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2017年4月7日金曜日

ウェブメディア業界におけるライター、編集者不足問題

 先日、自分が寄稿しているJBpressの編集長と上海市内で会った際、現在のウェブメディア業界における課題としてライター、編集者が絶対的に不足していると指摘した所、即意見が一致しました。なんでいきなりこんなことを掘り返していうのかというと、一昨日に昼の唐揚げ弁当を食べるや猛烈に胃が痛くなり今も口内炎で苦しむような出来事に遭遇した後に読んだ記事で、「最近テレビや新聞はウェブの引用をした報道ばかりでネットメディアは既に大手を越えた」的なことが書かれていたからです。
 このように書けば私が何を言いたいのかわかるでしょうが、ネットメディアが大手メディアを凌ぐなんてちゃんちゃらおかしく、上記の記事は言い方は悪いですがメディアの世界をよく知らない小僧っ子が書いたんだなと私は見ています。もしくは、ライターと編集の役割というかその力量をきちんと把握してないかでしょう。

 私はこのブログで毎日新聞、ダイヤモンドらを筆頭に散々に大手メディアを批判する記事を書いていますが、それでもウェブメディアと比べればテレビ、新聞、雑誌メディアの方がずっとしっかりしています。その差は何かというと最初に上げた通りにライターと編集者がウェブメディアには致命的なまでに不足しており、特にライター方面では自分もえらそうなことは言えませんがほとんどカスみたいな素人に頼り切っている状態です。
 意識しないとわからないかもしれませんが、大手メディアとウェブメディアで記事文章をきちんと比較するとその差がはっきり出てきます。やはり大手メディアは見方によればやや固く読み辛い印象を覚えますが、それでも文章の根幹がしっかりしているので主題→詳細→関連話題という具合の三拍子がきちんと整っている文章が多いですが、ウェブメディアの方は同じ記事内でも表記がバラバラになったり、段落がきちんと分けられてなかったり、見出しに掲げた主題にほとんど触れないいわゆる「見出し倒れ」な記事がよく散見されます。

 一つ名指しするとこのところよくトップページのニュース欄に混ぜてくる、Yahoo編集部がまとめた記事などはまさにこの典型です。あれは恐らく始めから見出しが概ね決まってあり、その見出しに合わせて取材した内容を延々とただ書き連ねているだけなので読んでて何がいいたのか全く見えてこない記事が多く、量多くして真相なきウェブメディア記事の典型だと思います。

 ウェブメディアの悪い特徴をもう一つ上げると、やはりライターの問題からか取材が致命的に不足していることも大きいです。大体が聞きかじった内容を詳しく下調べせずに書かれているため基本的な事実誤認は当たり前な上、内容がよくわからない専門的な箇所は意図的に避けるため深みのない薄っぺらい記事になります。またインタビューとかでも結構どうでもいい感想を聞くことに終始するというか、企業取材に関しては踏み込みが明らかに足りておらず相手広報と本気でやり合ったような跡も見られません。まぁこれは最近の大手メディアにも言えますが。

 こうした問題点はすべてライター、そして編集者の不足に起因しており、まだライターの問題であればまだ後から育成したり、出来上がった原稿を手直しすることでいくらかカバーはできますが、そうした育成、手直しを行う編集者の不足だけは本当にどうにもなりません。編集の役割としてはこのほかにも取材企画の立案、組織、指揮も含まれるため、大掛かりな取材や、私の様に外国語を用いて取材できるような人間の活用面でも手腕が問われます。
 特にこのところのウェブメディアの記事を追っていると、刺激的な話題にすぐ飛びつくというか内容の検証すら済ませずに流してしまう傾向があり、一例を挙げると中国でVPNが禁止されると一時期大手メディアも含めて一斉に報じていましたが、あれは中国語の法律文書をきちんと読めずに本来は規制の意味を禁止と捉えてみんなで誤報を流した例です。普通に考えればVPN禁止となれば中国進出の大手企業各社の通信、連絡業務で大打撃を受けることから実行できるわけがなく、そこに至れば必ず「これは本当に『禁止』なのか?」とブレーキがかかるはずで、その辺を判断できる編集の人間がやはりウェブメディアにはいない気がします。私の持論ですが、報道にアクセル踏む奴よりブレーキをかけられる編集の方が優秀です。

 なんだかんだ言いつつ、大手メディアはこの辺の態勢がしっかりしていて、共同通信に至ってはどんな些細な誤報一つでも流したら即その部署の編集長は更迭されるほどの厳しい姿勢で編集に臨んでいます。そのような迫力というか責任感がウェブメディアにはまるでなく、またどことは言いませんが私が記事ネタを提供したあるウェブメディアの記者に至っては一番キャッチ―な数字データを何故か使わずに自分が取材した内容をずらずら書き並べるだけで、「この原稿見た上の編集は何も言わなかったのか?」と本気で疑いました。関わっても無駄に価値下げるだけなので、真面目にそことはもう仕事をする気はもう全くありません。

 とにもかくにも、ウェブメディアにはライターと編集者がまだまだ不足しており、ほかの国ではどうかは知りませんが大手メディアと肩を並べるなんて私からすれば考えられない夢想話です。もちろん大手メディアも以前と比べると編集力などの点で年々実力を落としてきていますが、それ以上にウェブメディアがあまりにお粗末なので当然抜かれることはないでしょう。
 ではウェブメディアは今後どうすればいいのか。やはり新聞や雑誌出身のまともな編集者を高い金出してでも雇って切り盛りさせる以外ないと思います。ここで重要なのは新聞や雑誌出身であればいいということではなく、「まともな」編集者であることです。やはり自分の経験からしてもいい編集者が上にいるかいないかでライターも変わってくるし、下のライターを上手く引っ張ってくれる人間をどれだけ集め、ライターを育成できるかが今後のウェブメディアを左右するでしょう。

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