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2015年11月9日月曜日

スポーツ界の過激・差別表現に対する取り組み

<日本ハム・空港広告>「アイヌ民族に配慮欠きすべて撤去」(毎日新聞)

 先日、プロ野球の日本ハムファイターズが新千歳空港に「北海道は、開拓者の大地だ。」というコピーを書いた広告を出したところ、北海道アイヌ協会から先住民の歴史を無視したかのような内容だとして抗議を受けました。最初のニュースを見た時点で私としては、北海道自体が明治以降は紛れもなく開拓者がたくさん来た土地でもあるから大きな間違いではないし、日ハム自身もここに球団本拠地を置いて野球ファンを「開拓」したのだからそこまで目くじら立てなくてもいいのではと思いつつ、かといって何が何でも出さなければとこだわるようなコピーでもないが日ハムはどう対応するだろうかと気になっていました。
 最終的に日ハムはこの抗議を聞き入れ、ポスターを撤去して新たにデザインし直すことを決めたのが上記リンク先のニュースです。日ハムは以前にもアイヌ語を広告に取り入れるなどアイヌ民族への配慮を行っていたことも影響したのかもしれませんが、なかなかに素早い決断と対応で、東京五輪の佐野ロゴ問題が無駄に長引いた後だけにこの落とし方は傍から見ていて実に見事だったと思います。なんていうか、すぐ対応したわけで見ていてなんか気持ちいいし。

「ぶちくらせ」応援、14人を無期限入場禁止に(読売新聞)

 この日ハムのポスター問題に限らず、このところスポーツ界において表現の仕方が大きく取り上げられるケースが増えてきているように思います。日ハムとは少し方向性が違いますが、上記のサッカーJ2チームのギラヴァンツ北九州を舞台にしたいわゆる「ぶちくらせ」表現問題も密かに注目していました。
 この問題は一部サポーターが横断幕に地元方言の「ぶちくらせ」という言葉を使うことに対してチームが懸念を示して横断幕の撤去を要請したもののサポーターは拒絶したことから、今回チームは件のサポーター14人を撤去に応じるまで無期限入場禁止にしたのが上記ニュースです。

 こちらの「ぶちくらせ」という言葉は地元の言葉で「倒せ」とか「殴れ」という意味の言葉だそうでサッカーの応援に使うには過激すぎるとチームは考えたそうですが、サポーター側の言い分を報じた記事では地元の方言を使って応援したい、そこまで過激な表現ではないというようなことが書かれていました。
 あくまで私個人の所見ですが、特段違和感を感じなかった先程の日ハムのコピーと違ってやっぱり「ぶちくらせ」って言葉は言われたりするとちょっとドキッとするというか、聞いてて少し怖さを感じます。音的に「ぶっころせ」に近くて同じようなイメージを想起してしまいますし、「打ち倒せ」とかと比べるとどうも過激に聞こえるだけになるべくなら使ってもらいたくないと思えこの件でもギラヴァンツ北九州の対応は間違っていないのではと支持します。

 以上、スポーツ界における過激・差別表現に対する取り組みとして二チームの例を取り上げましたが、やはりスポーツというのはエキサイトしやすいものなだけに表現に対して万全な注意を払う行為が必要だと感じると共に、どちらのチームも比較的熱心かつ真摯に対応してよくやっているなと感心します。恐らくと言っては何ですがこうした対応の背景には昨年J1の浦和レッズで起きた差別横断幕事件も担当者の念頭にあったのではないかと思え、スポーツは日本国内だけではなく世界中のファンが見つめる(可能性のある)舞台で、様々な人種や文化を持つ選手が参加するだけにそのリスク意識も高く持っておく必要があるのでしょう。
 なお浦和レッズの事件に関して述べると、当のサポーターはあれこれ言い訳を述べていましたが、「JANANESE ONLY」なんて差別に使う以外ほかに使いようのない表現で全く以って問題外な行為だったと私には思います。レッズもその試合で初めて掲げられたことから果断に対応出来なかったようで少し同情する気持ちもありますが、さすがにこの件に関しては無観客試合という制裁を受けることになるのも無理ない気がします。

 まとめとして述べると、日本のスポーツ界は一般社会よりもこうした過激・差別表現に対して比較的注意深く対応していると見ていて感じます。逆を言うなら日本社会はこうした問題に対してちょっと対応が鈍いのかなと思える節があるので、続きは次回の記事にて最近あまり聞かなくなったヘイトスピーチについて取り上げます。

2 件のコメント:

片倉(焼くとタイプ) さんのコメント...

今年の甲子園で、オコエ瑠偉選手の活躍について「サバンナ」「野性的」「本能をむき出し」「獲物」という
表現を用いて問題になった新聞社がありました。
いまだにアフリカ人=草原を駆け回って槍で獲物をとって生活している人 という認識の人がいるもの
です。

差別表現とは関係ないですが、野球賭博問題で巨人の笠原将生が解雇されました。野球協約では
プロ野球選手が野球賭博常習者と交際することを禁じています。  ということは、弟でソフトバンク
ホークスの笠原大芽氏は、兄である笠原将生と面会する事ができなくなります。
はたして、家族が野球賭博を行っていた場合、家族と交際することは野球協約にさだめる禁止行為
にあたるのか?  注目ですね。

花園祐 さんのコメント...

 オコエ選手については普通に、「鉄壁の守備ぶり」という風に書けばいいのに、「サバンナ」ってのは明らかに差別的ですね。ちなみに昔中国で会ったルワンダ人は、「黒人はみんな足が速いと思われる。俺足遅いのに……」と話してて、足が速いイメージは世界共通のようです。
 笠原選手についても面白い着眼点ですね。恐らく日本の野球協会ですから家族だから免罪でなぁなぁになってしまいますが、その分兄貴は怪しい行動したらすぐ捜査するぞとビシッと言えればいいのに、多分言わないだろうな。