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2016年5月11日水曜日

漫画レビュー「DEAD Tube」

 なんかアマゾンで今漫画買うと20%のポイントつくってんで前から少しずつ買い集めていた「ヒナまつり」の買い残していた巻を全部購入した後、やや表紙とあらすじが気になったので「DEAD Tube(デッドチューブ)」という漫画の一巻も購入しました。でもって20%ポイント還元その後も続いてたのでそのまま最新刊の四巻まで買って、今こうしてブログ書くに至っています。
 この漫画がどんな漫画かというと一言でいえば「エログロ」に当たるジャンルなのですが、作品のテーマ性とその背景には現代的な要素をなかなか上手く取り入れているように思え、また前に私も取り上げた「DEATHTOPIA(デストピア)」にとって好対照であるとも感じたため、ちょっと気分転換がてら紹介します。

 デッドチューブの一巻までのあらすじを簡単に書くと、映研部に所属する男子高校生の主人公がある日学校一の美少女とまで言われるヒロインに、「二日間、私のことを撮影し続けて」と頼まれます。依頼を受けた主人公は翌日からそのヒロインの授業中、部活中、帰宅中、デート中、トイレ中、入浴中に至るまで延々とカメラを回し続け、二日目もそのヒロインに言われるがまま、ヒロインがクラスメートを撲殺する一部始終も撮影してしまうこととなります。
 しかし撮影、っていうか殺害を終えた後でヒロインは録画したデータを受け取ると翌日以降も普段通りに学校に通い続け、警察などは殺害犯であるヒロインを逮捕するどころか逆に無関係の人間をクラスメート殺害の犯人として逮捕してしまいます。状況がいまいちつかめない主人公に対してヒロインは、「ゲームに勝ったから問題ない」と言い切り、撮影のお礼として500万円を主人公に渡した後、「また次の撮影よろしくね!」と声をかけるわけであります。

 多少それ以降のネタバレになりますがこのヒロインが語る「ゲーム」というのはタイトルにもなっている「DEAD Tube」のことを指しており、これはみたまんま動画配信サイトの「Youtube」をもじった漫画に出てくる動画配信サイトです。ただYoutubeとは少し異なり、期間ごとにテーマに沿った動画のみがアップロード&配信され、その配信者同士でアップする動画の視聴者数を競うというシステムになっています。そして、アップする動画は視聴者数さえ稼げれば何をしてもよく、犯罪だろうがなんだろうがやりたい放題で、最終的に最も視聴者数が多かった動画配信者には多額の賞金が与えられ、逆に最も少なかった配信者は一連の動画撮影にかかった経費と犯罪に対する責任の一切を負わされる、いわば「All or Nothing」のゼロサムゲームになってるわけです。

 恐らく原作者も意識していると思うのですが、この作品のテーマとしては「視聴者数さえ稼げれば何をしてもいいのか?」にあると思います。これは報道界においては昔からある議論で、目の前で人が殺されようとする場面をカメラに収めるか、それともカメラを捨てて助けに行くべきかというように、報道と倫理というのは時に秤にかける場面というものが出てきます。しかしデッドチューブの世界ではただ視聴者数を稼ぐだけの動画が求められ、そして視聴者数を稼ぐためにはエロとグロがとことん追及され、視聴者数を稼げるのであれば殺人や暴行すら許されます。またエログロが追及された動画ほど視聴者を集められるわけで、求められるからこそ応えるという点についても、求める側の善悪も暗に問うような構成がこの漫画には仕掛けられている気がするわけです。

 自分も何気に驚いたのですが昨年に行われた子供がなりたい職業ランキングの調査で上位に、Youtubeに動画(主に自分が出演する)を投稿して広告料を稼ぐという「ユーチューバ―」という職がランクインしたそうです。自分も子供の頃は注目願望からかテレビに出るという行為に憧れがあったことからそういう系統なのかなと少しは理解できるものの、既存の番組などと言うメディアを使うのではなく自ら番組を作って出演したいという子供がいるという事実には素直に驚かされ、時代が変わったなと思うニュースでしたが、何気にリンク結んでいる潮風大使さんのお子さんもユーチューバ―になりたいと言ってたそうで、あながち無視できない社会変化だと実はちょっと注目してました。

 しかし、曲りなりに編集が入るテレビ番組と違ってユーチューバ―の動画は検閲に引っかかりさえしなければどんな動画だって規制なく上げられてしまいます。実際にツイッターなどでは一時期、注目されたいという欲求からアルバイト先などで馬鹿な行動を取って大きな責任問題に発展する事態が続発しており、その度に「注目を集めれば何をしてもいいのか」という言葉があちこちで聞かれましたが、そうした声をあざ笑うかのように他人の迷惑を省みない行為や、全裸になった写真を公開する人間がその後も出続けました。

 こうした時代背景を逆手に最もタブー視される殺人を映した動画、いわゆるスナッフムービーを率先して撮影しようとするこの「デッドチューブ」のテーマ性はなかなか評価できるというのが一読した私の感想です。無論、そうしたテーマであるためエログロシーンはかなり豊富というかメインなだけに半端なく多く、読む人によって好き嫌いははっきり分かれるでしょう。エロ方面に関しては作画担当は元々エロ漫画家出身と聞くだけにかなり目いっぱいあります。

 ではグロ方面はどうかとなると、まぁたくさん殺されて死体もたくさん出てきますが、私個人の見解を述べるとどうもこの漫画の死体の絵は見てて面白味がないというか。もはやウィークポイントと言っても差し支えない気がします。なんというか背景っぽく見えてしまい、見ていて全然ゾクリともしません。絵がかえって小奇麗だから死体も小奇麗に映っちゃってこうなるのかなといろいろ想像めぐらせていますが、私の好みなだけかもしれませんが死体そのものを見せるよりも道具とかをもっと効果的に見せて読者にイメージを抱かせる方がいいような気がします。
 具体的には小手川ゆあ氏の「アンネ・フリークス」が私の中で一番グロいと思う漫画で、この漫画だとよく死体になる前の人の顔を見せた後でハサミとかペンチと言った道具を次のページで見せたり、「お母さんはここよ」というセリフと共に手提げサイズのゴミ袋を出すなど、この私ですら人に見せるのをためらう作品です。作者の小手川氏はこういう漫画書き続けて何十年っていうベテランなだけあります。

 話はデッドチューブに戻りますが、読んでてそこそこ面白いと思うもののこういうエログロ物は賞味期限が早いのが常で、現在四巻まで出ていますが、今のところはまだ許容できるものの今後も続けていくとなるとかなり厳しいのではと思う節があります。延々とスナッフムービー作るだけの作品になりかねないし。
 原作者もそうした懸念を持っていたかまではわかりませんが、三巻からはちょっと趣向が変わり、無人島で殺人者とサバイバルという展開に入りますが、この決断は連載を続けていく上では英断だったなと思えます。なんか見ていて金田一少年っぽい展開のような気もしますが。

 それと冒頭に前にレビューで酷評した「デストピア」を引用していますが、展開が全く以って遅く話がちんたらとして一向に進まなかったデストピアと違い、デッドチューブの展開はかなりハイスピードです。なんせ一巻だけでヒロインがクラスメートを撲殺した後、主人公の身の回りの映研部員が次々と殺害され、身の危険を感じた主人公が今度はヒロインをバッドで撲殺するというノンストップな展開ぶりです。先程にも書いたようにエログロ作品は賞味期限が短いだけに、こうした展開の早さは理に適っている気がします。

 最後にもう一つ、二巻から主人公のクラスに担任教師として赴任する「別木エリ」という新キャラが出てきますが作中で「ハーフっぽい顔立ち」と言われる、というかどっからどう見ても「ベッ〇ー」にしか見えず、見ていてオイオイこれ本人に許可取ったのかよとかなんか心配にさせられました。ちなみにその回の話が描かれたのは去年なので騒動前ではありますが、なんていうかいろいろとタイミングのいいキャラを出してきたなと妙なもやもやを抱えさせられます。

 にしても、俺って本当にエログロ好きだな……。


<2017年9月24日追記>
 上記レビューは4巻まで発売されていた時点で書いたものです。
 残念ながらこの漫画はそれ以降、どんどんと話の価値が落ちていき、7巻に至っては妙なバトル物へと路線を変えてしまって当初の良さが今は全く感じられず、正直に言えばお勧めできる作品ではなくなりました。私ももう読むのをやめていて、ちょっと前に8巻が発売されたようですが買うのはやめておこうと思います。

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