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2014年5月25日日曜日

荒れる国際情勢と米国の弱体化

 このところシリア内戦に始まりクリミア併合、タイのクーデター、南沙諸島での中越(「越中」と書いたら別の意味になるなぁ)の衝突など、控え目に言っても国際情勢が非常に荒れた状態となっております。最近すっかり鳴りを潜めていますが自分の真の専門は歴史学でも社会学でも漫画・アニメなどサブカルチャーでもなく、国際政治であると自負しており、そんな自分からすると今の状況は不遜ですが見ていて楽しいことこの上なく、今後どうなるかが本当に楽しみです。

 そんな自分の感傷は置いといてここで一つクエスチョンですが、何故このタイミングでこれほどまでに世界情勢が荒れてきたのでしょうか。 結論から述べると今これほど荒れるようになったのは米国の発信力というか威信が低下していることこそが原因ではないかと私は見ており、特に中国の増長は「何してもオバマは言ってこない」と安心しきっていることに尽きるでしょう。

 中国が近年増長するようになったのは一つには政治トップの総書記の交代があります。2012年に胡錦濤から習近平に総書記色が移りましたが、去年一年を見ている限りですとやっぱり胡錦濤はなんだかんだ言いながら日本に対して気兼ねしてくれてたんだなぁという風に思えてきました。逆に習近平はバックにいるのが江沢民を頂点に頂く上海閥で、この上海閥は軍とも近い距離にあると言われているだけに領土問題とかでも手段が強引になってきた感があり、習近平本人のパーソナリティかどうかまではまだ計りかねますが、今の指導部として考えるなら今後もこのようなペースが続くんじゃないかと思います。

 そんな習近平政権が強気になった一つのターニングポイントとしては、東シナ海の防空識別圏を去年の突如一方的に設置したあたりでしょう。記憶している方なら話は早いですが日本の領海を含むところまで勝手に防空圏だと抜かしてこの防空圏を通過する航空機は民間を含めて全部飛行ルートを提出しろと本当に勝手なことを抜かしてきました。たださすがに勝手が過ぎたのか日本や米国を始めほぼすべての周辺国から非難されて、「そういう意味じゃない」と急にしおらしくはなったものの、日本は割としつこく抵抗したものの米国は最初の一回だけ批判した後はすぐに飛行ルートの提出に応じちゃい、どうもこのあたりで中国が「米国は多少無理しても何も言ってこないな」と味を占めたような気がします。
 一度味を占めたらこっちのもんで、その後に中国は日本の航空機にレーダーを照射するは、南沙諸島で勝手に開発始めるわ、ベトナムの船にぶつかってくるわとやりたい放題になってきました。しかしこれだけやりたい放題しても、当事者の日本やベトナムは反発しましたが米国の反応はいまいちというか、オバマ大統領は結局あまり動きませんでした。元からオバマ大統領というか米国民主党は伝統的日本より中国寄りな姿勢を持ちますが、その姿勢がここにきて中国を増長させる一因になっているように見えて仕方ありません。

 そんなオバマ大統領の動かない姿勢は東アジアだけでなく中東、ひいては東欧においても同様です。シリアでの内戦に関してはやけに激しくシリア政府軍への空爆を提唱したもののロシアのプーチン大統領の反対に押し切られ(個人的な意見としては私も空爆反対だったし今も変わらない)、そのままの勢いでウクライナのクリミア半島もロシアに併合され、今現在もウクライナ東部の帰属をめぐってロシアが有利な立場で進めています。
 単純にオバマ大統領よりプーチン大統領の方が役者が、というより大統領が上だったと言えばそれまでですが、クリミア併合の際に私は、仮に今の米国の大統領がブッシュだったらこうも行かなかったろうなということが頭をよぎりました。まぁブッシュ前大統領はあんまり賢そうではなかったですが、いざとなったら武力行使に踏み切るという覚悟があったのに対し、今のオバマ大統領は口先ではどうとでもいうけど結局は何もしないということが見透かされているような感じがします。

 このような視点で今後の先行き予測を述べると、オバマが大統領を続ける限りは中国やロシアはどうせなにも出来やしないと見越して増長を続け、隙あらば即行動を取ってくると思います。ま、もしかしたら中国やロシアだけじゃなく中東のある国も隣国の政情が安定しないことを良いことに何かやってくるかもしれませんが。

 そんな中国とロシアですが、日本の報道によるとこのところ両首脳が度々階段を持つなど関係が親密化しており、今朝のニュース番組では両国の接近が日本の脅威になるとやけに大きく報じてました。逆に日本はクリミア併合で米国のロシアへの制裁に賛成したことから、ロシア側が不機嫌になり、余計に中国への接近を促してしまったなんていう報道も出ています。

 ただ私からすると両国の接近は楽観視しており、むしろ中国がロシアに接近すればするほど日本にとっては有利になるんじゃないかと密かに考えてます。こう考える理由としてはロシアは本当の意味で虎狼の国で、あらゆる条約とか国際常識が中国以上に通用しない国だと考えており、迂闊に中国がロシアから天然ガスを輸入し始めたが最後、絶妙のタイミングで裏切られてひどい目に遭うのではないかと思ってるからです。同じ理由から、私は日本がロシアから天然ガスを買うというかエネルギーを依存することに対して反対です。

 またえらく内容が濃い記事となりましたが最後に書くこととして、今後日本はどのような立場を取っていくかです。方針としては大まかに言って三つあり、一つは威信が低下しているとはいえ、むしろ低下しているからこそ米国と共同歩調を取って国際社会の安定を求めるという案。二つ目は米国なんてこの際宛てにせず、中国を抑えるためベトナムやフィリピンなどとより強固な連携を模索する案。三つ目は多少妥協することを条件に中国と共同歩調を取っていくという案。恐らく大多数の日本人は第二案を取るでしょうが、果たして数が多いとはいえ米国より発信力の国と組んでうまくいくのか、そういう視点を持つことも必要ではないでしょうか。
 じゃあ私ならどの案を選ぶのかというと、答えは第三案一択です。恐らくプーチン大統領としては、さんざ中国と共同歩調を取りつつ持ち上げ、躍らせたところでぽいと捨てるタイミングを考えてるんじゃないかなと思い、日本も同じように中国を泳がせるだけ泳がせていいタイミングで裏切るのが現状で吉じゃないかと考えるわけです。それこそ、オフレコで日本は中国の南沙諸島進出を支持すると言うだけ言ってみるとか。

 多少ずるい回答ですが、国際政治というのは将来確実に裏切ることを前提として仲良くするのも一つの手だと、私は考えます。

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