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2013年2月11日月曜日

続、中国艦船のレーダー照射事件について

 以前にも取り挙げた、中国の艦船が火器管制レーダーを日本の艦船に照射した問題について、続報が出てきたので軽く自分の意見も書いていきます。

中国艦船のレーダー照射を「面子」から考える (1)

 上記のページは国際政治学者の六辻彰二氏のブログの記事ですが、言いたいことは基本的に私も同じです。六辻氏は上記のページにて今回のレーダー照射問題の背景には下記二つのシナリオがあると指摘しております。そのまま抜粋すると、


1、国際常識に乏しく、なおかつ反日的な末端の兵員が、勝手にレーダーを照射した。それを公にすれば、人民解放軍の管理能力に対する評価を著しく損なうため、「事実でない」と強弁している。

2、日本に対してプレッシャーをかけるため、実は政府レベルから、明示的であれ暗示的であれ、フリゲート艦にレーダー照射の指示があった。それもやはり公にできないので、知らなかったふりをして、「事実でない」と強弁している。


 現状出ている情報を見ている限りこの二つのシナリオのうちどちらかでほぼ間違いないでしょう。その上で私の意見を述べると、やはりシナリオ1、つまり政府の指示がないままに現場の人民解放軍が勝手に照射してしまったという可能性が高いとみております。今日ニュースを見ていたら自分が尊敬する富阪聰氏も同じこと言ってたし。
 こう考える理由は一つ、事件発覚直後の中国政府報道官の反応です。記者団にこの件を触れられた報道官は当初、「この件に関して把握しておらず現在回答できない」と、ビデオ映像で私もこのように述べているのを確認しました。正直に申してこのような回答は異例中の異例で、事件発生に中国側も明らかに戸惑っているように私には見えました。では何故戸惑ったのか、やはりレーダー照射が行われていたことを政府は把握しておらず、対応を当時検討していたからだと思えます。

 ここで少し話は変わって、中国政府と共産党の関係を少し解説します。中国の政治は共産党一党独裁なため基本的に共産党=中国政府と考えていいのですが、役職とかそういうものは国と党とで微妙に異なっております。たとえば「総書記」という役職は共産党の最上級役職であって、中国政府の役職ではありません。一方、「首相」というのは中国政府の役職で共産党の役職ではないのですが、共産党のナンバー3とか4が就く役職なので、共産党内の「総書記」の命令には従うという仕組みになっております。
 そうした事情を踏まえて述べると、「人民解放軍」というのはあくまで共産党の軍であって中国という国家の軍ではないのです。最近は制度上でも国家の軍になりつつはありますが、共産党の言うことを聞く理由はあっても中国外務省など国家の機関の命令に従うという制度規則はあるのかないのかあいまいな状態です。それゆえ上記のシナリオ1のようにレーダーを照射したかどうかで、中国外務省は確認に戸惑ったのもさもありなんという話になるわけです。

 それだけに今回の事態、政府の意向を関係なしに人民解放軍が勝手に行ったとなるとなかなか怖い話だと思います。仮に六辻氏の言う通りに現場の指揮官が国際感覚に疎くてちょっと脅かしてやろうっていうつもりで照射したならともかく、確信犯で紛争になってもいいやとばかりに、政府のコントロールなしにそう判断して実行したとなると、何かひょんなことで実戦に移る可能性も否定できません。可能性は低いとはいえ。
 実際にこの問題、人民解放軍にとっては前々から非常に都合のいい問題だと考えています。軍隊というのは平和になれば予算は削減される傾向にありますが、危機感が高まれば高まるほど強く予算増額を要求できます。連中にとって、尖閣問題が大きくなればなるほど都合がいいのです。もっともそれを言ったら日本の自衛隊にも当てはまる節がありますが。

 私が何を言いたいのかというと、中国政府のコントロールがあまり効いてないようであれば人民解放軍はより危機感をあおるような過激な行動を取りかねないことです。もし中国政府が事態を発展させたくないと考えているのであれば、この点に関して日中両政府でしっかり押さえていくことが肝要になるというのが私の結論です。

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