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2015年6月12日金曜日

創造は破壊の後で

 私の友人は大学時代に中国古代史を専攻いたそうですが、卒業論文には項羽と劉邦を比較するというテーマを選んだそうです。曰く、項羽という既成の秩序を徹底的に破壊する存在の後だったからこそ劉邦は漢王朝という安定的な秩序を作ることが出来たという内容だったらしく、項羽がいたからこそ劉邦もその英雄的価値を高められたという結論だったそうです。
 この友人の主張には私も基本的に同感で、というよりこの「破壊→創造」というサイクル自体が一種普遍的な概念を持っているとも考えております。逆を言えばこのサイクルが上手く働かないと世の中は混乱するとさえ思え、「創造的破壊」という言葉があるように時には起こすよムーブメントとばかりにある一定の段階で秩序を破壊をしなければ物事は上手くいかないとすら考えています。

 この破壊と創造のサイクルを例えるならば、敷地とその上に立つ建物(=上物)で比較するとわかりやすいです。この例えだと敷地は世界というか国家などの領域を差し、建物はまんま秩序となります。ある領域においてそのまんまだとその土地は何の価値も持ちませんが、秩序という上物がついて段々と価値を帯びていきます。その敷地にないに領域がある限り建物は増えていきそこに住む人々の生活も段々と便利さを増しますが、ある段階に至ると限界が来るというか、敷地に建物が一杯となってそれ以上の建て増しが出来なくなります。
 建て増しが出来なくなった敷地はどうするか。そのまま使い続けるということも一つの手ですが一度建てた建物は所詮は建物、風雨による経年劣化は避けられません。となると何がベストかというと再開発とばかりに一旦破壊した上で、構造から見直して建て直す方が案外よかったりします。

 大体これで私の言いたいことはわかると思いますが、政治体制や法などの秩序は長い歴史から見たら細かい改正や再編など付け焼刃をつけるよりも、折々で抜本的に改革するというか作り直した方が案外よかったりします。また改革というほど大げさなものでなくても、何かしら制度を変えるにはその制度を変える余地、先ほどの例えだと空余地を作る必要があり、地上げ屋の様に上物を立ち退かさなければなりません。
 総じて言えば創造の上に創造はなく、一旦破壊という過程を経なければ新たな秩序也概念というものは生まれないと言いたいわけです。まぁ破壊の上に破壊はあるのかと言えば議論の余地がありますが。

 こうしたサイクルは歴史上で何度も繰り返されており、わかりやすいのだと安土桃山時代で織田信長という破壊者が既成の秩序を徹底的に破壊した上で、豊臣秀吉と徳川家康という創造者が新たな秩序を作りその後の長く平和な江戸時代が成立したと言えるでしょう。
 また近年の日本政治において言うならば、小泉純一郎首相なんかは間違いなく破壊型の政治家で、実際就任当時に政治評論家からも破壊型の政治家だと指摘されていました。その評論家(名前は忘れた)によると総理大臣は破壊型、創造型の二種類にはっきり分かれるそうで、基本的には破壊型の方が政策が目に見えるので世間からは評価されやすく、逆に創造型は地味で人気が出ない傾向があるそうで、その人が創造型として挙げたのは消費税を導入した竹下登内閣でした。

 ここでちょっと小泉内閣以後の内閣を分析します。小泉内閣は間違いなく破壊型の内閣で郵政民営化などで「改革を行うための空余地」を作ることには成功したと私は考えています。ではその空余地はどうなったのか、その後の内閣は創造型が続いたのかというとこれが非常に疑問で、結論を述べるとその後の内閣は創造も破壊もしなかったのではと思います。
 強いてあげれば福田康夫内閣がまだ創造型の要素を持っていたと思いますが、それ以外となると麻生太郎内閣が顕著でしたが1990年前後のバブル期を再現しようとするような、未来よりも過去志向、フランス革命的に言うなら旧体制(アンシャンレジーム)的な価値観を持つ内閣が続いてしまったのではないかと思います。これは民主党政権時も同様で、郵政民営化によってつくられた改革の空余地の上に、かつての郵政と同じ組織を作って折角の空余地を埋めてしまっています。

 では現在の安倍政権はどうなのか。これも憲法改正を声高に叫んでいますがこれはどちらかというと安倍首相個人の気持ち的な内容で、こう言ってはなんですが日本国家全体の秩序の問題かというと疑問です。さすがに徴兵制の導入まで行ったら話は変わりますが、自衛隊の扱い一つで劇的に秩序が変わるかと言ったらそうでもなく、消費税増税の方がインパクト的には大きいでしょう。

 結論の上の結論を述べると、小泉内閣による秩序破壊の後に新たな秩序を作れる人間が出てきてないのが今の日本の混乱を招いているのではというの私の見解です。真面目な話し、国家全体のグランドデザインに関する議論がこのところ本当無く、一時期流行った「北欧モデル」すらも話に出てきません。
 かくいう私もその手のグランドデザインを作っているわけではなく、現時点では漠然と「オランダモデル」だと自分自身が生きやすくなるなと思えるのでこっちを志向しているだけです。オランダは自転車の一人当たり保有台数も世界最大だというし、サイクリストの夢の王国がつくれるのではと思うと胸が熱くなります。

 急いで書いたから26分で書き上がりました。

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