頃でしたが遅い昼食に、チョンキンマンション内にある上記写真のインド料理屋でカレーを食べました。これがのちの悲劇につながるとは知らず。昼食後はお互いに社会学を専攻していたこともあり、ニューテリトリー(新界)と言って香港でもちょっと妙な歴史をたどって行政区に入った土地へ訪れました。といっても実際にはただの住宅地で、これと言って珍しいものなど特にありませんでしたが。
 そして夜8時、再び自分の会社の香港事務所を訪れて先に約束していた通りに事務所の人間らと一緒に夕食へと出かけました。ただここで予想外だったのは、てっきり自分は夕食に来るのは出張時代の上司くらいかでほかに来るのは一人か二人と思っていたら、なんと事務所内のほとんどの人間が待っており、そのまま大人数で食べに行くこととなりました。しかも行く店も事務所近くにあるインド料理屋に既に決まっており、自分も断りきれず小声で友人に対し「本当にすまない……」と言いつつ二連続でカレーを食べる羽目となりました。しかも昼間、自分が食べたマトンカレーが出てくるし……。

 夕食後、「もう香港で絶対カレーは食べないぞ」と言いながらホテルへ戻り、例のシャワーへと挑戦しました。便器がびしょ濡れになることを想定してあらかじめトイレを済ませた後で友人からチャレンジしましたが、「意外と行ける!」ということで続いて自分も試したところ、比較的お湯の出が良く、疲れていたのもあってさっぱりしました。その後はすぐ布団に入って寝たのですが、先行で自分が床に敷いたマットで寝たのですが、ダブルベッドにいる友人は「寝心地悪いならこっち来てもいいよ」としきりに誘ってきました。もちろん行かなかったけど。

 残りはちびまる子ちゃんばりに、明日以降に書く後半へと続きます。

2012年10月23日火曜日

ブレスオブファイア4をクリアして

 今日もちょっと書く内容があまり浮かばないので、前にも書いたカプコンのRPG「ブレスオブファイア4」をクリアしたのでその辺をちょっと書こうかなと思います。
 まずこのゲーム、前にも書いたとおりに展開が非常に面倒くさいです。割と次の展開という目的がしっかりしていてサクサクすすむている図シリーズと比べると雲泥の差で、誰かに会いに行くと決めると会うために大体三つか四つはお使いをこなさなければならず、キャッチコピーにするなら「急がば回るRPG」といったところでしょうか。

 ただそんな面倒な展開も中盤までで、逆に終盤に入ると恐ろしい勢いで展開が早くなります。ストーリーの頭から探し求めていたヒロインの姉が見つかるや、その次にはもうラスボスとの対決が待っており、それまでグダグダ進んでいたのが嘘みたいなくらいな急展開を見せます。こんな仕様になった背景にはどうも、開発が間に合わず後半は予定していたイベントを大分切ったということが原因らしいですが、それにしたってあの序盤の面倒くささを考えるにつけアンバランスさが目立ちます。あと後半の面でやけに経験値が多く入るのも、こうしたことが影響しているのかな。

 改めて書きますがはっきり言って私のこのゲームへの評価は非常に低いです。ストーリーの展開の悪さに加えて所々で目立つユーザーフェースの悪さ、そして何と言っても戦闘の面倒くささです。このゲーム、後半に入るとやけに回避率が高く、例えるならドラクエのメタルスライム級に攻撃が当たらない敵がばかすか出てきて、物理攻撃じゃ埒が明かないから魔法攻撃しか使わなくなります。仮にこれが一部の敵ならともかく、ほとんどの敵がこんな感じなので本当に面倒くさいです。 
 さらに呆れたのは、ラスボスに物理攻撃がほとんど効かないことです。どれだけ攻撃力が高くてもほとんどダメージが通らず、逆に魔法だとよわっちいのもそこそこ通ってしまうのでひたすら魔法ばっか使ってると簡単に買ってしまいます。パーティの戦略もあったもんじゃない。よくこういうゲームをしていて思いますが、誰か止める奴はいなかったのでしょうか。

 ただほかのレビュアーも言っておりますが、全体のストーリー展開は非常に陰鬱で確かに目を見張るものがあります。特にこのゲームで有名なのは「呪砲」といって、人間を大砲の弾にして打ち込んだ場所を草木も生えず人が住めなくさせてしまう兵器の存在です。弾にされる人間はそのまんま「ニエ」と呼ばれるのですが、このニエは苦しみや絶望感があればあるほど威力があるという設定で、弾にされる前には拷問が加えられるという素晴らしい設定となっております。惜しむらくはゲーム中、実際にニエとなってぶっぱなされる人が一人だけという点ですが、もう二、三人くらい飛ばしておけば違ったんじゃないかなとちょっと思います。

 なおそのぶっ放される人ですが、偶然の一致でしょうが名前が「マミ」というキャラです。知ってる人には早いですが、昨年放送されて非常に話題になった「魔法少女まどかマギカ」というアニメにも「マミ」という名前のキャラクターが出てくるのですが、このキャラは話の途中で凄惨な最期を迎えて退場することとなります。詳しくは言及しませんがその退場シーンがシャレや冗談じゃなく本当に凄惨であることからこのアニメも話題性を持つようになったのですが、あまりにもインパクトが強いことからネット上では突然凄惨な最期を迎えることを「マミる」とするスラングが生まれ、現代用語辞典にも見事に入れられました。本当に偶然なんだろうけど、なんでマミって名前のキャラはこうも不幸な最期を迎えるんだろう。

 最後に連絡ですが私用により明日より数日間家を離れるので、この間ブログをお休みさせていただきます。再開は28日か29日頃を予定しております。


2012年10月22日月曜日

橋下市長への週刊朝日の報道について

 本当は先週あたりに書こうと考えていましたが、なんかやけに忙しいのとほかにも書かなきゃいけないネタ満載で今日までのびのびとなってました。タイトルを見てもらえばすぐにでも内容がわかってもらえますが、大阪市の橋下市長に対して週刊朝日がルーツをたどるとして家系に関する連載を始めようとしたところ当の本人から抗議、さらには取材拒否が行われ、週刊朝日は報道内容について謝罪することとなりました。今回のこの事件について私の所見を述べると、まずほかのメディアの記事が浅いなぁと個人的に思います。

 最初に橋下市長に関する報道について所感を述べますが、なんでこの人はこれほどまでにメディアに嫌われているのかがよく不思議に感じます。以前にも週刊文春が完全に差別的な内容で出自に関する報道を行い、その低俗さから私も同じ文芸春秋社が出している文芸春秋の購読をやめたくらいでしたが、いくら若い人間だからと言ってこれほどまでに叩く報道が出るのは何が原因なのかいろいろと考えてしまいます。同じ改革派首長でも、新党日本の田中康夫代表が長野知事になった頃もこれほどまではひどくなかった気がします。
 考えられる原因としては、メディアの既得権益を壊しかねない思想の持ち主、またはメディアにとって都合のいい政治家や財界の対抗馬となりかねない人間だと、メディアの側から思われているからだと思います。具体的にどの辺がと言われるとポイントは挙げ辛いのですが、割と政治景気者ってなんでもかんでも敵味方に分けて考える人が多いように思え、自分とちょっと思想が違うだけで敵視する記事を書く人が多いような印象を受けるのでこう思う限りです。

 話は戻って週刊朝日の件です。週刊文春の時もひどかったのに一体なんで週刊朝日もこんなバカみたいな連載を始めたんだと思っていたら、書いているのがあの佐野眞一氏だということがわかってようやく合点がいきました。佐野氏についてはかねがねこのブログでも取り上げておりますが、とにかく取材に関してはマムシの道三もびっくりなくらいにしつこく細かいことで有名です。一体なんでそんな取材姿勢なのかというと、あくまで佐野氏の著作を読む限りでは単純に物事の背景とか詳細を佐野氏自身が知りたいと思う欲求が強いからだと思います。なので橋下市長についてもその政治思想を読み解くとかそういうのより、弁護士からタレント、政治家という変わった経歴からその生まれる前まで全部たどってみたいと考えたんじゃないかと私は見ます。

 更に佐野氏に関して言うと、彼には一つの前科というか同じことを以前にもやっております。この点がほかのメディアが甘いなと思うのですが、佐野氏は以前に同じような感じで鳩山氏のルーツをたどると言って、鳩山家に関することを細かく調べ上げて「鳩山一族 その金脈と血脈」(文春新書)という本を出版しております。自分もこの本は読みましたし、出た直後に佐野氏の講演も聞きましたが、

「鳩山一郎の祖父の鳩山和夫は、一夫多妻制は古い時代の遺物で悪しき習慣だと常日頃言っていたが、そういう自分は常にたくさんの愛人を囲っていた。鳩山一郎も統帥権の干犯という言葉を初めて用いるなど、鳩山家というのは昔からそういう嫌な人間の一族だ」

 と話していたのをよく覚えていますし、まさにその通りだなぁと思っています。
 なので私の感覚だと、この鳩山家の時と同じようなことを橋下市長に対してやってみようと佐野氏は考えて連載を始めた、もしくは引き受けたんじゃないかと考えています。更に言えば佐野氏は結構タブーに敢えて踏み込むところがあり、「東電OL殺人事件」の本でも女性からしたらあまりいい気分がしないであろう表現を非常によく使っています。それが今回、橋下市長の逆鱗に触れたわけなのですが。

 最後にまとめると、これまで佐野氏が取材したどの相手よりも橋下市長が高い情報発信力を持っており、使い方にも長けていたというのが大まかな構図だと思います。まぁ内容自体ゲスな内容ですけど、佐野氏が書くんだったらちょっと自分も読みたかったなというのが本音です。佐藤優氏といい、最初に会社辞めた時にこの人の書生になろうかと思ったくらいだったから自分ものめりこんでるんだなぁ。

2012年10月20日土曜日

PC遠隔操作事件の誤認逮捕について

PC遠隔操作:神奈川県警、誤認逮捕認め男性に謝罪(毎日新聞)

 もはや説明は必要ないかと思いますがウイルスに感染したPCを経由して小学校などに脅迫状が送られた事件で、経由したPCの所有者が犯人だと誤認され全国各地で4人が逮捕される結果となりました。このうち二人は最後まで否認を続けていたことと、真犯人が犯行声明を出したことによって起訴される前に無実がわかりましたが、別の二人は意にそぐわぬ自白を強要された結果、冤罪の実害を被るととなりました。今回の事件に関わった捜査機関は警視庁、三重県警、神奈川県警、大阪府警の4つですが、どれもIPアドレスを割り出しただけでパソコンの所有者を犯人だと決めつけて捕まえたというのだから恐ろしいものです。ネット上でもよく言われておりますが取り調べでは、「IPアドレスという確たる証拠がある」と問い詰めたそうですがこれが証拠になるとは勘違いも甚だしく、よくそんな知識で捜査に関われるものだと呆れるしかありません。
 更にこの4つのうちに神奈川県警と大阪府警がきちんと入っているのもある意味納得というか、本当に反省がない連中だとこればっかりは強く批判せざるを得ません。警察不祥事とくれば神奈川県警と来るほどにここは問題の多い捜査機関ですが、大阪府警についても過剰な取り調べや証拠捏造がこの頃次々と明るみになっているだけに根本的になにか問題あるのではと感じます。

 ただこの事件、犯行声明文を全部読んだわけじゃないですが真犯人は恐らくこうなることを見越したうえで犯行を行ったのではないかと思います。もちろんそんな犯罪行為を是認するべきではなく警察には早く汚名返上とばかりにきちんと捕まえてもらいたいものですが、少なくとも真犯人が提起した警察の捜査の問題性についてはしっかり考える必要があるかと思います。
 何もこうした冤罪は今に始まるわけじゃなく、「国家の罠」の佐藤優氏に然り足利事件障害者郵便制度悪用事件など日本では枚挙に暇がありません。こう言ってはなんですが仮に今回の事件が十年前に起こっていたのであれば、警察や検察は犯行声明が出たとしても、「IPアドレスなどの証拠から、PC所有者が犯人であるという可能性はぬぐえない」などと言って無理矢理に起訴、または釈放しても謝罪なんて絶対にしなかったろうと思います。今回すぐ謝罪に至ったのも、ここ数年の冤罪事件発覚があったからだと個人的に思います。佐藤優氏の事件は無罪にはなってませんけど。

 あと本題とは少し離れますが、今回の事件で最も大きな影響を受けたと思われる19歳の明治大学の学生は逮捕後、保護観察処分となり大学も退学していたそうです。本当に不憫で非常に残念に感じるのですが、ちょっと前から思う内容として、どうして有名大学だけ事件があったらすぐに明かされるのか不満です。この事件に限らず有名大学の学生、またはその関係者が事件を起こした場合はまず頭に大学名がつけられますが、逆に無名の大学であればスルーされます。有名大学だと読者の注目が引けるからというのはわかりますが、それにしたってダブルスタンダードな気がしないでもなく、載せるなら絶対載せる、載せないなら絶対載せないという基準をメディアは持つべきだと思うのと、事件の影響がほかの関係ない同じ大学の学生に及ぶ可能性があるなら後者が筋じゃないかというのが今日の私の意見です。

2012年10月19日金曜日

中国の経済成長鈍化の背景

 先程友人の上海人と焼き鳥屋に行ってご飯食べてきましたが、飯食ってる最中に後ろからえらく大きな声で「ニャー」という音が聞こえて来たので店員に尋ねたところ、店主が猫を飼い始めたとのことでした。早速だが是非見せてくれと頼んだところいきなり店主が出てきて、まだ飼ったばかりで見かけが汚いので、来週以降に来てくれと言われました。新手のマーケティングだろうか。

 それはともかく話は本題に移りますが、昨日に中国は第3四半期のGDP成長率が7.4%のプラス、数年ぶりに8%を割った前期の7.6%をさらに下回る結果になったと発表しました。このところ中国の成長鈍化、停滞関連で非常に多くの質問を受けるので、猫の声も久々に聞けたわけだしちょっと今日は気合入れて持ってる情報を一気に吐きだそうかと思います。なお少し強気に出ると、ここで書く内容はなかなかよそでは見られないというか、推測も含まれるので紙面には載せられない情報も入るのでそこそこ希少性がある内容になると思います。

Q1、中国バブルは崩壊するのか
 今回、というよりも以前から少しでもGDP成長率が以前より落ちる度にすわ中国バブル崩壊かという意見が日系メディアを中心にかまびすしく聞かれますが、さすがにバブル崩壊に至ることはまずないでしょう。そもそも何を以ってバブル崩壊というのか恐らくこの手の主張をしている人たちもはっきりとした基準を持っていないでしょうが、日本の様な急激な株価、不動産価格の下落は起こらないと断言できます。根拠としては今の経済状況はある程度中国政府の予想範囲内でマーケットも確かに株価は落ちておりますが、今回のGDP成長率もある程度織り込み済みで極端な株安は起こっていません。さらに不動産価格は現時点で急激な高騰を防ぐために購入に際して様々な規制をかけておりますが、一時は落ち込みを見せたもののここ数ヶ月でまた上昇傾向に入ってきています。その気になれば規制を取っ払うことでいくらでも引き上げることだって不可能ではないでしょう。

Q2、中国経済は停滞し始めてきたのか
 これに関してははっきり「YES」と言わざるを得ません。確かに7.4%成長と書くと日本と比べて非常に高い成長率ですがこれまでの伸びが激しかった分、メーカーを中心に年率10%くらいで成長することを見越して設備投資とかしてきましたが、鉄鋼業を中心に明らかに供給過剰の業界が多数見受けられます。また市民や企業経営者の景況感も悪化しており、今後の改善を見込んでいる人も少ないです。

Q3、何故停滞してきたのか
 一番の原因はなんといっても欧州の債務危機による世界経済の冷え込みです。これは中国に限らず世界中どの国でも輸出産業において共通していますが、中国の最大貿易相手先はEUであるため、逆にEUとはほとんど取引のない日本と違って直撃を受けているような状況です。そのため中国では輸出産業を中心に景気の冷え込み、業績の悪化が広がっているのですが、中国政府もある程度この状況を見越して国内の消費市場を活発化させるために対策を打ってはいるものの、私の見立てだと輸出産業の落ち込みが予測より大きい上に輸出産業に従事している人の消費も鈍ってきたため狙い通りにいっていないのかと思います。
 このほかこれは他の日系メディアも言っていますが中国国内で急速に人件費が高騰しており、それこそ十年前と比べて最低賃金が二倍以上になっているような状況なので、以前より競争力が低下していることも眼前とした事実です。まぁこれは逆に見るなら国内市場が拡大しているともいえるので一概にデメリットだけではありませんが、落ち込んでいる輸出産業にとっては弱り目に祟り目になっています。

Q4、いつまで停滞するのか 
 中国の経済成長率は今年に入った段階で減速し始めてきましたが、自分の周辺では第2四半期、つまり7月までに底を打ってまた盛り返すという予想が正直に言って強かったです。その根拠というのも今年上半期は急速な成長を抑えてでも一般市民の生活安定化を目指す方針でしたが、夏頃から本格的にテコ入れを始めて現にこれまで凍結されてきた鉄道工事に加え地方空港の新規建設が認可されるなど、政府による無理矢理なGDP引き上げ政策が実行されてきたからです。なので第3四半期はまた8%台に戻ると当初は思っていたのですが、7~9月の間は新聞を見ていても盛り返す話はほとんどなく企業業績も悪化の一途をたどっていたので、8月の段階で底打ちはまだ先だと自分も考えを改めました。
 じゃあいつ良くなるのかですが、少なくとも今年いっぱいはこのまま低調な景気が続くかと思います。根拠としては未だどの業界も改善を示す動きが全くないのと、中国の輸出を巡る状況が悪化しているからです。来年前半も続くかな。

トピック1、欧米との貿易摩擦
 さすがに日本では大きく報じられていませんが、ここ数ヶ月の間にアメリカとEUが中国に対して物凄い貿易規制を打ち出してきました。代表格は太陽電池で、ダンピング疑いをかけて関税引き上げの準備を着々と進めているため現時点でも多くの企業が中国の太陽電池メーカーとの取引を敬遠し始めております。このほか一度は合意していた中国企業による米企業の買収も、「核心技術が流れるから」という理由でよくひっくり返されているのですが、この前見た例なんか笑っちゃいましたが中国企業が買収額に3.5億ドルを提示しているのに、最終的には別の米企業が1.5億米ドルで持っていきました。さすがアメリカ、やることが清々しいくらい露骨です。
 あともうひとつ面白い話ですが、こっちの建機メーカーの三一重工が昨日か一昨日にオバマ大統領を提訴してきました。これも三一重工の米法人による米企業の買収交渉が最後にひっくり返されたからですが、私としては日本企業もこれまで煮え湯飲まされてきたのもあるので三一重工をちょっと応援してます。
 このほか通信設備のZTE、華為といった中国企業も難癖つけられて欧米市場から締め出されてます。この動きは今後ますます激しくなるでしょうから、さっきから何度も言ってますが輸出産業はまだしばらく苦しい状況が続くのではないかと思います。

トピック2、伸びている輸出産業
 さっきから散々悪い悪い言っている中国の輸出産業ですが、これは日系メディアにはほとんど出ておらず知ってる人も少ないと思いますが、陰で世界最大の雑貨市場と呼ばれる浙江省義烏市で、クリスマス用品の輸出額がえらい勢いで伸びてます。もう中国語記事ですがリンクもつけちゃいますが、今年のこれまでの輸出額は前年比1.5倍にも達しており初めて見た時は見間違いかと自分も思ったくらいです。というのもクリスマス用品の輸出先はやはり欧米がメイン、さらに義烏市の商品はほとんどが不景気な欧州に行くので最も大きなダメージを受けると思っていたのですが現実はさに非ず、むしろ例年にないほどの需要を甘受しています。
 何故世界全体で不景気な中でクリスマス用品がバカ売れするのかですが、自分が読んだ現地報道だとクリスマスは年中行事のためあまり景気の影響を受けないのと、義烏で取引される雑貨は低価格品が多く、むしろ不景気であることからより価格の低い商品を買い求めるバイヤーが増加したと書かれてあり、私もこの説を支持します。変な話ですが不景気になると牛丼が売れるように低価格商品は売り上げが伸びます。ある意味では中国はそういった低価格品が強いこともあり、この際だから安い方がいいと思える商品なんかは今後も輸出量が増えていくかもしれません。

トピック3、日系企業の現状
 これもはっきり言って非常に悪いです。原因はこの前の尖閣問題に絡む反日デモにほかなりません。不買運動、とまではいかないですけど同じ価格なら車を中心に韓国製、ドイツ製を買う人は明らかに増えており、たまたまさっき読んできたSPAの記事で、「中国人が日本製品の高品質性を恋しくなるまでは我慢しなければならない」と書かれていましたが私もその通りだと思います。なお一番影響を受けているのはやはり自動車と家電ですが、逆に全く影響を受けていない日本製品、というか日系企業の製品もあります。これも同様にSPAに書いてありましたがそれは粉ミルクとヤクルトで、粉ミルクに関しては以前のメラミン騒動以降は中国人も国産製品を全く信用していないためですが、ヤクルトは中国市場における日系企業商品では今年最大のヒットと言っても過言ではありません。テレビCMも飽きないのかっていうくらいバンバン流れいますし、どのスーパーに行っても置いてあります。来年くらいにヤクルトの成功エピソードを書いた本が経済書で出るんじゃないか、っていうかほかに書かれる前に自分が書いてしまおうかとちょっと思案中です。

2012年10月17日水曜日

ソニータイマーの真実

ソニータイマー(Wikipedia)

 知ってる人には早いですが世の中ではしばしばソニータイマーと言って、ソニーの製品は保証期限を越えた直後に壊れるという都市伝説があります。何故壊れるのかというとソニーがあらかじめ壊れるように設計、もしくは自壊機能を搭載しており消費者に買い替え需要を促すためだといろいろ説がありますが、これらはさすがに都市伝説であって私も本気では信じていません。なおこのソニータイマーという言葉が急速に普及し始めたのはインターネットが流行して、「ソニー製品って壊れやすくね?」という言質が交わされるようになってきたのが一つの原因などと言われておりますが、私自身はいわゆるソニーショックと呼ばれる株価下落が起こった2003年に初めて聞きました。それにしてもソニーショックなんて、随分懐かしいこと。

 なんでこんなソニータイマーを今回取り上げようと思ったのかですが、もちろんソニーに恨みとかあるからではありません。なお私はソニーの製品となるとプレステ以外はあまり使わず、特段壊れやすいと思ったことはありません。プレステに関しては一回だけ読み込みの遅さに腹立って殴り壊したことがありましたが、これは自業自得だと自覚してます。
 実は先日、中国人の日本製品に対する印象を聞く機会があったのですが、中国人から見て日本製品というのはやはり高品質で信頼が置けるものの、あるタイミングというか期間を過ぎると一斉に壊れると思われていると言われました。「え、それってソニータイマーのソニー製品?」と私も聞いたのですが、別にソニーに限らず日本製品全般に共通する特徴だと考えているそうです。

 中国人曰く、ドイツ車やアメリカ車は購入から3年で壊れることもあれば10年以上もつこともあり、同じ車種でも故障するタイミングはバラバラだが、日本車は同じ車種なら8年なら8年、5年なら5年できっかり同じタイミングで故障するものだと考えているそうです。そのため壊れるまでの期間は安心して使えるけど、壊れると言われている時期になると途端に信頼が落ちると言います。
 というようなことを知り合いで、化学品扱っている中国人の友人に聞いてみたところ、「その通りだよ。データが証明している」と言ってきました。その友人によると材料素材には耐久性テストをあれこれ行うようですが、日本のメーカーはこの耐久性というか精度をきっかり合わせてくるようでほかの国のメーカーと比べてムラが少ないそうです。そのためそれこそソニータイマーの様な、保障期限内は何が何でも故障とか破損が起こらないように管理しており、そうした精度がある意味で高すぎるせいかほぼ同じタイミングで壊れる現象が起きるそうです。

 改めて言われてみると私自身もなんとなくわかる気がします。日本人の性格からして精度とか濃度の管理はやけに徹底しそうですし、いわゆる品質管理においては世界的にも明らかにトップクラスにも感じます。逆にそれ故に、融通が利かないというかムラがなさすぎるところがあり、変に同じタイミングで故障が起こるもんだから上記のような見方がされるのだと思います。言ってしまえばソニータイマーも、それだけソニーの品質管理能力が保証期限きっちりに合わせられるほど高いということなのかもしれません。
 ここで私が何を言いたいのかというと、少なくとも中国人にとってソニータイマーはソニーだけでなく、日本のメーカー全体に多かれ少なかれあるものだとみられていることです。こうした見られ方は日本製品のブランドイメージにプラスかマイナスかと言われたら明らかにマイナスでしょうが、じゃあ絶対壊れないようにするなんてのは無理ですし、かといって壊れるタイミングに意図的にムラが出るようにしてしまったら本末転倒dす。ただこうしたイメージを持たれていることを意識して何らかのブランド戦略を持っていくことは大事なのではないかと、個人的に感じた次第です。

2012年10月14日日曜日

復興予算を巡るNHKの報道

 このところ東日本大震災に対する復興費用の用途を巡り本来の目的とは関係ないものに使われたという報道が増えてきておりますが、これらの報道を見るたびに実はちょっと違和感を感じます。その違和感というのも、何故誰も先月にNHKが報じた番組の内容をもっと引用しないかという思いです。

 件の番組はたまたま自分が日本に帰国している最中に放送されたのですが、復興予算がどのように使われているのかをあくまで中立的な立場で鋭く調査しており、一緒に見ていた親父と共に、「さすがはNHKよ」と見ているこっちが舌を巻く内容でした。具体的な内容をいくつか紹介すると、まず一番衝撃的だったのは各自治体のがれきの処理費用の差です。
 震災後、宮城県や福島県を中心に海岸沿いの自治体では大量のがれきが生まれましたが、これらのがれき処理に際して政府は事実上、青天井の予算を組んだのですが、震災から一年半経過してがれき処理にかかった費用を自治体別に比較してみると、なんと処理したがれき量はほぼ同じにもかかわらず自治体によっては10倍、実数を出すとたしか300億円以上使った自治体もあればわずか30億円で済ませた自治体も存在しました。

 調べれば簡単に該当の自治体は出てきますが敢えて出さずにこのまま話を進めます。一体どうしてこれだけの費用の差が生まれたのかについてNHKは、がれき処理のやり方の違いが10倍の差を生んだとはっきり指摘しておりました。300億円もかかった自治体ではとにかく早くがれき処理を優先するために各地で集めた瓦礫を片っ端から集積場に集めて、集積場でがれきの種類を仕分する方法を採ったそうです。ただこの方法は結果的にはあまり効率が良くなく、次から次へとがれきが運ばれてくるため仕分が追い付かず、集積場ではハエなどの虫が大量に発生することとなりました。そのためこれらの虫を殺虫するために保管費用がかかり、現在も毎日殺虫剤を撒いているそうです。
 一方、わずか30億円に抑えた自治体では以前に起きた新潟県中越地震で同じようにがれき処理の経験があったことから、がれきを現地で分類した上で集積場に持ってくる方法を採用したそうです。担当者によるとこの方法が一番効率がいいと判断し、実際に先の自治体と比べて格段に保管費用が少なく、処理も早く進んでいるそうです。また同じように費用を格段に安く済ませた別の自治体では、業者にがれき処理を発注する前にまず自分たちで崩壊した家屋の破壊処理をやってみたそうです。実際に破壊処理してみて一軒当たりどの程度の費用がかかるのかを綿密に計算した上で、業者に対し費用の交渉を行ったそうです。

 いくら処理を急ぐと言っても、費用は安く抑えるに越したことはありません。別に300億円かかった自治体を批判するつもりはありませんが、今後もこういった大災害が起こる可能性を考えると費用を安く抑えた自治体の取り組みを大きく取り上げ、次回の反省に生かすべきだと思います。そういう意味でこのNHKの報道は実に見事なもので、見終わった後には次の日のネットではこの番組の内容についてみんなネット上で議論するだろう、どんな意見が交わされるのだろうと楽しみに待っていたら、自分が思っていた以上にネット上ではあまり取り上げられず、約一ヶ月経って復興予算の使い道についてあれこれ他のメディアが報道される段階になっても未だに見ません。
 もちろん検索をかけたらいくつかのブログでは取り上げられているのですが、それにしたって内容が非常に良かっただけに何故共通認識になるくらいみんなで共有しないのか不思議でしょうがありません。念のために友人にこの前確認したところ、やっぱり全く知りませんでした。

 今現在起こっている復興予算の不当な使い道では、今日見たのだと公安が「被災地で過激派が活動する恐れがある」として車を買ってたという突っ込みどころのある使い方などあり確かにこれらもこれから精査しなければなりませんが、この不当な使い道に関連して政府、特に民主党を批判する人を見受けますが私としてはあまりいい気分がしません。もちろん民主党は与党であるためにある程度責任は持たないといけませんが、震災が起きて数ヶ月間は「なんでまだ復興予算をきちんと配らないんだ」などという批判が多く、自分のブログにも管元首相の悪口を書いたコメントとか当時受け取りました。
 早く配れれば早いに越したことはないですが、急いでやろうとすれば何事も齟齬が生まれます。かといって抜け道がないように綿密に相談するために配布が遅れてもいいわけではありません。私が何を言いたのかというと、こういうのは結局どっちを取ってもとっちかで転ぶロスであって、過去のことをあれこれ批判するより次回の反省につなげる思考の方が大事だということです。差し当たってさっきの公安のわけのわからない予算申請した責任者のクビを飛ばせば無能が一人減るわけですし、何故管理できなかったのかとあれこれ議論するくらいなら無能の排除と費用を安く抑える有効な方法を周知することの方が未来につながるのでは、未来志向なのではというのが私の意見です。

2012年10月13日土曜日

おもしろ超人のいる国

 また関係ない話からですが、「中国製」というと日本製より価格は安い物の品質が悪いというイメージが付きまといますが、これを「中華製」と言い換えるとまた別なイメージが持たれるのではとこのところ考えてます。具体的には「中華製タオル」、「中華製電子レンジ」、「中華製クレンジングオイル」など、なんか中華料理のイメージからか全部厨房で作られているような感じがします。

 話は本題、といってもまたおちゃらけた話ですが、私が中国に興味を持ったのはこのブログでも何度も書いてあるように三国志など中国史に興味を持ったことが大きいですが、それと共におもしろ超人がたくさんいたということも一つのきっかけとなっております。よく取り上げていたのはテレビ番組の「世界まる見え特捜部」ですが、気功の力などと言いながらレンガをひたすら頭突きで割る人とか、足の指で筆をつかんで上手に字を書く人とか、確かにすごいんだけどなにかおかしいというおもしろ超人とくれば大抵が中国人かインド人でした。今でもそうですがわけがわからないんだけど珍しい感じがするものに対して私はよく興味を持つところがあり、こうしたおもしろ超人が多くいたということから中国が好きになった気がします。なおやっぱりインドも同じ理由からやっぱり好きです。

 ただ昨今は経済成長が著しい中国。資本主義の浸透による影響か、残念なことにこうしたおもしろ超人を見にする機会は確実に減ってきているような気がします。日々の新聞を見ていてもそういうおもしろ超人に関する記事は見ることはなく、話をでっかくしてもしょうがないですけどこういったおもしろ超人がいるということは社会がやっぱり寛容な証拠であるように思えて、表に出なくなったのは社会全体で「無駄なものは無駄」と切り捨て、精神的な余裕がなくなっているのかなという風に感じます。もっともそれを言ったら日本なんか以前からそのような社会になっており、風船おじさん以降は「そんなしようもないことをなんですんねん」と突っ込みたくなる人がほとんどおりません。芸人であれば江頭2:50のように尻で割りばしを割る人はいますが。

 そういう意味では日本も余裕のない国と言わざるを得ないと言いたいところですが、なんか日本は別方面でこのところ凄いと思うニュースが良く報じられます。そのニュースというのも性犯罪者関連のニュースですが、アンサイクロペディアの「変態番付」を見ていると、「なんなんだろう、日本人って」とつくづく思え、こういう常識外で生きる人達もいることだし、世の中捨てたものじゃないなとなんか一人で物思いにふけってしまいます。ちなみにこの変態番付の中で私が一番好きなのは大関の「改造した釣竿を使い、足掛け30年で500枚もの女性下着を盗み続けた通称、釣りキチ助平」です。

2012年10月11日木曜日

平成史考察~玄倉川水難事故(1999年)

 まだなんか掲載周期が安定していないこの平成史考察ですが、このところ畑村洋太郎教授による「失敗知識データベース」にはまっているので、今日は1999年に起きた玄倉川水難事故を取り上げようと思います。

玄倉川水難事故(Wikipedia)

 恐らくこの事故の名前を見てもパッと思い出せる人は少ないでしょうが、内容自体はここで書いてある内容を見ることで思い出す人は多いのではないかと思います。というのもこの事故、ほかの一般の事故とは異なり被災するシーンがリアルタイムで放映されていたからです。
 事故のあらましから話していきますが、1999年の8月13日、キャンプ場として有名な神奈川県足柄上郡山北町にある玄倉川の流域ではその日もキャンプ客でにぎわっておりました。お盆真っ只中ということもあって多くの客が訪れていたのですが、その当時に熱帯低気圧が日本へと近づいており、現場でも午後三時ごろから雨が降り出しておりました。

 この玄倉川キャンプ場を含む周辺は元々雨の多い地形で、川沿いにあるキャンプ場は豪雨時には毎回水没する場所だったようです。こうしたことから上流にある玄倉川ダムの職員は雨の降りだした頃にキャンプ客に対して避難を呼びかけ、実際にこれに応じて大半の客は非難したそうです。ただこうした中でとある企業の社員とその家族による団体は呼びかけに一向に応じず、直接ダム職員が避難するよう伝えても動こうとしませんでした。そうこうする中でも雨足は強まっており、最終的にはダム職員が警察とともに再度避難するよう伝えたものの、数人が移動に応じたものの後に遭難する18人は中州から頑として動かず、あくまで報道ベースですが警官らに対して強い態度で出たと言われております。

 ここでちょっと先にキャンプ場の上流にあった玄倉川ダムについて解説しますが、このダムは小規模の発電用ダムで水の貯水力はほとんどなく実質的には堰の様な施設だそうです。そのため大量に水をためるとダム自体が決壊する恐れがあるため、豪雨時にはゲートを開放して放流する仕組みとなっておりました。この時の豪雨時も決壊の恐れがあるためダムを開放しており、それが現場の急な水位上昇へとつながっています。

 話は元に戻り翌14日、雨はますます強まり玄倉川の水位も徐々に上昇し、午前8時半には遭難者がテントを張っていた中州も水没します。この時点で水位は1メートル以上に達し、自力での脱出は不可能となっておりました。こうした状況から前夜に先に避難した人物から避難要請が出されレスキュー隊員が午前9時に現場へと到着しますが、当日はお盆期間ということもあり大半の職員が出払っており、駆けつけられたのは少ない当直メンバーだったそうです。しかも水位はこの間も上昇し続けており、二次災害の恐れもあることからうかつな救助活動すらできない状態でした。
 午前10時にはテレビメディアが到着して事故状況の撮影が開始されますが、既にテントは流され、遭難者は大人の男性数人が上流に向かって立ち、子供や女性がその後ろで流されまいと懸命に耐え続けている状態でした。この時の映像は当時自分も見ており、未だによく覚えております。

 もうこの後もぐだぐだ書くのも気が進まないので結果を書いてしまいますが、結局救助は間に合わず、遭難者一行は一斉に水流に流され運良く対岸に流れ着いた5人を除き13人が死亡しました。下賤な話ですが、この時の救助とその後の遺体捜索にかかった費用は総額で5億円にも上るそうです。事故当時は一行が流されるシーンの映像も放送しており、恐らくうちの家に限らず全国でショッキングな事件として見ていたかと思います。また事故後は当時の状況が明らかになるにつけ、ウィキペディアにも書いてある通りに避難の呼びかけに応じようとしなかった遭難者に対して強い批判が行われました。
 かくいう私自身もその一人で、未だにやけに覚えていますが夏休みの水泳部の部活の帰りに後輩を捕まえて、「お前どう思うよこの事件」、「俺は大人が自分で残ることを決断して流されて自分一人で死ぬのは自業自得だと思うけどさ、生き残った子供はこれから親なしで生きてくと思うと行動に責任感なさすぎるよな」などと、今思うと中学生の癖してなにわけのわからないことを言ってるんだよという気がします。

 ただこの事件が一つの議論の種となって、どうもこの事件以降から「遭難する側の責任」というものが大きく取り上げられるようになった気がします。大きな災害や事故につながる恐れがあったにもかかわらず必要な対応を取らず、いざとなったらレスキューにおんぶ抱っこはよくないのではという意見が出るようになり、昨今の遭難事故では必ずこの点がやり玉に挙がってくるようになたっと思います。ただ近年はこれがやや過剰になりつつあるのではと思う節もあり、特にネット上では不必要なほど遭難者を批判する意見も目立つようになってきています。責任を全く問わないのは問題ではあるものの、必要以上に問うのも問題だというのがこの事件、並びに現状に対する私の意見です。

2012年10月10日水曜日

大学受験のセンター試験について

 あまり時間がないので簡単にまとめられる話というか前から言いたかったことを書こうと思います。
 センター試験と聞いて何のことかわからない人は多くないでしょうが、このセンター試験は日本の受験制度にかなり根付いてはいるものの未だに批判する声も多いです。具体的な批判点を挙げると、

1、マークシート方式のため数学などで解答幅が狭まる
2、統一的な試験のため大学の個性が出ない
3、思考、読解を問う問題が少ない

 上記の3つの批判点は私も理解できなくはないのですが、しいて言うと2番目の「大学の個性が出ない」というのは無視してもいいかと思います。この批判というのはどの大学も受験問題を独自に作成してこそ入学する学生に校風というか個性が出来るという主張で、センター試験のように統一的な問題ではそういった個性が出ず、入学する学生にも学校にもよくないという奴です、私個人的な意見としては、確かに大学ごとに試験内容が異なれば、たとえば思考力を問う問題が多い大学と素早く解いていく必要が多い問題が多い大学とでは個性が多少変わるでしょうが、それにしたってそれほど大きく違いは出ないかと思います。試験よりもやはり伝統というか学生の間にある空気というものが個性を作るのであって、試験ではないと思います。

 とまぁこんな具合でとにもかくにもいろいろ議論の種になっているこのセンター試験ですが、率直に言って私としては存続させるべきだという立場を取ります。確かに1番目、3番目のような試験方式上の欠点はあると認めますが、それを推しても地方の高校生らの負担を考えるとやはり恩恵の方が大きいと考えています。
 私自身は東京駅まで電車で一時間以内という比較的恵まれた場所に実家があったからよかったものの、地方の学生は東京の大学を受験するに当たってその度に上京しなければならず、滞在費用や移動費用を考えると受験費用でただでさえお金がかかっているというのに余計な負担が多すぎます。一部の大学は地方にも試験場を設けて対応していたりしていますが、センター試験による併願方式を使えばそうした移動を全くせず私立大学などを受験することができ、地方の高校生からしたら非常に助かるのではないかと思います。

 逆を言えば東京近辺の高校生はこういった地方の苦労をまるで理解していない節があるように見えます。私自身は極端に珍しいタイプで関東出身の癖に関西の大学に行きましたが、進学先で地方の高校生の話を聞いていると受験一つとっても都心部と地方部では大きな差があると強く実感させられました。
 なお私は進学した大学の試験を東京に設けられた試験場で受験しました。仮に東京に試験場が設けられなければ受験していなかったかもしれず、そう考えると進学先が肌に合ってたこともありますがよくぞ東京に試験場を設けてくれたと大学運営関係者に強く感謝したくなります。なお関西の私立大なんかこうして地方試験場をあちこちも受けますが、関東の私大はまだあまりそうしたことはしておりません。そのため私の大学の恩師なんか、「関東の大学が地方試験場を作らず王様商売をやってくれているからうちも受験者集まるけど、もしやられたらこっちも困るな」と話しておりました。

2012年10月9日火曜日

山中教授のノーベル賞受賞について

 既に日本国内でも大々的に報じられているため説明するまでもありませんが、京大に在籍する山中教授が今年のノーベル賞を受賞することが決まりました。なんか日本の報道を見ているとやけに中国や韓国がこのニュースをどう取り扱うかを大きく報じておりますが、少なくとも中国に限れば日系メディアが報じる通りに大きく扱っており、実際に一面で報じる新聞も見受けられました。もっとも個人的にもっと気になったのは、「日韓和解?」という見出しで韓国の李明薄大統領と麻生元首相の2ショットを国際金融報という新聞が一面で報じていたことでしたが。

 話は山中教授に戻しますが、今回のノーベル賞受賞は私としても文句なしだし順当な結果だと思います。確かに実用化にはまだ至っておらず検証作業などもまだまだ進める必要がありますが、iPS細胞の発見はES細胞の研究捏造事件で一時研究が止まった再生医療を復活させる原動力となっており、その功績を考えれば確かに早いとはいえ十分受賞するだけの内容があるでしょう。
 ネット上では山中教授への研究費助成金の額を巡って民主党が減額したなどといろいろ書かれておりますが、はやぶさの時といいこの点については私も確かな検証が必要かと思います。何も今回の例に限らず、どの方面にどれだけ研究費を割り振ってどれだけ成果を上げたのかは公表する必要はないと思いますが、やはり専門的な立場にある人たちの間で検証し、有効な資金活用が出来るようにしていくべきでしょう。

 最後にこのiPS細胞の研究で言っておかなければならないと思うこととして書きますが、山中教授は2006年の8月に科学雑誌でマウスにおけるiPS細胞の作成方法を発表しましたが、この時に私が知る限り日本のメディアは完全に黙殺しておりました。一方、同時期にアメリカの新聞各紙は画期的な発見として今日の中国紙みたいに一面トップで報じていたと、ワイドショーに出ていた宮崎哲弥氏がかなり怒りながら主張しておりました。
 ES細胞の研究が盛り上がっていた頃によく友人と生命倫理の議論で話をしていただけにこの時の宮崎氏の話をやけに印象的に覚えているのですが、その後日系メディアが山中教授を取り上げるようになったのは3ヶ月くらいたった同年の12月頃でした。宮崎氏も言っていましたが、国を挙げて科学技術を振興させると言いながらメディアが関心を持たないようでは意味がなく、科学分野は取っつき辛くとも目を向けるべきだと考える大きなきっかけとなりました。

2012年10月8日月曜日

安倍内閣を振り返る

 どうでもいい近況ですが、この前にゲームアーカイブスでダウンロードした「ブレスオブファイア4」というゲームを現在しています。相変わらずストーリーはいいのですが展開がもっさりしているうえにRPGなのにキャラのモーションが無駄に長く、伝統的なまでに長所はあるのだけれど短所も目立つ作品です。ちなみにストーリーのもっさり具合を一つ説明すると、

<主人公の正体がわからない→風の竜に会おう→風の竜に会うために故郷に帰ろう→故郷で親父さんから、「風の竜に会う前に竜の巫女に会えば」と言われる→竜の巫女に会ったら、やっぱり風の竜に会えと言われる→風の竜に会うには風の笛が必要だと言われる→風の笛を手に入れるために、再び故郷の城の地下に行く→笛を持って風の塔に登ってようやく会える>

 決して誇張ではなく、全部が全部こういう感じで無駄なお使いイベントが多いです。っていうか、風の笛なんて取りに行く必要があったのかと思うくらいで、作っている最中に誰か止めなかったのかこれ。

 さて話は本題に入りますが、先日に野党第一党の自民党についてですが、安倍新総裁が就任して何故だか大手メディアからはやっかみもいいくらいに叩かれていますが、私自身としてはまだ何もしていないんだしちょっと今の叩き方はずるいと思います。ただ一部メディアが批判している安倍政権時代の功罪についてはきちんと比較分析するべきだと思いますし、そこで今日は安倍政権時代について私の評価をまとめようと思います。

安倍内閣(Wikipedia)

 まず安倍政権の最大の功績としてよく挙げられているのを見るのは教育基本法の改正です。教育基本法はかねてから野党や日教組が議論すら許さなかった程の聖域であったため確かに改正したのは歴史的と言ってもいいとは思いますが、ただ私自身としてはあまり評価しておりません。というのも不勉強なだけかもしれませんが、教育基本法が改正されたからと言って日本の教育環境や内容が改善されたかといわれると改正から数年経つのに未だに見えてきません。それどころかいじめ問題を筆頭に結局以前のまま、さらに言えば以前に私がブログで指摘したように教師の高齢化も歯止めがかかっておらず、理念だけ変わったところで成果があまりにもなさすぎるという風に考えております。
 ただ唯一、この時の改革で評価しているのは教員免許更新制の導入です。現在も存続か廃止かで非常に揺れている制度ではありますが、発足当初は中学校の数学問題すら解けなかった高校の数学教師がこれで解任されたりと、あまりにも能力のない教師の淘汰に一役買ったと思いますし、この手の議論に大きな一石を投じたと思います。もっともおしむらくとして、教員の再教育というか研修制度があまりしっかり組み立てられておらず、現在もこの点が大きな問題となっているところがありますが。

 次に同じく安倍政権の功績とみられているのが、防衛庁の防衛相への格上げです。これについては以前は野党が議論すら許さなかった内容ですが、確かに評価はできるもののなるべくしてなったもので大きくポイントを挙げるべき評価項目ではないと考えております。このほかパチンコ業者への締め付けを厳しくした点などは私自身は大きく評価しておりますが、安倍政権全体を通して観念的な部分での法改正は多いものの、具体的に成果を上げる細則実施はやはり少ない気がします。

 逆に安倍政権のマイナス評価ポイントですが、恐らく私だけでしょうが最大のターニングポイントとなったのは「ホワイトカラーエグゼンプション」と呼ばれる裁量労働制の導入を検討したことだったと思います。元々、安倍政権は発足当初は内閣支持率が異常に高く国民から期待された政権でしたが、「再チャレンジ」などを叫んで雇用対策などを強化すると主張していたところ、このホワイトカラーエグゼンプションが突然出てきて「ああやっぱり財界寄りだったんだな」と私もこの時にグッと距離感を感じました。
 念のためホワイトカラーエグゼンプションについて説明すると、幹部級社員に対してあらかじめ定められた時間に縛られず自由に働くことを認める制度という触れ込みでしたが、仮にこの制度が認められるとサービス残業を国が公に認めてしまうことになるのではないかと批判が起こりました。はっきり言いますが政府、というかこの制度導入を強く求めた財界の本音としてはまさにその通りで、当初は対象となる社員を年収300万円以上(途中で800万円以上に訂正)と言っており、日雇い派遣など低賃金過重労働が問題となっているところでこんな制度案が突然出てきたことは面食らいました。また当時、というか現時点において日本企業では年収500万円以上の社員を大抵は管理職扱いにしており、この裁量労働制を事実上実施しております。うちの親父なんか、なんで既にみんなやっていることをいちいち法律で追認するんだと当時批判してました。更にもう一言加えておくと、日本でカタカナの名前の法律は大抵が何かしら裏があります。

 と、このホワイトカラーエグゼンプションが出てきた時点で私も一気に評価しなくなったのですが、一番致命的となったのは消えた年金問題において間違いないでしょう。この年金問題に関しては逆に私は同情的に考えており、それ以前の政権が放置してきたために大ごとになった問題を、何故か安倍政権の時期に今は無き社保庁が不必要なまでにリークを行い選挙で大敗する要因を作りました。この時に社保庁は何故リークを行ったのか、恐らくは安倍政権が渡辺善美氏(現みんなの党党首)を据えて進めていた公務員改革に対する反抗だったのではないかと考えております。なおこの消えた年金問題で何が一番問題なのかというと、この時に散々騒いだにもかかわらず、現時点においてもこの問題は何も改善されずくすぶっていることです。恐らくまたどこかの政権で一気に問題が噴出して大騒ぎしてなにも変わらないまま次代に引き継がれていくことになるでしょう。

 消えた年金問題同様に、直接的に安倍氏自身の責任ではないものの閣僚の度重なる不祥事も短命政権を生む要因となったでしょう。何とか還元水で最後は自殺に至った松岡利勝元農水大臣はもとより、その後を継いだ赤城徳彦に至っては、ウィキペディアの記事を見るにつけよくもまぁ大臣在任中の2ヶ月の間にこれだけ問題を引き起こしたなと呆れてきます。存命中の人物に唾を吐くのはどうかと思うものの、この人はほんまもんのクズでしょう。

 以上のような具合であまりまとまりがない書き方をしておりますが、総じて必要性や優先度の高い改革を行ったとは言いづらく、過分の安倍氏の「やりたかったこと」だけが実行されていた政権だった気がします。とはいえ安倍氏自身はそういうブレの少ない性格なために、恐らく野党党首としては十二分に才能を発揮して自民党自体にとってはこれからいい方向に持っていくと予想してます。
 ただそれは野党党首としての話であり、仮に次の総選挙で自民党が大勝し、総理大臣に再登板することになれば元から才能なんてないんだからまともな国会運営が出来ず、晩節を大いに汚すことになるということも予想しておきます。というのも安倍政権は小泉政権の遺産ともいうべきか、衆議院で三分の二以上という圧倒的多数の議席を保有していたのですが、この議席数に胡坐をかき強行採決することが異常に多かったです。当時は参議院でも自民党が過半数を握っていましたが、ねじれ国会の今に総理に就任したところで安倍氏にまともな国会対策が出来るとはとても思えず、すぐに運営に行き詰まることでしょう。厳しい評価ですがかつて「KY」と呼ばれただけあって、安倍氏には致命的なまでにこの方面の能力が不足しております。悪いことは言わないから、選挙で大勝したら総裁を降りて、総理職はほかの人に任せた方が無難かと個人的に思います。

2012年10月7日日曜日

経済記者の得意分野、不得意分野

 自分が今の仕事を始めるに当たって、経済学部も出ておらず経済方面の知識が少ないにもかかわらず経済記事がきちんと描けるかどうかが正直な所不安でした。ただこの不安は結果論から言うと杞憂に過ぎず、というのも自分以上に経済のことよくわかっていない人が社内には多かったです。というのも今の会社は経済がわかる、わからない以前に中国語と日本語の能力が求められるため、あまり経済方面の知識力が問われることが低いということが大きな要因なのですが、ただどうも業界内を見回していると大新聞の経済部記者でも知識的に結構怪しい人がちらほらおります。

 私がこう思うようになったきっかけは先日にイギリスで問題になったLIBOR事件の記事なのですが、当時にこの問題について書かれた記事をいくら読んでも内容が全く把握できませんでした。単純に私自身の理解力が不足しているだけだったかもしれませんが、どうもあの時の記事を思い出すにつけ、書いてる記者自体があの問題の本質を誰もわかっていなかったのが最大の原因だと思います。というのもどの記事も、「イギリスでLIBORが問題になっている」、「イギリス当局が銀行に怒っている」としか書いておらず、何の理由で、しかも英銀がどういう不正をすることによってどんな利益を得るのかという構造を誰も説明していませんでした。
 LIBORに限らず、金融関連ニュースは複雑な話が多いために基本的にどの経済記者も書くのを苦手としております。さすがに日経(読んでてわかりづらいが)ならまだしも、朝日や読売といった大手新聞ですら内容を理解していないと見える上っ面だけの記事が載ることもあれば、問題の核心を敢えて濁して書いていると感じる向きも多いです。かくいう自分のいる会社でも金融関連はみんな書きたがらないので上海証券取引所のシステムが一部変わるとかそういった関連の話は無視することの方が多いです。ただこれが香港だったら話は変わってきます。香港は金融と不動産が経済ニュースの8割を占めるために必然的に取り扱わなければならず、自分も香港にいた頃は吐きそうになりながらブルベア証券とかいうデイトレードの話とかを一生懸命書いていました。幸いというか元バンカーの記者が同僚にいたのでわからないところはすぐ確認できましたが。

 金融に限らず、ちょっと面倒な分野というか業種の話はやっぱり書くのが苦手な記者は多いです。所詮は物書いてるだけでその業界で働いたというわけでもないので限界があるのはしょうがないですが、日本の場合は自動車をはじめとして製造業が多いせいかこっち方面の記事だけが得意という人も少なくありません。まぁこれは逆説的に言うと製造業関連の記事は書きやすく、生産能力とか投資額とかをそろえて書けばそれなりに出来上がってしまうという裏事情があるためですが。ただ製造業でも、電機・電子というかエレキ分野は苦手な人は本当にどうしようもないという人もおります。特に通信関連だと多少専門用語が出てくるため、「LTEって何?」から聞かれることもあります。

 参考までに自分の得意分野、苦手分野を書きに簡単にまとめます。

・エレキ(△):必要最低限のことは書けるが、特集記事とかはそういうのは書かないし書く気も起きない。
・自動車(○):決して詳しいわけではないが、社内に車好きがほかにいないために相対的に質問が集まってくる。
・金融(○):同じく詳しいわけではないが、ほかに書ける人があまりいないため集中して書くことが多い。
・小売・流通(×):自分自身がこの業界に全く興味がないため、書く記事も淡白で社内で評判が悪い。
・繊維(△):中国でも年々盛り下がっている業界なだけに、書く機会自体がほとんどない。
・ゲーム(◎):ほかに書ける人がいないというのもあるが、興味が強いことから社内で恐らく一番上手く書けると自負してる。
・IT(○):一通りの用語は知っているのと、ネット広告の仕組みがまだわかることから質問がよく来る。
・エネルギー(×):専門性が非常に高く応用し辛い分野。中国では石炭の話がメインで、標準炭という単語がよく出てくる。
・観光(×):ホテル経営関連のニュースは壊滅的。パリス・ヒルトンのスキャンダルなら書けるが……。

 私の場合はざっとこんな感じです。一番ベストなのはどの業界でも万遍なくいい記事を書けることですが、やはり興味のある分野の方にこういうものは偏っていくと思います。ただこれはあくまで経済記者における基準であって、ほかの社会部とか芸能部の記者と比べればどの業界でもまだ強いという自信があります。その分、芸能関係は本筋の人には負けるでしょうが。
 なお敢えて一つ苦言を呈すと、日本の政治部記者はもっと経済を勉強すべきだと私は感じます。政府の経済政策批判もとんでもなくピントが外れた記事が多く見受けられ、今読んでいる本で学者も指摘しておりますが、円高の責任は日銀にあるのに政府ばかり批判し、日銀がほくそ笑んでいるという現状もあります。経済に限るわけじゃないですが、日本の政治記事は批判ばかりでなんていうかつまらないです。

2012年10月5日金曜日

何故秦は強かったのか

 先月に日本に帰国した際に以前から読んでいた「キングダム」という漫画の新刊を一気に読んできました。以前から高く評価しておりましたが先日からはNHKでアニメ化を果たしており、非常に読み応えのある作品でどうしてこの作者がこれまでに世に出なかったのが不思議に感じるほどです。
 そんなキングダムですが知らない人に簡単に説明すると中国の戦国時代(紀元前3世紀あたり)が舞台で、後に中国を統一する秦で将軍を目指す少年が主人公です。漫画ではやっぱりドラマ性を掻き立てるために戦争で何度も秦が窮地に追いやられたりしますが、実際の歴史では当時の臣はこの後に中国統一するだけあって国力は圧倒的で、ほかの国が束になっても敵わないくらいに強かったです。これまた先日にこの「キングダム」について語られている掲示板で、一体何故当時の秦がそれほどまでに強かったのかという議論があったので、私なりに秦の強さの秘訣を教派解説しようと思います。

(Wikipedia)

 まず自体背景から説明すると、封神演義で有名な周王朝が衰退していくと中国では各地域に王が立ち分裂国家となります。この分裂時代の序盤を春秋時代、途中で晋という国が三国に分裂して以降は戦国時代と呼称を呼び分けられているのですが、はっきり言って秦は春秋・戦国時代を通して一貫して強かったです。何かの戦争に絡んだたら大抵は勝ってましたし、常にパワーバランスを握る大国として君臨し続けておりました。何故最初から秦が強かったのか、その理由を箇条書きにすると以下のような点が挙がってきます。

・西の果て(現在の陝西省)という防御に強い地の利に恵まれていた
・常に異民族と戦っていて兵の練度が高かった
・中央の争いにあまり巻き込まれなかった

 言ってしまえば三国時代の蜀と同じような具合で、根拠地が圧倒的に守りに強い場所にあったことが大きいです。ただその一方でデメリットもあり、こちらも蜀と同じく食糧生産量は少なく複雑な地形から外征には出辛い国でした。もっともあまり外政にでられなかったことから、国力をじっくり蓄えることもできたとみれますが。

 こうした地政学的な利点に加え、秦が最強国となった最大の理由は商鞅の改革にほかなりません。商鞅に関しては世界史でも習うことがありますが法家の代表格ともいうべき人物で、当時はまだ蛮地とみられていた秦で厳しい法制度を敷いた人物です。商鞅の改革は授業では刑罰関連ばかりが取り上げられますが、実際には知行制から俸禄制に切り替えたことの方が影響力としては大きいです。
 当時の中国では日本の戦国時代のように、功績のあった人物には土地とその土地に住む住人の支配権を与えることで報酬としておりました。ただこのやり方だと与えられる土地はどんどん減っていくばかりか一度与えた土地は取り返せず、中には王を超えるほどの土地を所有する大貴族も生無ことにもなり王の支配権にもいろいろ影響しておりました。これを商鞅は土地をすべて王の管理下において、その土地から得られる穀物を報酬として与える俸禄制に切り替え、王の実権を高めるとともに実力のある人物を採用しやすくするよう改めました。

 この商鞅の改革の結果、秦の貴族は弱っていったのに対し秦王の権力はどんどんと強まっていっただけでなく、俸禄制で気兼ねなく積極的に人材を採用することから有能な人物も次々と集まるようになっていきました。あまりよそでは指摘されておりませんが、秦ではほかの国と比べて圧倒的と言ってもいいほど宰相職に外国人が就任するパターンが多いです。この商鞅もそうでしたし、その後の范雎や李斯も外国出身者で実力主義が非常に浸透していたことも見逃せません。
 これまたはっきり言ってしまえば、秦が中国を統一できたのはこの商鞅の変法によるものと言い切っていいでしょう。一応、隣の魏が秦に先駆けて呉起が知行制から俸禄制に切り替えましたが、実権を失ったことを恨んだ貴族たちによって呉起が殺されて後に魏は元の知行制に戻してしまっています。仮にこの時に魏が俸禄制を維持していたら、歴史が変わっていた可能性は高いと思います。また商鞅自身も後に恨んでいた貴族によって殺害されますが、秦は俸禄制をちゃんと維持しました。

 この知行制から俸禄制への切り替え、後の中国ではスタンダードになりますが日本では織田信長が初めて大規模に実行しております。結果は言わずもがなですが、やはり戦国時代は実力主義者が強くなる傾向があるようです。

2012年10月4日木曜日

セブンイレブンのカレー弁当:((´゙゚'ω゚')):

 愚痴っぽい話になりますが聞いてください。
 やや古い話ですが今年7月、昼食にこちら上海で売っているセブンイレブンのチキンカツカレー弁当を買って食べたのですが、食べた直後から明らかにお腹が痛くなり、例えるなら胃の中にねずみ花火放り込んだような痛みでその日は嘘ではなくまっすぐ歩くことすらできなくなりました。こんなことあったもんだからもうセブンイレブンのカレーは食べないでおこうと決めたのですが、「さすがにあの時はたまたま手に取ったものが悪かったのかもしれないし、そもそもあのカレーが腹痛の原因とも限らないしね(*´∀`)」などと言って、一昨日にまたセブンイレブンのカツカレーを昼食に買って食べました。やっぱりお腹壊しました。

 お腹壊すといっても一回下すとかそういうレベルじゃなく、致命的なまでに胃の機能が低下しております。最初のチキンカツカレーも食べた日から二週間程度腹痛が止みませんでしたが、一昨日にカツカレーを食べてからも現在に至るまでも、前ほどじゃないけど時たま激しく痛くなります。感染源がセブンイレブンのカレーとは限りませんが、さすがにこうも二回連続で、しかも長期にわたって痛みが続くということまで共通していると疑わざるを得ません。そもそも一回で懲りてれば話は早かったのですが……。
 ちょっと今回は私もマジになり、本当に痛いもんだからセブンイレブンに文句入れようかとすら考えました。さすがにクレームは出してませんが、ほかにも被害者がいないか百度で確かめはしましたが、同じような話はあいにくありませんでした。

 なおコンビニのカツカレーとくれば私は普段、ファミリーマートのカツカレー弁当を食べてます。あまりにも昼食に使う回数が多いものだから同僚からも「栄養偏るよ(*´・ω・)」と言われるくらい食べてますが、こっちのファミリーマートでは今の今まで一度もお腹を下したことはありません。あとさすがに中国に留学に来た直後はこっちの辛い料理になれず比較的壊しやすかったですが、この一年間はほとんど全くお腹を壊すことがないくらい中国の食事に適応していると自負しております。
 とはいいながら、以前に会社の同僚と四川料理屋に行った後、一回壊したことがありました。次の日になんとなくその同僚と話してみると、なんと同僚も同じようにお腹を壊しており、二度とあの店には行かないと誓い合いました。

2012年10月3日水曜日

猛将列伝~朱元璋

 このところずっと中国史ネタをやってないので、意外と知らない人も多そうなので朱元璋について私なりに簡単に紹介します。

朱元璋(Wikipedia)

 朱元璋とくると世界史をやってる人には早いですが、14~16世紀に中国を支配した王朝である「明」の初代皇帝です。この明のひとつ前の時代は「元」といって、説明するまでもないですがモンゴル人の支配による王朝です。朱元璋は元々農民出身(しかもかなり貧乏)で、この元に対する白蓮教徒による反乱である紅巾の乱に参加したことから世に出ます。この反乱軍参加時に責任者の郭子興に気に入られ養女を嫁にもらったことから徐々に頭角を現し、郭子興の死後はその軍を実質的に引き継ぎ戦国時代と化していた中国で覇権を争うようになります。
 この時の朱元璋の行動で注目すべきは、自分が農民出身ということで同じく皇帝にまで上り詰めた前漢の劉邦を意識して参考にしていることです。たまに朱元璋を日本の豊臣秀吉と比較する人がおりますが、同じ農民出身ということでなくこう言った一種のパフォーマンスを取っていたということからも悪くない比較の仕方だと思います。

 朱元璋が後に中国の皇帝になれた大きな理由は知略に長けた功臣に恵まれたことはもとより、早くに南京を中心とした江南地方を手中に収めたことが何よりも大きいでしょう。当時の中国はたとえるなら今の北朝鮮と韓国のように南北で大きな経済格差があり、南方が圧倒的に裕福でした。元朝をはじめとしたその時々の王朝は隋朝時代にできた大運河を使って南方の物資を北に運ぶことで経済をまわしてきていたのですが、ライバルの漢民族の軍閥を蹴落としてこの裕福な南方を得たことによって、北京に居座る元朝との対決を非常に有利に進めることが出来るようになりました。
 私見ながらやはり朱元璋が偉大だと感じるのは、彼一代で軍閥を起ち上げた上にモンゴル民族を打ち破り中国統一を果たしていることです。ほかの王朝なんかは大抵は初代が王朝というか軍閥を起ち上げるところまでやって、中国統一は二代目以降がというパターンが多いのですが、朱元璋の場合は彼一代でこの難事業をやり遂げております。そういう意味では行動力というかパワーというか、とにかくそういったものに溢れている皇帝像を思い浮かべます。

 ただこの朱元璋、知ってる人には有名ですが性格に色々難があります。とにもかくにも猜疑心が強く、中国統一後は創業の功臣を片っ端から誅殺しております。何もこんなところまで劉邦をまねなくったっていいのに。そのため現代に伝わる彼の肖像画は二種類あり、片っ方はいかにも中国画って感じの恰幅のいいカーネルサンダース然した叔父さんですが、もう片っ方はネズミみたいな顔した、なんていうかヤクザのチンピラっぽい顔で書かれておりこちらの方が実像に近いと言われております。
 彼の誅殺ぶりを表す一つのエピソードして空印事件というものがあるのですが、これは帳簿の数字を修正する場合は今の日本のお役所仕事と同じように一からやり直さなければならなかったことから、あらかじめ印鑑を押した記入前の帳簿を作っておくという裏テクが明代のお役所でも公然の秘密のような感じで行われていたようですが、これを朱元璋が「意味ないじゃん!」と言って関係部署の人間、または作っていた人間をまとめて死罪にしたそうです。このほか彼の奥さんの馬皇后も、病気になった際に夫が送ってきた医師の診察を一切受けなかったそうです。というのも仮に診察を受けても治療できなければ、怒って旦那がその意思を殺すとわかってたからです。

 このように朱元璋は苛烈な性格をしていたことは間違いなく、中国語で「我的东西是我的,你的东西还是我的」と中国語がわかる方なら即意味が取れるでしょうが、「お前の物は俺の物、俺の物も俺の物だ」とジャイアンに約600年先駆けてこんなことを言うくらいな人だったらしいです。ただこうした苛烈な性格は周囲、特に本人の学歴コンプレックスもあって文人官僚などに向けられることはあっても、一般庶民に対しては自分が貧農出身だったことから比較的寛大な政策が取られており、反乱軍参加時も略奪などの行為は他の軍の比較して極端に少なかったそうです。そのため庶民からの人気は絶大で、上記のように豊臣秀吉といろいろかぶってくるわけです。

 ただ彼の不幸は後継者と目論んでいた長男が早世し、二代目を継いだのが長男の息子、つまり朱元璋の孫(建文帝)になったことです。政権を盤石にするために功臣をすべて排除していたものの、親戚には甘かった朱元璋は第四子である朱棣には北京で大規模な兵権を預けたままで、朱元璋の死ぬとこの朱棣があっさり反乱を起こして建文帝を殺害し、自らが第三代皇帝の永楽帝となります。
 中国文学者の高島俊男氏なんかはこの過程を現代中国にも当てはめ、重農主義だった朱元璋(毛沢東)の後に永楽帝(鄧小平)が立ち、永楽通報という通貨を流通させるなど市場経済主義に改変せしめたと指摘し、明代と同じように今の中国共産党帝国は寿命の長い王朝になると分析しておりますが、なかなか頷ける話だと私も思います。

10月6日:西宮冷蔵社長のトークイベント開催

 以前に書いた「平成史考察~BSE騒動(2001年)」のコメント欄で以下のイベント開催告知を受けたので、このブログでも紹介することにします。


『ハダカの城』アンコール公開記念イベント
■日時:2012年10月6日(土) 12:30開場/13:00開始 
■登壇者:水谷洋一(西宮冷蔵株式会社社長)/水谷甲太郎(同社専務)
/香川今生(TVディレクター)/柴田誠監督
■料金:前売1500円/当日1800円
■場所:「Space&Cafeポレポレ坐(ポレポレ坐ビル1階)」
■予約:03-3227-1405(ポレポレタイムス社)  E-mail:event@polepoletimes.jp
■定員:70人

ポレポレ坐サイト(http://za.polepoletimes.jp/news/2012/09/2012106.html

 西宮冷蔵とは雪印牛肉偽装事件の際に内部告発を行った倉庫会社のことです。この経緯については過去記事でも取り上げていますが、不正を見逃さず内部告発を行った西宮冷蔵はその後、偽装に関わったとして行政から営業停止処分を受け一時は休業に追い込まれますが、その後各方面からの支援を受け営業を再開した会社です。まだ黎明期とはいえ内部告発のあり方に一石を投じた会社であり個人的にも興味を持っている会社なのですが、社長の水谷氏が東京でトークショーを行うとともに、あの事件をつづった映画「ハダカの城」も公開するイベントだそうです。

 生憎私は今日も明日も明後日も中国にいるので見に行くことはできませんが、興味のある方などは足を運んでみてはいかがでしょうか。

2012年10月2日火曜日

次回総選挙の結果予想について

 材料が一通りそろってきたので次回総選挙について予想を簡単にまとめることにします。まず結論から言うと私は、大胆な予想ですが次回総選挙では民主党が逃げ切る形で勝利すると考えております。

 総選挙の結果予想の前に時期はいつごろになるのかについて軽く触れておきますが、候補としては二通りあり、今年末か来年4月以降のどちらかと言って間違いないでしょう。こう考える根拠として野田首相は今年中の臨時国会の招集を既に約束してあり、恐らくここで補正予算案を出してくるかと思います。その一方、来年度の予算編成にも既に着手しているとされ、仮にこれを通すとなったら来年にまで選挙はずれ込むことになります。私の見立てだと野田首相もこの二通りの選挙時期をにらんでおり、本命としてはやはり来年で、状況によっては今年やるという算段じゃないかと思います。奇襲をかけるという意味では、今年やった方が解散総選挙を求めている自民党に打撃を与えられるからいいような気がしますが。

 では選挙時期はいいとして、どうして民主党が勝利すると予想するのかです。普通に考えれば消費税増税に踏み切った挙句、これまでの三年間がリーマンショックをはじめとした国外の影響が大きいとはいえ不景気の真っただ中だったことから民主党が大敗すると誰もが考えておられるでしょうが、こう考える根拠をスパッと言ってしまうと次の選挙で勝利ラインとなるのは衆議院単独過半数ではなく、比較第一党となることだからです。
 勘違いしてもらいたくないのは私も次の選挙で民主党は相当の議席を減らすことになり、よほどのことがない限り単独過半数を得ることは不可能でしょう。ただ今の情勢を見るにつけ自民党は民主党に反感を抱いている層から支持を得ているとは言い難く、小沢一派の分裂といい日本維新の会の発足など、新党が出来ていることから票がばらける可能性が高いんじゃないかと思っています。そのため民主党の減った議席分だけ自民党の議席が増えるわけではなく、自民も民主も単独与党にならないんじゃないかと思います。

 どこも単独与党が作れないとなると次回選挙後は連立政権になる可能性が高いわけですが、ここで中心となるのはいうまでもなく比較第一党です。要するに民主党としては議席を減らしても比較第一党になればどうせ今の参議院の状況からして連立政権になるわけだし、結局は政権を維持できることになり、負けるが勝ちじゃないですがイニシアチブを握れることになるわけです。
 もちろん自民党が比較第一党になれれば自民党から首相が出るわけになるでしょうが、さっきも言った通り自民党が支持層を拡大しているとはちょっと言い難く、反民主層の投票は日本維新の会に向かうことになると思います。更に今後の国会状況を予想するにつけ、外交政策は野田首相、安倍総裁、石破幹事長でほぼ一致しておりあまり論点がなく、消費税の増税案についても自民党は谷垣時代に賛成し(そして自己否定し)た過程があるため強い批判は行えないでしょう。もし消費税増税方針を撤回するということもありえますが、これはこれで批判を受けることになるでしょうし、私が野田首相なら自民党が撤回した段階で敢えて選挙に臨みますがね。

 と、ここまで民主党は議席を減らすが比較第一党になるのではという話を書いてきますが、本当に重要なのはここからで、じゃあ選挙後はどこと連立を組むかです。個人的にここ数週間の政治報道を見ていて非常に不満に感じていたのですが、それこそ自民の総裁選の最中にでも誰か、仮に自民と民主がどちらも単独過半数を握れなかったら連立を組むのかと質問する奴はいないのかとやきもきしながら見てました。さっきも書いたように自民も民主も単独過半数が取れないと私は考えており、ではその時に両党は連立を組むのか、ここが今後の政局を見る上で非常に重要になってくるかと思います。
 私としてはかつての鳩山、管時代に比べれば今の野田首相と前原氏の方針は安倍総裁に近く、全く有りえないとは考えていません。ただ連立を組むこと前提だと自民党としては今後の国会では批判しづらくなり、この辺を安倍総裁がどう判断するかがまさしく見物です。条件としては選挙後に野田首相を下す代わりに、と言ってくるかもしれません。

 ただ連立を組むのはこの二党だけとは限りません。それこそ議席数が足りるのであれば民主は自民を、自民は民主を選ばずに、公明党をパートナーとして選んでくる可能性があります。こうなった場合は公明党にとってはまさに漁夫の利ですが、この漁夫の利をマジで狙っているのは他でもなく日本維新の会でしょう。仮に日本維新の会が30議席を確保すれば十分に交渉できるようになり、民主党も自民を選ぶよりは公明、維新で三党連立を選ぶ方が気が楽でしょうに。

 以上のように次回総選挙は選挙後の連立をにらんでこれまで以上に複雑な争いになってくると思います。最後に代表、総裁選を終えた民主党と自民党について一言書くと、民主党に関しては完全に選挙を意識した体制になっております。つい先日に内閣改造を終えましたが、これまでと比べて比較的若手の議員を登用するとともにあの田中真紀子氏まで入れてきましたが、細野議員を政調会長に入れた当たり、自民党に対して世代の若返りをアピールする狙いがあると思います。私としても知名度はあってもこれまであまり役に立たず、また派閥に遠慮して決められた人事よりはまだ一見の価値がある陣容だと評価してます。
 逆に自民党は安倍総裁以下やはり世代交代が進んでいない上に、先日に森、福田元首相など重鎮が政界引退を発表してはおりますが、後釜のこととか考えると次の選挙は厳しいんじゃないかと個人的に思います。自民も政策批判だけじゃなく、重鎮の引退に合わせて小泉進次郎議員などもいるんだから世代刷新をもうちょっとアピールした方がいい気がするのですが。

2012年10月1日月曜日

個人における主観と客観の割合

 このところ長期連休中で家に籠っていることもあり思想がやけに発達してます。苦労しながら得られる哲学もありますが、やっぱりある程度時間に余裕がないとこういうものは考えられないと再自覚されるのですが、私なんか意識してたけど昨今の大学生は意識してるのかな。これも先日に友人と話しましたが、余裕のある大学生の時代に思想を広げられないのであれば恐らくその後一生広げられないのではと本気で思います。

 そろそろ話を本題に入りますが、友人から度々、しかもかなり激しく注意されるくせに未だに私は相手を値踏みする癖をやめることが出来ません。他人をどう評価するかですが、勝手な想像ですが恐らくほかの人はある一面、仕事ができるか知識が多いか性格がいいかお金を持っているかなど焦点を絞って分析しているように見えますが、自分の場合は異常と言っていいくらいの数量の分野を項目ごとに比較して総合的に判断するように心掛けています。そんな比較指標の一つとして、今回取り上げる「主観と客観の割合」は重要指標として重く評価する材料となっております。

 主観と客観の割合と言われてピンとくる人はまずいないかと思いますし、こんな指標でもって他人を判断するのはまず以って私くらいでしょう。これの意味するところは一言で言い表すならば、「自分の意見と他人の意見で、どっちをどれだけ優先するか」です。これは普段は百分率で比較しているのですが、たとえばほかの人の意見を全く聞かず自分の考える通りがすべて真実だと考えている人は主観100%で、逆にまったっく意見を持たずに周囲の意見に完全に流される人は客観100%です。
 具体的にどこに中間点(主観50%、客観50%)を置くかは厳密には難しいですが、比較さえできればいいので私は平均的な日本人の態度を50%:50%に置いて比較をしております。国際的に比較するなら日本人はやはり自己主張を控えるところがあるので、中国人やアメリカ人は主観の方が60%や70%に達し、逆に客観は40%や30%へと落ちていきます。また宗教をやってている人間も一部の価値観を信仰内容に合わせるため主観より客観が多くなると考えており、このほか軍隊にいる人間もその集団性から主観が低下します。

 この段階で何かピンと来た人は恐らく私と同じ社会学出身だと思いますが、この考え方のベースには社会学者エミール・デュルケイムの「自殺論」に依っています。この自殺論では主観をどちらかというと「自我」という言葉で表現しておりますが、この自我の割合が極端に高い人ほど自殺する傾向が上がり、また逆に自我が極端に低い人も同じように自殺する傾向が高いと統計で証明しております。現実に日本の自衛隊を含む軍人の自殺率は一般の自殺率と比べ世界各国で高い傾向があります。宗教に関して言えばカトリックより主観が強いプロテスタントの方が自殺率が高く、カトリックの人くらいのバランスが対自殺という面では主観と客観の割合が一番いいのかもしれません。
 念のため付け加えておくと、イスラム教の場合は生活苦などの自殺は少ない一方で殉教とか自爆テロが多いので、やはり客観が強すぎるきらいがあると私は考えております。

 話を元に戻しますが、こうして主観と客観の割合という面で他人を比較分析すると意外と楽しいものがあります。どんな人の意見も聞く人もいれば年下の意見は内容はどうあれ聞かない人もいたり、ちょっと前まで散々持てはやしたくせに流行が廃れるや見向きもしなくなる人など、やっぱり人それぞれに個性があって千差万別です。
 上の自殺率の話で書いたように、一概に主観が強ければ強いほどいいというわけではなく、やっぱりこれはバランスだと思います。隣人にするなら言うべきことは言って、他人の意見にもきちんと耳を傾けられるバランス感のある人間がやはり望ましいでしょう。ただ一つの集団の中で考えると主観と客観、どちらかに偏った人間が求められることになります。

 その代表格はまさに上に挙げた軍隊における一兵卒です。末端の兵士は上から下りてきた命令内容に疑問やためらいを持って行動が遅れたりすれば部隊全体に影響することがあり、可能な限り主観が低いに越したことはありません。逆に司令官は周りにほだかされて自分の決断をコロコロ変えたりすればまず負けるため、強烈な主観が求められることになります。
 一般企業においてもこれは同様です。末端はなるべく主観を持たないで仕事し、管理職や役員はある程度固定した思想が求められます。ただ最近は世の中の仕組みが変わってきていることもあり、以前より末端社員が主観を持つというか自分で判断して処理しなければ仕事がうまく回りづらくなってきていると私は考えています。もっともそれは上層社員も同じことですが。

 ただここで一つ疑問が出てきます。管理職や役員は強い主観を持つべきとはいっても、間違った経営判断を頑固に維持することは経営上問題なのではないかということです。となるとやっぱりバランスのいい人が望ましいのか、これに対する私の答えは否で、もう一つ概念を加えて考えればすっとおさまるような気がします。なんか今日はもったいぶった言い方が多いですがその概念というのも、「論理的思考ができるかどうか」です。
 私は最初に「自分の意見と他人の意見で、どっちをどれだけ優先するか」が主観と客観の割合を決めると書きましたが、これは必ずしも「他人の意見を採用するかどうか」には関わりません。何故ならば自分と他人の意見が最初異なっていたとしても、冷静に損得を考えて他人の意見が有利と判断してそちらを採用するというのも、主観の判断だと取れるからです(少なくとも私には)。仮に自分の意見が有利だと思いつつも周りを気にして他人の意見を採用するのであれば主観が低いと言わざるを得ませんが、比較判断した上でより有利な意見として他人の意見を取ることはまさしく自己の判断と言えるでしょう。

 この比較判断が出来るということこそが論理的思考ができるかどうかです。論理的思考ができないというのはこの場合、自分の意見と他人の意見のどっちが有利かを全く考えず自分の意見を自分が考えたのだからという理由で採用することになり、いわゆる問題のあるワンマン経営者が出来上がるというわけです。説明するのが面倒なのでサラリと流してしまいますが、この論理的判断は主観があって初めてできる行為であって、客観の方が強い人間は不可能です。そういう意味で経営者などには、論理的思考ができることを前提でやはり主観が強い人の方が向いていると私は考えます。逆に論理的思考が出来ないのであれば早めに放逐した方がいいでしょう。

 最後に私の自己分析ですが、主観と客観の割合は90:10くらいかなと考えてます。基本的に自分が間違っていると思うことに対して一切合切拒否しますし、自分が納得しない限りは人の意見を完全に無視しているからこの計算となるわけですが、ただ一人の友人が話す意見に対しては内心で「それ違うんじゃないかな」と思いつつも、その友人が言うのだからと無条件で従います。ほか3人の友人に対しては意見が対立した際、自分の意見を一旦は必ず保留にして再検討するごく限られた謙虚さを持つので、客観を10と計算した次第です。こんな性格な分、普段接する上でも主観の強い人間の方が好みというところがあります。