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2015年12月6日日曜日

漫画レビュー「ちおちゃんの通学路」

 また漫画に関する記事ですが、一ヶ月くらい前から準備しておきながらこれまでほかの記事を優先するため執筆にこぎつけなかったのがこの作品、「ちおちゃんの通学路」です。
 この漫画を知ったのはたまたまAmazonのページ内に表紙が映っていたのを見たことがきっかけですが、その時表示されていたのは2巻の表紙で、タイトルと共に街角らしき場所で爆発が起こっているのを尻目に不敵な笑みを浮かべる女子高生が描かれており、一見して「なにこれ?」と思って興味を持ちました。調べてみるとまだ三巻までしか発売されていないことから全巻揃えるのは容易だし、試しに一巻だけ買ってみてその内容を見てから続きを買うかどうか検討しようと決断し、結果的にはすぐに三冊全部揃えることとなりました。

 この「ちおちゃんの通学路」がどんな漫画かというと、タイトルの通りにちおちゃんという女子高生が主人公の通学にまつわる話です。最初見た感じ、ドジな女子高生が通学途中に毎回トラブルに巻き込まれて遅刻しそうになる漫画なのかなと思って読み始めましたが、実際には遅刻しそうになるのは第一話だけで、それ以降の話は無駄に運動神経良くて出てくるのは銃とオヤジとゴリラみたいな女性キャラだけな海外ゲームをやりこんでいるコアゲーマーな女子高生が通学途中の行く先々でトラブルを引き起こすという内容でした。自分で書いてて思いますが、改めてみるとやたら濃い設定な気がします。
 具体的にちおちゃんがどういうトラブルを起こすのかいくつかあらすじを抜粋すると、

・スクールカースト上位の同級生に声かけられきょどり、SWATターン決めて逃げようとする
・同級生が男子から告白されるのを友人と共にのぞき見しようとしてばれそうになる
・暴走族に絡まれハッタリかまして切り抜けようとする
・洋ゲー特集雑誌を買おうとして寄ったコンビニでBLゲー雑誌を手に取る
・車からポイ捨てされる煙草をダイビングキャッチして鉄柱に鎖骨を強打する
・回り道して坂道上るよりショートカットになると思って舗装された壁面をよじ登ろうとする

 どの話でも共通するのは主人公のちおちゃんが無駄に行動力が有り余ってて悉く「やらなきゃいいのに」と思うようなことに首突っこんではピンチに陥るという点です。特に一番笑った回の話では橋の上を歩く友人を見かけて、「こういう時、ゲームだったら橋の縁にエルード(ぶら下がり)してにじり寄る」ということを思い付き、それをそのまま実行してしまうというゲーム脳ぶりを見せます。無論、女子高生の腕力なので友人を驚かせる前に途中で力尽き、どうせ川に落ちるくらいなら諸共に落ちようと友人の足を掴んで引きずり込もうとしますが。

 どの話もテンポがよく、なおかつ高いテンションで描かれているのでギャグ漫画としての勢いは十分な作品です。それとともに個人的に注目したのは各キャラの表情の描き分けと、漫画における特殊効果です。前者はギャグ漫画を描く上でギャグセンスと共に重要なものであることは言うまでもありませんが、後者に関しては集中線や遠景、下からのズームなどあらゆる漫画表現が効果的に駆使されており、地味にこの作者は器用な人だと感心させられました。
 またどの話もきちんと通学路上での話に絞っており、よくこれだけ限定された状況下で毎回話を作れるなという点でも感心させられます。ほかにはセリフ回しも案外凝ってて、個人的にツボにはまったのは、「昭和生まれの世代はゆとり教育を受けていないため、新聞の配達が少しでも遅れると理性を失ってしまう(物凄く怒る)」というセリフです。

 以上が私の分析ですが、現在出ているギャグ漫画の中で一番はまっていて文句なしにお勧めできる作品です。ちょっとほめ過ぎなような気もしますが、興味を持たれた方にはぜひ手に取ってもらいたいです。


     

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